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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―霊峰と空―
582/689

―雷―


「!!」


大地が割れる。

五本の巨大な溝を作り出し、底から亀裂が走る。足場としては最悪だ。


レイラのガードは全力。

しかし、ダメージを受けている。

これ以上彼女を目の前に置くわけにはいかない。


気合いの意味で、リゼルは自分の胸を殴る。

ここで戦えなくて、何が「レイラを守る」だ。笑わせるな。

自分の生きる意味を、(勝手に立てた)誓いを忘れるな。ボケが。


リゼルは姿勢を低くして走る。足場は悪く、いつもほどスピードは出ないが、関係ない。

渾身の龍力をのせ、ゴールドライオの脇腹に斬りかかる。


「どけ!!」


しかし、弾かれる。

単純に力が足りていないのか。龍力の構築・生成に抜かりはなかったはず。

ならば、もっと力を。


(この……!)


「リゼル!!避けて!!」


レイラの悲鳴交じりの声。


「!?」


彼がその理由を理解する頃には、もう遅かった。

ゴールドライオの開いた口。そこに、高密度なエネルギー体が出現していた。


(こいつも……!!)


死ぬのか?ここで?


エネルギー体が放出される。

攻撃直後でガードの姿勢が取れない。


「氷壁!!」


死を覚悟した直後、目の前に氷の壁が出現した。分厚く、美しい氷の壁だ。

だが、ゴールドライオの光線に比べれば、この分厚さも豆腐に近い。ゴリゴリと削られていく。光線を止めることはできそうにない。


(分かってる!!だからッ!!)


ミーネの狙いは別にあった。

あの光線を止めきる壁を作る自信はない。だが、光線を遅らせることと、射線をずらすことはできるはずだと自分に言い聞かせ、仲間を守るために龍力を駆使した。


「リゼル!!しゃがんで!!」

「!」


攻撃直後の硬直が解け、次の動作に移るまでの時間。

移動はできないだろうから、体勢を変えるまでの時間。


ミーネの欲しかった時間は、稼ぐことができた。


「ッ!!」


光線はリゼルの頭ギリギリを通り、そのまま彼の背後の棘を破壊し、地面に直撃。爆発した。

氷の強度を均一ではなく、場所で調節したのが功を奏した。リゼルのすぐ背後ではなく、数十メートル後ろまで光線の射線をずらすことに成功した。


「ギリギリ……!」

「っぶね~……」


レイズとバージルは肩を撫で下ろす。

しかし、先ほどの爪の威力や、光線の威力を見たことで、心臓はバクバクだった。

あれと至近距離で戦う必要があるのだから。


「ミーネ。助かった」


聞こえているかは分からない。が、リゼルは視線をゴールドライオから離さずに走り始める。

肝心のレイラは、自分の無事が確認できた直後に走り出している。これで十分だ。


(地形が悪い。移動しろ!)


口に出さなくとも、この程度のことなら雑な指示で仲間に伝わる。

仲間たちは足場がまだ破壊されていない場所まで走る。


「こっちです!」

「分かった!」


走りながら思う。棘が生えていて、本当に助かった。

何も物がなければ、一瞬で追いつかれてしまう。


「オォォォォオオオオ!!」


ゴールドライオは凄まじい速さで追いかけてくる。棘の障害物があるとはいえ、彼はここで生活しているのだ。

足が大地を踏むと同時に、重たい音が響く。


(ここよりもマシな場所まで!!)


敵は地形が崩れていても余裕で戦えるが、こちらはそうはいかない。

逃げ切ることはできないが、レイラたちはマシな足場を求めて全速力で走る。


レイラ、リゼルが先陣。レイズ、バージル、ミーネがその後を追う形。

位置関係敵に、マリナはゴールドライオの横にいる。


「…………」


マリナは追走し、自分の雷で怯ませることができないかと考える。

ゴールドライオは先頭のリゼルやレイラを追いかけている。自分は、標的になっていない。


最初はかなりビビり散らしていたが、今はやや落ち着いている。

イケる。


マリナは斜めに生えている棘に移り、龍力を高める。跳躍を得たい今、剣は邪魔だ。一旦納める。

どんどん加速し、そして、棘の先端付近で彼女は跳んだ。


「蒼雷龍翔!!」


それは、雷龍が空を飛翔するようだ。龍力のオーラが雷龍を模している。

ゴールドライオは直下。力も十分溜まった。


「今!!」


マリナは真下に両手をかざす。ヴン、と力の充満する音と共に、雷龍の紋章が描かれる。


「サンダードラグーン!!」

「!!」


紋章から凄まじい量の稲妻を弾かせながら、サンダードラグーンが放たれる。

落雷の比ではないほどの爆音を響かせながら、サンダードラグーンは吠え、標的に襲い掛かる。

それは、瞬く間にゴールドライオを貫いた。


ゴールドライオは一瞬怯んだように身体を硬直させる。足も止まる。

時間が、生まれた。


「マリナ!!」

「走って!!」


棘に着地し、そのまま走るマリナ。


マリナの攻撃は、ゴールドライオに通じた。

それを見て、リゼルの口角が上がる。


(……頼もしいな)


自分の無力さを嘲笑う一方、頼もしい仲間の存在に感謝するのだった。

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