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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―霊峰と空―
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―生存競争―

振り返っても、ギラス高原との境が見えなくなったころだった。

レイズたちは、老龍山の魔物同士の戦いを目の当たりにしていた。


「……!!」


縄張り争いなのか、狩りなのかは判断がつかない。

だが、老龍山で初めて出会った魔物が、その二体で、戦いだった。


片方は、北で出会ったスノーマンのような魔物。

茶色い毛にゴツイ筋肉。血管が浮かび上がり、一定間隔で収縮しているのが離れていても分かる。

身体も大きく、スノーマンの1.5倍はある。ゴリラーマン(本当はキング・ゴーリ)と呼ぶか。


もう片方は、蛇のような魔物だ。しかし、蛇とは段違いに巨大だ。デカ蛇(本当はドラゴ・スネイク)と呼ぶか。

大地から生える巨大な棘の隙間を縫い、攻撃を繰り返している。

牙はあの筋肉に通らないらしく、絞め技を狙っているようだ。



轟音と地響きが凄まじい。

ゴリラーマンの打撃はデカ蛇に効いていない。

ゴムのように凹むだけで、押し返されている。ゴリラーマンも手は巨大だが、掴めるほどデカ蛇はスマートではない。身体全体を使ってしがみつくことはできても、技をかけられるほど余裕はないように見える。


しかし、ゴリラーマンの攻撃手段はそれだけではなかった。


口を大気く開けるゴリラーマン。



「は……!?」



巨大なエネルギー体が出来上がる。

それは光り輝き、周囲を照らす。


(口からビーム!?)


ゴリラーマンは光線を発射し、デカ蛇の身体を焼く。


「~~~~~~!!」


それは効いたらしく、デカ蛇は奇声を上げ、暴れだす。

光線が当たった部分が焼け、煙を上げている。傷口から緑色の体液が飛び散り、大地を焼く。


リゼルはそれを見て、目を凝らす。


(毒……か)


老龍山に生えている植物が溶け、異臭を放つ。

デカ蛇の攻撃手段はまだあるらしい。


ゴリラーマンに対抗し、デカ蛇も口からヘドロの塊を放出する。


「……!!」


この区域の魔物だ。ゴリラーマンも間抜けではない。

傷口から流れ出た体液を見て、危険なものであることは分かっている。


筋肉の重さを感じさせない華麗なステップでヘドロの塊をかわしていく。

かわす最中、身体が棘にぶつかるが、お構いなしだ。棘を破壊しながらヘドロの塊を避けていく。

ステップ事に大地が揺れ、レイズたちが隠れている場所の棘を揺らす。


「っ……!!」


こうして強固な大地が出来上がっていくのか。

バージルは日々繰り返されているであろう戦闘に思いを馳せる。


ステップでヘドロをかわしながら、光線を打ち出すゴリラーマン。

流れ出た体液のせいか、デカ蛇の攻撃の精度が落ちていく。デカ蛇が弱っている証拠だ。

放出されるヘドロの塊も小さくなってきた。


次の瞬間、ゴリラーマンが高く飛び上がる。


(……決まる)


空中で手を組み、高く天に翳す。


筋肉の重量と重力を加算。腕の振りのパワーを底上げする。

打撃が効きにくい体とは言え、弱った状態であの攻撃はキツイはず。


更に、ゴリラーマンが狙っているのはデカ蛇の頭だ。

ただ、空中で落下しているだけのゴリラーマンは自由に動けない。デカ蛇もそこを狙い撃つ。


(喰らった!!)


鈍い音を響かせ、ゴリラーマンの身体にヘドロが付着する。

すぐに煙を上げ、強靭な筋肉を溶かしていく。しかし、ゴリラーマンは止まらない。


ゴリラーマンが吠え、デカ蛇の頭に拳の鉄槌を下す。


「!!」


大地が割れるような、圧倒的な一撃。

デカ蛇の皮を貫き、骨が割れるような音も聞こえてくる。


「~~~~~~!!」


デカ蛇は身体に似合わない高い鳴き声を上げ、力なく大地に横たわる。


勝負が、ついた。



「オオオォォォォォォォオオオオオオオ!!」


勝者であるゴリラーマンは、空高く雄叫びを上げる。

なんて声量だ。レイズたちは堪らず耳を塞ぐ。


雄叫びを上げ、テンションが上がったのか、そのまま胸を激しく殴打する。

雄叫びと、心臓に響く重低音。命の咆哮だ。



ゴリラーマンは喉が千切れそうなほど、その場で吠え続ける。

命の輝きを周囲に見せつけるように。

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