―老龍山―
「これが……老龍山か……」
レイズたちは、老龍山を見上げる。
戦争で亡くなった、老いた巨大なドラゴン。
長い年月が経ち、その上に山が出来上がった。
「いや……いかついな……」
自然の山には負けるが、それでも巨大である。
他の山と明らかに異なる特徴として、今まで登ってきたどの山よりも刺々しい。
山の土台が龍の亡骸であるからだろう。
当然舗装されておらず、歩けそうな場所を見つけて進んでいくようになる。
この山を登れば、浮遊島の下に着ける。
「さて、行くか?」
「えっと……四聖龍は先でしょうかね……?」
レイラは四聖龍の行方が気になっているようだ。
自分たちも気にはなっているが、ある種の信頼と言うか、ずっと先に行っているものだと思っていた。
ただ、ここまで会えないのも気がかりである。
「単独行動好きすぎでしょ……」
「ね。ここまで来ても別行動なんて……」
「ずっと合流しないつもりかしら?」
「さぁ……?」
マリナとミーネ的には一緒の方が心強い。
しかし、四聖龍には四聖龍の戦闘スタイルがあるし、ペースもある。
それらを考慮した結果の行動であるが、理解はしにくい。同行した方が、何倍も安全なのだから。
彼女たちが四聖龍について話している横で、リゼルは肌が焼けるような感覚に襲われる。
これは、魔物の殺気。
「……魔物の気配だ。かなり殺気立っている」
「あぁ。さすがに分かるぜ……ビリビリきやがる」
リゼルの警告に、レイズは頷く。
過酷な環境で生存競争を生き抜いている魔物たち。普段目にする魔物とは段違いの強さだ。
ギラス高原よりも空気が重い。それだけ魔物が強烈な闘争心を剥き出しにしているからだ。
ここから先、遭遇する魔物はギラス高原よりも強力なものばかりだろう。
彼らは気を引き締め、老龍山に足を踏み入れる。