―真なる光龍派―
時は、浮遊島がまだ海に浮いていたころまで遡る。
「さよなら、皆……」
フランバーレは、スラムのメンバーと離れることにした。
理由は単純。
彼らとこれ以上一緒にやっていけそうになかったためだ。
グランズを捕らえるまでは良かった。しかし、その後の彼らの行動(グランズへの暴行など)が、自分の求めていたものとは違っていた。
自分だって、グランズには恨みがある。
彼の政策で住処を失った。故郷を失った。便利になった反面、犠牲も多かったのが彼の政策だ。
そうこうして流れ着いたのが、レイグランズの地下スラム。
フリアやスゼイたちも、グランズ王の政策の犠牲者だ。
憎んでいたし、殺したいと思う日さえあった。
しかし、実際グランズを目の前にし、日に日にボロボロになっていく彼を見て、『何か違う』と思うようになった。
自分が求めていたのは、これではない、と。
実際、殴るのは簡単だ。
しかし、彼の前に立つと、(見たことはないが)光龍の姿が脳裏にチラつき、拳を出すことができなかった。
他のメンバーは、いとも簡単に怒りや憎しみを彼にぶつけているのに。
そうして、フランバーレはスキを見て島から離れた。
かと言って、行く当ても帰る場所もない。
何も考えず放浪していたとき、フランバーレは一本の剣と出会う。
それが、彼女が右手に持つ剣。
名を、エクスカリバー。
光龍が作ったとされる剣だ。自分が光龍使いであることもあり、すぐに分かった。
試しに扱ってみるが、『普通の剣』と差が感じられなかった。
エフェクト自体は派手で、心臓の鼓動のように一定間隔で光り輝いているが、『力』に変化は感じられなかった。
多分、まだ使いこなせていないのだろう、と思い、この剣と共に修行に励んだ。
しかし、いつまで経っても普通の剣のままだった。
そこで、フランバーレは考え始める。
『自分は、適合者ではないのか』と。
単なる光龍使いではダメなのだ。と。
光龍の最高傑作である剣を完全に扱えるのは、『真なる光龍使い』だけ。
その龍力者を探し、この剣を託すのが自分の指名だ、と思うようになっていく。
これがフランバーレの思考なのか、剣がそう思わせたのかは分からないが、フランバーレは強い光龍使いを探し、世界を回り始める。
その矢先、島が浮き、ギラス高原に移動し始めたのだ。
「……あの島に挑もうとする龍力者なら、間違いないと思ったわ」
「それで、光龍『だけ』を……」
「そして、貴女は勝った。その上、『変化』もすぐ察知した」
「!」
重さがない。との彼女の訴え。
フランバーレは、普通の剣の重さを感じていた。
あのサイズの剣ならば、このくらい。と、違和感なくスルーした。
「……軽かったです。それも、異様に」
彼女の仲間が誰一人持ち上げることができなかったのを考えると、『人によって感じる重さが違う』ことは容易に想像できた。
そして、レイラは何も知らないのに、その違和感に気づいた。
「……どのくらい、軽いんだ?」
「本当に軽いです……水筒くらい……?ですかね」
「マジ、か……」
信じられないが、実際自分たちは持ち上がらなかった。
しかし、水筒クラスとは……軽すぎて逆に不安になりそうだ。
フランバーレは、半ば無理矢理剣をレイラに押し付ける。
「私の役目は、これでお終い」
「…………」
レイラは腕の中の剣に目を落とす。
豪華な装飾だ。剣コレクターでなくとも、何かヤバそうな品なのは分かる。
確か、レイズの剣もこれくらい派手だったな。
話を聞いていたバージルは、レイズに囁く。
「……その理屈で行けば、お前の剣も『適合者』がいるのかもな」
「……そうなるな」
無意識に、剣を握るレイズ。
世界は本当に広い。この世のどこかに、この剣を自分より扱える人間がいるのだろう。
その時は、自分もこの剣を手放すのだろうか。
(でも、なんで母さんやレイがこれを持てた?俺だって、炎龍の時から持てたし……『そういう風』に作ってただけか?)
光龍以外に使わせないという信念があったならば、それで説明がつく。
ただ、そんな単純な問題ではない気がしているが、この段階では分からないままだ。
「…………」
レイラは剣を腰に装備する。代わりに、今まで使っていた剣を引き抜いた。
「……では、代わりに私の剣を渡します。武器なしでは、この先危険ですし」
「ありがとう。護身用として使わせていただきます」
レイラの武器と交換という形で、その場は収まった。
フランバーレに別れを告げ、彼女たちは先へ進む。