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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―霊峰と空―
567/689

―見つけた―

「…………」


暗い。そして、深い。




闇の底。




「…………」



フランバーレは、身体に力を入れるが、無反応だ。

身体が思うように動かせない。


なぜ、こうなったのか。そこで、彼女は思い出す。



(そっか……負けたんだ……)



最後の記憶。

それは、小娘に負けた記憶。

腹部に大きな衝撃を受け、意識が飛んだのだ。


(死ん……だ?の……いや……違う……)


一瞬「死んだのか?」とも頭を過るが、違う。

殺されてはいないらしい。身体は動かないが、思考は働く。



「強かったな……ほんっとうに……」



唇が動く。

表情筋が緩やかに動く。フランバーレは優しい笑みを浮かべる。


「まだ、いる?……起きて……渡さないと……」


首を動かす。

思うようには動かない。が、諦めない。


(渡さないと……!)


何度も、何度も動かす。そうしているうちに、身体に力が戻り始める。


拳が動く。首が上がる。四肢も動き始める。

そして。


「はっ!」


弾かれるように、フランバーレは目覚めた。




「ッ……」



腹が痛い。

咄嗟に腹部を押さえる。と、そこには包帯が巻かれているのが分かった。

衣服が一度脱がされたのか、無様に直されていた。素人でももっと綺麗に着直すと思うが。



痛みに耐えながら起き上がると、髪が外ハネした女の子と目が合った。


「……起きたの」

「え、えぇ……」


冷ややかな目で見られ、少し怯む。

しかし、当然だ。それだけのことを、自分たちはしてきたのだから。

今は命あるだけ感謝しよう。


「レイラ!起きたわよ!」

「!」


その様子だと、レイラはまだその辺にいるらしい。良かった。間に合った。



女の子の声に反応し、レイラが駆け寄ってくる。

あれだけの力を出した後なのに、走る元気があるのか。

全く、本当に驚かされる。


「フランバーレさん……」


彼女はこちらを警戒しているようで、少し離れた場所から声をかけてくる。


「気をつけて。何するか分からないわ」


警戒しているのは外ハネの女子も同じだ。

いつでも剣が抜けるよう、手を剣の近くにおいている。


「……もう、手は出さないわ……負けたんだし」


信じてもらえるか分からないが、本心だ。

悔いはない。最高の力で戦えた。その結果だ。


フランバーレは腰に手をやるが、剣が納まっていない。

そうか、飛ばされたままか。


「えっと、剣は……」

「あそこよ」


外ハネの女子は顎で示す。


彼女たちの後方に仲間が集まっており、そのさらに後ろに剣が転がっているのが見えた。


「渡してくれない?」

「は?何で」

「……警戒するのは分かる。けど、もう戦わないから」


彼女の問いには答えず、お願いするように話す。

これだけは、譲れない。



「はぁ……ま、その状態なら負けないでしょ」


こちらの傷口を見て制圧できると考えたのか、仲間に持ってくるよう指示する外ハネ女子。


しかし、後方に控えている仲間が剣を取ろうとするが、持ち上がらない。

男子二名が入れ替わっても同じだった。闇色の髪をもつ少年は剣に触ろうともしない。念のためか、サイドテール女子にも代わるが、同じだった。


「何やってんの……」


はぁ、とため息をつき、外ハネ女子が剣を握る。

しかし。



「……え?」



持ち上がらない。


「ちょ、え……?どうなってんの?」


どれだけ力を込めても、うんともすんとも言わない。

その様子を見ていたフランバーレ。あれは、恐らく……


「……レイラ。貴女が持って来て」

「え?はい……」


フランバーレの指示に従い、レイラに代わる。


すると。


「え?え?」

「なんで!?」


いとも簡単に持ち上がったではないか。

4名挑戦して持ち上がらなかった剣が、何事もなかったかのように。


中々持ち上がらなかったのを見ていたため、馬鹿みたいに力を込めてしまったが、不要だった。

むしろ、軽い。軽すぎる。

勢い余って大勢を崩してしまうほど軽かった。


レイラたちは困惑しながらも、剣を持ってきてくれる。


「……どうぞ」

「……ありがとう」


剣をゆっくりと納め、床に置くフランバーレ。


「あの……フランバーレさん」

「なぁに?」


言いにくそうなレイラの顔。


「その……『軽すぎ』ませんか……?」

「!」


フランバーレは顔を上げる。


「え!?いや、変ですよね!?あまりにも『重さ』を感じなかったので……」

「…………」


やっと、見つけた。

フランバーレは、無意識に涙を流していた。


「え……!?」

「何泣いてんの……」


フランバーレは涙を拭き、剣をレイラに差し出す。


「……レイラ様。この剣を貴女に捧げます」

「え?私に……ですか?どうして……」

「貴女が、真なる光龍派だから」

「え……?」


聞きなれない言葉に、レイラたちは口を開けたまま固まってしまうのだった。

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