―本物―
フランバーレの剣を破壊してからのレイラ。
かなり調子が上がっているようで、かなりの高威力な技を連発している。
強い、と驚嘆する一方で、不安になるレイズたち。
(レイラ……平気か?)
強くなったのは喜ばしいが、あんなに消費して大丈夫なのか、純粋に喜べないのが実状だ。
特にリゼルは、気が気でなかった。
(……飛ばしすぎだ。後先見えているのか?)
戦況的には有利で、フランバーレをやや押している。
しかし、高い龍力レベルで激しく動き回っているため、反動が心配だ。
唯一の救いは、まだ彼女らしく戦えていることだ。
荒れ狂う力に振り回されることなく、龍力を確実に扱えている。
大技をバンバン使っているのは気がかりだが、がむしゃらになっているわけでもなさそうである。
戦いは、ここで終わりではないのだから。
倒れてしまっては、困る。
リゼルたちの心配をよそに、レイラは猛攻を続ける。
「ふんッ!!」
「ッ!」
激しい攻防の中、フランバーレが攻撃する回数が減ってきた。
レイラの猛攻に押され、守り中心の戦いになっている。
しかし、フランバーレは焦っていない。
(凄まじい力……けど、いつまで『もつ』かしら?)
心の中で笑う彼女。
息が上がっている上でのハイレベルな攻撃。当然、龍力消費もバカにならない。
自分が防御に回っていることで好機だと考えているのなら、それは間違いだ。
防御に回す龍力を適切に判断、コントロールしていれば、大きなダメージを受けることはない。
せいぜい力を浪費しろ。無様に舞い狂え。
そして、自滅しろ。
……しかし。
「輝龍剣ッ!!」
「……!!」
「聖龍光烈剣!!」
「ッ……!!」
「聖光連斬!!」
「……!?」
落ちない。
龍力レベルが、全く落ちない。
フランバーレはだんだん焦り始める。
『普通』の龍力者なら、これだけの巨大な力を放出し続ければ、『飛ぶ』。
エネルギーがカラとなり、数日は起き上がれない。
それなのに、レイラはまだ立っている。戦えている。
一種のマヒ状態なのか?でないと、説明がつかない。
彼女に龍力の底はあるのだろうか。
「く……!」
フランバーレの焦りは、レイラにも伝わった。
(行ける……!!)
レイラのその猛攻を可能にしたのは、神龍レイだった。
彼女は自覚していないが、彼女の龍魂の精度は『完全なる龍魂』を超えつつある。
ただ、龍力の最高到達点が『完全なる龍魂』を超えていないため、周囲も気づかないのだ。
完全に無意識だが、彼女の龍力の使い方、構成と生成に変化が起こっていた。
いかに効率よく龍力を練り、身体に巡らせ、放出するのか。いきなりだと難易度が高いが、聖域でその土台ができていたため、その進化もスムーズだった。
また、体術に関しても、神龍レイが人間に宿っていた時の記憶がある。
戦闘の序盤で息を切らしてしまったが、後半ではその疲労を引きずることなく戦えている。
それら全てが関与し、レイラの戦闘能力を大幅に引き上げたのだ。
遂に、フランバーレのガードが飛ばされる。
衝撃で、右手の剣が宙を舞う。
「!」
彼女の龍力がレイラに負けた瞬間だった。
(これが……本物……!!)
体勢が崩れる。レイラと目が合う。
彼女は剣を振りかぶっている。次の攻撃が来る。だが、防御できない。間に合わない。
「終わりです!!」
フランバーレはレイラの強大な力を腹に感じながら、意識を失った。