―戦闘スタイルの変化―
「……見事ね」
フランバーレは破壊された剣を眺め、呟く。
油断は全くしていなかった。龍力レベルも落ちていないし、コントロールもできていた。
しかし、自分の『癖』はなかなか抜けない。
右に重点を置き、左の補助。
剣を二本使うということは、それだけ龍力レベルを底上げしないといけないし、その場に応じたコントロールも随時行う必要がある。
正直、レイラが突っ込んできた時は好機だと思った。ゆえに、右にも龍力を割きたくなり、防御の左が無意識におろそかになったのだろう。
それに加え、レイラは『自分』を狙っていなかった。
剣を破壊することのみに集中し、実践してきた。
攻撃に割いた龍力と、防御に回した龍力。自分自身に保持した龍力。
バランスよく配分したつもりだったが、レイラの狙いは剣一択。
自分の龍力バランスを見抜き、弱い部分を叩かれた。その結果、レイラは剣の破壊に成功した。
「…………」
フランバーレは静かにその剣を納刀する。
空いた左手で、主に攻撃に使っていた、光輝く剣を握る。
剣一本。違和感しかないが、なぜか前より戦える気がする。
良くも悪くも身軽になったが故だろうか。
「考え事ですか!?」
「!」
気づけば、レイラが目の前にいた。
剣を振りかぶっている。
「!」
インパクトの瞬間、両腕が痺れる。
その力に、フランバーレは素直に驚く。
レイラは疲労困憊。
自分なら技や龍力レベル、龍力コントロールが無意識に落ちてしまうだろう。
「雑になってしまう」と言い換えてもいい。
しかし、彼女はそれがない。
むしろ、龍力レベルが上がっているではないか。
否、左の防御がなくなったからそう感じるだけかもしれないが。
「輝龍剣ッ!!」
フランバーレは慌ててガードしようとする。が、間に合わない。
左手には、何もない。
(しまっ……!)
いつもの癖で左手が反応した。今さっき、左手の得物は破壊されたのだ。
「ッ……!」
彼女は身体を捻ってかわそうとする。
が、完全回避とは至らず、ダメージを受けてしまう。
「まだです!!」
好機とばかりに攻めてくるレイラ。
すぐに体勢を整えないと、一気にやられてしまう。
フランバーレは剣を振り下ろすと同時に、龍力を放つ。
「龍墜閃!」
「!」
レイラは咄嗟に下がった。
間一髪。
あのまま突っ込んでいたら、頭をかち割られていた。
突っ込んだであろう先の場所、その地面は深くえぐれ、亀裂が四方八方に走っている。
「……勘も鋭いのね」
「…………」
フランバーレは大げさに剣を扱う。
大丈夫。違和感はあるが、すぐに慣れてやる。
戦闘スタイルは多少崩されたが、龍力が衰えたわけではない。
(強さは変わらず……ですが、戦いやすくはなりましたかね)
正直、もう少し衰えるかと期待した部分はあった。
だが、落胆せずに剣を握り直す。
龍力レベルが同じでも、意識する武器が減ったのは大きい。
しかし、体力的に、そろそろキツイ。
「もっと飛ばしますよ!!」
最高の力で、決める。