―対等―
「輝龍剣ッ!!」
「双龍連光剣!!」
レイラの剣とフランバーレの剣が激しくぶつかり合う。
フランバーレの、剣を龍に見立てた攻撃が痛い。例によって龍力配分が右に多いため、左の剣をさばけても右をさばくことはできない。まだまだ力不足な部分がある。
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……」
レイラは額に大粒の汗を浮かべ、かつ、肩で大きく息をしている。しかし、フランバーレは汗こそ浮かんでいるが、そこまで息が上がっていない。
剣を二本振り回しているのに、余裕の表情である。
これが、体力の差か。
(まだまだ余裕そうですね……こっちはかなりハイペースだというのに……)
レイラも強くなったとはいえ、ここまで高レベルな戦いは多くない。
良くも悪くも『慣れ』がない。
よって、少しの龍力コントロールでも余計に体力を消耗するし、多めに力んでしまう。
一つ一つは小さな力でも、幾度となく技の応酬を繰り広げると、その力の消耗は大きくなる。
(……焦らないでよ?勝てない相手じゃない)
(分かっています)
光龍の声で冷静さは失われていないが、なにぶん消耗が大きい。
体力、龍力、精神力。
戦いが始まって数分だというのに、大きく削られてしまった。
フランバーレ戦でこれだ。この先の敵でも同じか、それ以上の消耗を覚悟する必要がある。
(このクラスの敵を連戦?楽しいですね)
レイラは、皮肉を込めたため息をつき、フランバーレを睨む。
二本の剣が厄介すぎる。あれをどうにかしないと。
(長期戦は不利。ですが、決め切れていないのも事実……)
フランバーレクラスの龍力者が、戦闘中にうっかり武器を手放すことは考えにくい。
なら、選択肢は絞られる。そして、自分にできる技量も知れている。
(……目的を見誤らないで)
(分かっています。ですが、このままではジリ貧で負けます)
(…………)
光龍は黙る。それを反論がないと受け取るレイラ。
腰を少し落とし、大地を強く蹴る。
ドン、という音を響かせ、彼女は跳躍した。
龍力を最大限高め、フランバーレに食らいつく。
「!」
フランバーレは衝撃に備え、ガードの態勢に入る。
(狙い通り!)
フランバーレは、防御に左の剣を使う。
そして、そちらは龍力配分がそれほど大きくない。攻撃側の剣にもある程度の力を留めておきたいためだ。
本体は狙わない。狙うは、一点。
「斬龍閃!!」
「!」
レイラは彼女の剣に向かって渾身の力で技を叩き込んだ。
「~~~~~~!!」
刃がせめぎ合い、音を立てる。
そして。
「!」
フランバーレの剣にヒビが入る。その瞬間、彼女の顔が驚きに歪む。
レイラの龍力により、ヒビは刃に連鎖的に広がっていく。
彼女の剣が破壊されるのに、時間はかからなかった。
「だぁっ!!」
「!」
レイラが剣を振りぬくと同時に、フランバーレの剣は砕けた。
柄と少しの刀身だけを残し、散っていく刃。
これで、防御に使っていた剣は使い物にならない。
「はぁ……はぁ……これで、対等ですね?」
「…………」
汗だくで疲労困憊だが、レイラは精一杯の笑みを浮かべ、フランバーレに吠えるのだった。