―フランバーレとの戦い―
レイラとフランバーレの激しい戦いが始まった。
お互いが完全なる龍魂クラスの龍力でぶつかり合っている。
レイズたちは離れて見守っている。
それなりに距離があるが、剣同士がぶつかる衝撃が肌に、心臓に響いているのが分かる。
「すげぇ龍力だ」
「あぁ。フランバーレに負けてねぇ」
レイズとバージルは素直にレイラの力を称賛する。それと同時に、自分も同程度の力が出せないと足手まといだと痛感する。
「……はやり、最低でも『完全なる龍魂』クラスか」
リゼルは静かに呟く。
フル・ドラゴン・ソウルでは通用しない。分かっていたことだ。
戦闘開始と同時に完全なる龍魂クラスまで龍力レベルを上げ、そこからどう戦っていくかが重要となる。
繊細な龍力操作、パートナーとの波長。挙げきれない要素が絡み合い、高位な龍力は成り立つ。
「レイラ……頑張って……!」
「信じてる……勝てるって……」
ただ見ているだけなのに、気づけば歯を強くかみしめているマリナとミーネ。
握る拳にも手汗が滲む。
「ッ……!」
二本の剣使いとの戦いは非常にやりにくく、しんどかった。
光を放つ右手の剣はもちろんだが、左の剣も意識する必要がある。
(右が攻撃寄り……!でも、左も補助を……!)
眼球を素早く動かし、情報収集するレイラ。
右利きであろうフランバーレのそちらにある剣。
一定の間隔を空け、美しく光っている剣。そちらを明らかに攻撃に使っている。
かと言って、左の市販されていそうな剣が攻撃に参加しないかと問われれば、答えはノーで、攻撃前後のスキを埋める役割を担っている。
以前はそのような戦闘スタイルではなかったと思う。
基礎龍力レベルはもちろんだが、剣術も体術も以前見かけた時より大幅に進化している。
前哨戦であろうフランバーレでこの変化。
フリアやスゼイたちはどのくらい進化しているのだろう。
レイラは静かに唾をのみ込んだ。
「…………」
ただ、変化を感じているのはレイラだけではなかった。
(強い……)
フランバーレは剣をぶつけ合いながら顔をしかめる。
この前会ったときは戦うことはなかった。ただ、戦わなくとも分かるレベルでピヨピヨの「ひよっこ」だった。
しかし、今はどうだ。
背格好変わらないのに、龍力レベルから剣技やら技の精度やらが底上げされている。
龍力に慣れたとかそんな次元ではない。龍力者がぶち当たる壁。それを超えている。
(今更何ができると思ってたけど……)
周辺視野でレイズたちを意識する彼女。
(案外、『ある』かもね)