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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―霊峰と空―
559/689

―光龍の女と闇龍の男―

場所は変わって、ギラス高原中盤。


「…………」


血を吐き、地面に横たわる二人の女性を見下ろし、戦場に立っている女はため息をついた。


「はぁ……貴女たちじゃない」


二人の女性は死んではいない。

勝てはしたが、何かスッキリできない勝ち方であった。

そこが心残りである。



「シャレム!アリシア!おい!」


茶髪の男が女性に駆け寄り、身体を叩く。


「……殺してないわ」

「この……!」


男が剣を抜こうとするが、動きが止まる。躊躇っているようだ。


「……行きたいなら、好きにすればいい……『無駄』だと思うけど」

「く……!」


シャレムとアリシアを倒した女。

フランバーレ=レノア。


自分に勝てないのに、フリアやスゼイ、イクサスなどスラムのメンバーに勝てるとは思えない。

命の無駄使いだ。


「……それは、どうでしょうね?」


新たな声。仲間がまだいたのか。


「…………」


不気味な剣を持つ白髪が銀髪か分かりにくい男。

殺意剝き出し。こいつは、強そうだ。


「そこの二人もそうです。負けはしましたが、アベレージの力量ではトントンだと思いますが」

「なら、なんで私は立っていて、二人は寝ているの?」

「言ったでしょう?『アベレージ』だと。最高到達点で負けた。それだけです。それか、また別の理由があって負けたのかも」

「…………」


確かに、二人は強かった。

事情があり、一対一の真剣勝負を提案していたため、勝つことはできたが、チーム相手では負けていたと思う。

それに、この心の『しこり』。これが気になる。



「……あなた方の底力には本当に驚きますよ」

「そう」


ゴゴ、と音を立て、男の剣に闇のオーラが集う。


「今……試してみても?」


笑みを見せる男。不気味な力だ。

フランバーレの龍が光だからそう感じるだけかもしれないが。


「……生憎、光龍以外は興味ないの」

「そう言わず……に!!」


問答無用。

男が一瞬で消え、目の前に現れる。


「!」


闇の剣と光の剣がぶつかる。闇のオーラが衝撃で弾ける。

彼女を纏う光のオーラを侵食していく。


(吞まれる!)


フランバーレは地面を強く踏みしめ、瞬間龍力を爆発的に上げる。


「この!」


金属音を響かせ、男の剣を弾いた。


「ッ……!」

「……意外と、でしょう?」


肩から流れる血。

それを見て、男は不気味に笑う。


「ふん……」


彼女は手で傷口を抑え、止血する。

この程度に傷、どうってことない。が、確かに。


「……確かに強そうね。でも、他はどうかしら?」


光龍使いの女二人は当然のこと、今の攻防のスキに倒れていた女二人を戦場から運んだ男。

その三人の戦闘力は予測できる。


「自分で言うのもあれですけど……けっこう強いですよ?」


ゾゾ、と剣が不気味に震える。

あれは、危険だ。ピリピリと身体が警告音を鳴らしている。あいつに関わるな、と。


「何度も言うけど……」

「……ハイハイ。つまらない人だ」


本当に自分に戦う意思がないと判断したのか、男は剣を納める。

不気味な気配が消え、フランバーレの身体のピリつきも治まっていく。


男はそのまま背を向け、静かに去っていく。


「…………」


フランバーレはその背中を見ていることしかできないのだった。

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