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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
555/689

―突入前夜・バージルと―

ギラス平原へ突入する前の日の夜。


男子寮で一人、バージルある人物と通信していた。


「……やっと、だ」

「……そうだね」


声の主は、北にいるフォリア。

バージルが非常に気になっている女性だ。

彼女とは離れているため、話す機会が滅多にない。自分も出ずっぱりで王都にいない。

だが、今はここにいる。ここにいれる間は、繋がれる。


「同期として、誇らしいよ」

「あぁ。そうだろ?」

「ふふ」


フォリアは微笑みながら、試験のことを思い出していた。


試験で見せたバージルの力。

確かに光るものを感じたが、まさかここまで大きくなるとは思っていなかった。


時間経過的にはそこまで経っていない。

それなのに、長い時間を過ごしていた気分だ。


「……当日は、仕事か?」

「うん……でも、いなくても分かんないレベルのグループさ」

「町を守るんだろ?仕事に上も下もない」

「はは……そうだね」


フォリアは無理矢理笑って見せる。


そう。

仕事に上も下もない。

頭では分かっている。しかし、彼女の中では気持ちの整理がつかなかった。

だから、フォリアは考えた。そして、行動に移していた。




「なぁ、明日からの戦いが終わったら、話せるか?」

「もちろんだよ」

「よし、なら、また都合つけてくれよな」

「任せなよ。明日に響くだろ?……切るよ」


小声の、切るよ。

フォリアは唇を噛む。


(……………)


まだ、切りたくない。

切れば、一人になってしまう気がする。

だけど、切らなければ。彼は最前線で戦うのだから。


自分の欲望をぐっと堪え、先ほどの言葉を絞り出した。


「あぁ。お休み」

「うん、お休み」


通信が切れ、部屋に静寂が訪れる。


電気を付けず、蠟燭の炎を灯として使っている。

その揺らぎを眺めながら、フォリアはゆっくり目を閉じる。


(……計画通り)


龍力レベルが低い団員は町の防衛任務となる。

良くも悪くも町に団員が普段以上に集まる。

したがって、新人が長時間抜けても誰も気付かない。

定期的な点呼も同僚に頼み込み、口裏を合わせてもらえるよう動いた。最初だけ顔を出しておくか。


下準備の結果、当日、自分は町にいなくても上にバレることはない。



もちろん、自分の龍力の研鑽も忘れていない。

バージルたちはドラゴン・ソウルの上を行っていた。そして、敵はその更に上を行く、と聞いている。


すなわち、ドラゴン・ソウルの上の上の領域が存在することになる。


(それだけで済めばいいけど)


人間風情がどこまでドラゴンの力を扱えるのかは不明だが、ステージとして最低でも3段階以上あることは確かだ。

だから、フォリアはこれらの下準備を入念に行っていたのだ。


準備が整った後は、ひたすら特訓だ。彼らの足を引っ張るのでは意味がない。

だから、徹底的に自分を鍛えた。そして、見違えるほど強くなったと思っている。


事実、あの時バージルが見せてくれた力に等しいレベルまで到達した。


(驚くだろうな……ふふ)


フォリアは蠟燭の火を消し、ベッドに横たわるのだった。

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