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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
554/689

―突入前夜・マリナとミーネ―

ギラス平原へ突入する前の日の夜。


マリナとミーネは騎士団の女子寮で最後の確認を行っていた。

主題は龍力のことだ。そして、話は今後のことにシフトしていく。



「……龍力の構成にもだいぶ慣れてきたわ」

「うん。後は、戦いに追いつけるスピードでの調整ね」


アルカリオンの件以降、彼女たちは人一倍努力をしてきた。

レイラやリゼルと比較して龍魂の扱いに慣れていないことや、戦闘経験も浅いことから、スムーズかつ繊細な龍力操作を強く意識するようになった。

遅れを少しでもカバーできれば、という一心だ。


「当日はもっとスピードが要求されるわ」

「うん。けど、これ以上はオーバーな気がするわ」

「そうね。止めにしましょ」


前日に重たい特訓はしない。

ただ、どんな状況でも先日の感覚を忘れないように再現できるよう、意識しておくことは重要である。



穏やかに、自然な形で龍力を落としていく二人。


「……でも、良かった」


マリナが安堵した表情を浮かべる。


「ん?」

「わたしもミーネも、最後までレイラたちの応援ができそうで」

「あ……」


ミーネは気付き、視線を落とす。


忘れていない。自分が、自分たちがここまで努力を続けてこられたのは、レイラたちへの恩返しだ。


レイラたちに救われ、助け合いながらここまできた。

多分、レイラたちが中心となって行う大きな戦いはこれで最後になる。


未来永劫とは言い切れないが、レイが倒されれば、しばらくは安全だ。

隠れた強者たちは存在することは把握しているが、『敵戦力』と決まったわけではない。



「……この戦いが終わったら……どうする?」


ふと、ミーネが寂しそうな顔をし、そう呟いた。


「え……?」

「あたしは……あんまし考えてないかも……でも……」

「でも?」

「ずっと騎士団にいるのは違う気がする。レイラも、リゼルたちだって、それは望んでない気がする」

「…………」


当初の目標であった『龍魂のコントロール』は完璧だ。

ドラゴン・ソウルだけでなく、フル・ドラゴン・ソウル、完全なる龍魂とステージを進めている。

よって、ミーネたちはいつでも騎士団を離れることができる。

なりゆきでレイ討伐隊に属しているが、その後も騎士団にいる必要はない。


「当然、やりたいから騎士団に残るのは賛成すると思う。けど、マリナも『違う』んでしょ?」

「う……」

「だから、聞いたんだけど」

「…………」


コク、と彼女は小さく頷く。


レイラのことは大好きだし、このチームに不満は一切ない。

しかし、今の仕事をずっと続けるかと問われれば、返答に困るのは事実だ。


「戦いが終わってすぐ……じゃないとは思うわ。けど、いずれは故郷に帰る……と思う」

「マリナ……」

「曖昧よね……けど、これが今のわたしに出せる最大限の返答みたい」

「うん、アリガト」


ミーネは一度大きく伸びをする。


「……あたしも、保留にしよ」

「あ、でも、この戦いが終わったら……」


ボソ、と呟くマリナ。


伝えないと。

彼に、この気持ちを。

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