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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
548/689

―神龍の答―

人間界の問題のことで、とレイラは口を開く。


「人間界の問題……その火中の人物が、レイ=シャルトゥなのです」

「そうか……それで、か」


神龍レイは驚いた顔をするが、すぐに納得の顔になる。


「はい。ですので、何か関係があるのか、と思ったのですが」

「我の答は変わらない。覚えている限り、人間のレイ=シャルトゥは会ったことがない」

「……分かりました」


レイラは軽く頭を下げ、口を閉じた。

場に沈黙が流れる。


「……で、神龍レイさんよ。聞きたいことは以上か?」

「む」

「そろそろ帰らねぇとな」


レイズはリゼルたちを見ながらそう伝える。


登山を始めて数日経った。

想像以上に滞在してしまっている。

ここでは人間界の様子も確認できないし、一度帰ってレイの動向を探る必要もある。


しかし、神龍レイに引き留められる。


「……待て。お前たちは、絶対に勝てない」

「!」

「人間界の邪悪な力は日に日に力を増している。お前たちも戦えるようだが、まず勝てまい」


神龍レイからの評価。


俺たちに負けたくせに、と言うこともできるが、ここは聞く。

それに、レイズは感じていた。レイと神龍レイ。レイ戦の方が、感じる恐怖が桁違いだった。

それは、単純に戦闘能力や潜在能力の差。

神龍レイは「身体にガタが」と言っていたし、(それでも非常に強かったが)力は衰えている。


「ですが、私たちはやり遂げなければ……」

「それが、騎士団の……女王としての責任だ」


リゼルの言葉に、神龍レイは反応する。


「お前が、人間界の王か」

「え?はい……」


レイラを見つめ、観察するように目を細める。


(……潜在能力は未知数……光龍との波長も、光龍王との波長もいい……)

「えっと……?」


まじまじと見つめられ、戸惑うレイラ。

お構いなしに、神龍レイは内面を見透かす。


(人間本人の責任感も強い……勇気……誠実……純粋……心の汚れが見えない……)


神龍レイは「ふぅ」と小さく息をつく。


「……偶然にも、我は人間界の王と戦えた訳か」


そして、光龍王とも。


神龍の実力はよく知っている。扱っている人間のことは心当たりがないが、ここまで力が感じられるということは、呑まれることなく力が使えているのだろう。


彼らの言う『敵』のおおよその力と、今見た彼らの力。


(…………)


このまま帰せば、間違いなく殺される。

太陽龍王ソルが信じ、巫女及び龍王が信じた、この少年少女たちが。

それは、あまりにも惜しい。


(人間界の問題に首を突っ込むとは……我も変わった、のか……)


過去の自分からは想像できなかった。

この光り輝く可能性の塊が、無残に散っていくのが惜しいと感じるとは。

相手は人間で、ドラゴンですらないのに。


「土産だ。我の力をお前たちに託す」

「!!」

「当然、すぐに使えるようになれると思うな。お前たちの進化の先に、我は存在する」


イメージとしては、龍王の力と同じだ。

力は自分たちの中に存在する。それを扱えるかどうかは、自分次第。


「待って!!『託す』って……!」


わざわざ「託す」という重い言葉を使う意味。マリナはそこに引っかかった。


「先ほども言ったが、この身体は長い。そろそろ、眠らせてやらねば」

「それって……」


ソルと同じ状況だ。

そうなれば、神龍レイは?レインジ=シャルロートゥは?


「……人間界の王とその仲間、そして龍に敬意を表し、全員に我の力を託す。お前たちに宿る訳ではない。したがって、我はここで現世を完全に離れることとする」

「!!」

「……いいのですか!?」

「いい。どちらにせよ、長くない身体だ。ならば、意味ある最期を迎えよう」


誰にも知られず朽ちるより、喜ぶだろう。と神龍レイは遠い目をする。


(レインジ……ありがとう)


神龍レイは自分の胸に手を当て、相棒を想う。そして。


「始めるぞ」


彼が手をかざすと、仲間たち全員を包むオーラが発生した。

当然、無属性である。属性を扱う感じに慣れているため不思議な感覚だ。


力が充満するに連れ、神龍レイの身体が薄くなっていく。


「私、倒します!!レイを、倒します!!」


涙声でレイラは叫ぶ。

神龍レイはそれには答えず、ゆっくりと、小さく口角を上げる。


彼の身体が益々透明になり、光の粒子が舞い始める。


「絶対に、期待を裏切りませんッ!!」


レイラが叫び終わったと同時に、神龍レイの身体が、消えた。



完全に。

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