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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
546/689

―神龍―

「我は、神龍。文字通り、ドラゴンの神という立場だ。昔、旅をしたこの身体を借りている」


仲間が全員覚醒し、レイ似の男と向かい合うように座ると、彼は話し始めた。

この神龍はソルと同じように、人間の身体を借りて存在しているらしい。


「ここは、龍界とはまた別の空間。神龍しかいない、言わば『聖域』だ。だから、他のドラゴンもいない。尤も、飛行能力が高い魔物は紛れ込むが」

「それで……」


レイラは納得したように呟く。


本来なら、神しか存在しない空間。ただ、そこに壁はないらしく、飛行中の魔物が紛れ込むことがある。

自分たちが出会った魔物は、その類だ。


「……この間の熱線はお前だろ。なぜ助けるようなマネを?」


レイズは突っかかるように聞く。


「我はこの空間を熟知している。いつどこで魔物が紛れ込んだのか……もな」

「……で?」

「お前たちがこの空間に来たことも知っていた。だが、相手をするつもりはなかった。あの時までは、な……」

「……あの時?」


マリナとミーネは首を傾げる。

熱線が飛んできたとき、自分たちは何をしていたか。


「『王』の力を感じた」

「!」

「あの時……!」


思い出した。


多数の敵に囲まれ、絶体絶命だった。

逃走を試みたかったが、不可能そうだった。そんなとき、レイズが龍力を高めたのだ。

太陽龍王の龍力を。


(……そういうことか)


リゼルは目を細める。

本来スルーされるはずの自分たち。しかし、レイズの力が太陽龍王であることで、神龍に興味をもたせた。


「人間が龍の魂を扱っていることは知っている。それ故に、別段驚くことではなかった……が」


神龍はレイズを見つめる。


「お前の力は、間違いなく太陽龍王の力。それに、別の者からも王の力を感じた」


後半は戦闘中だが、と神龍は言葉を締める。


「…………」


レイラは拳を強く握りしめる。


(戦闘終盤……王の力を強く感じました……)


龍界へ行った直後は何も変化を感じなかったが、自分たちの中に『王』は居るのだ。


「……あのまま鳥どもと戦っていれば、確実に死んでいただろう。だから、だ」

「ち……」


神龍に舌を打つレイズ。

レイではない別な存在なのだが、なぜか素直になれない。


「で、何であんたは『レイ』に似てるんだ」

「レイ……なぜ我の名を知っている?」


神龍は驚いた顔を見せる。レイ似の男の名前は、レイだったのだ。

その偶然の事実に、仲間たちに衝撃が走る。


「!?」

「どういうことだ!?説明しろ!!」


興奮気味のレイズ。それを意に介さず、レイは淡々と続ける。


「……我はレイ=シャルトゥ。この身体の生前の主の名レインジ=シャルロートゥから命名した」

「え!?」

「どうなってやがる……!?」

「ち……」

「どういう……こと……?」


驚く仲間たち。反応は三者三葉だ。

事情を詳しく知らない神龍レイは、どういう意味か理解していない。


レイ=シャルトゥは偽名。

それはまだ分かった。が、この聖域に存在する神龍の名も『レイ=シャルトゥ』とは。

雰囲気もレイに似ているし、偶然とは思えない。


「……人間界にも『レイ=シャルトゥ』を名乗る人物がいます」

「ほぅ……?」

「……心当たり……ありませんか?」


レイは興味深そうに顎に手を当てる。


「……記憶が残っている限り、レインジに『レイ=シャルトゥ』という知り合いはいない。ただ、この身体も色々ガタが来ていてな。確実な記憶ではない、が」

「…………」


ガタが来てあの力か、とリゼルは心の中で舌を打つ。

ソルもそうだったが、ドラゴンが龍力を操ると、人間の体でも圧倒的な力を発揮できるらしい。


(……『暴走』も『禁忌』もその部類、か……)


結局、神龍レイと黒幕レイとの関係は分からずじまいだ。これ以上追及しても答えは出なさそうだ。

それは一旦置いておいて、気になることはまだまだある。


「……神龍はあんただけか?」


ドラゴンの頂点。

王ならば属性ごとにいたが、無属性である神龍はどうなのか。


「……三体いるはずだ。が、残り二体は……誰かに宿っておるな」

「!!」


間違いなくレイだ。

ただ、もう一人は誰だろうか。


「どの聖域にも気配がない。それに、人間界からそれらしい力も感じる」

「『どの』?」


ということは、この聖域は数か所存在することになる。


「鋭いな。娘っ子」

「いえ……」


神龍レイに見られ、レイラは目を背ける。


「……形式上だが、陸・海・空を司っている。『陸を司るから海の力が使えない』とかそんな縛りは全くない。言うまでもないが、我は空を司る」

「…………」

「我はある意味フリーな立場だな」


レインジの肉体を借りてはいるが、パートナーとして宿っているのではなく、特殊な状態。

そるふぁの身体を借りて存在していたソルのようなパターンである。

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