―戦いの後―
あれからどのくらい時間が経っただろうか。
レイズは身体の痛みを覚え、身を捩った。
「うッ……!」
いてて、と声を漏らしながら身体を起こす。
空は青い。
「……見事だった」
「!」
突然の声に、レイズは反射的に跳ねる。
レイ似の男を認識した時は、剣を握っていた。
身体に染み付いたクセ。何かあった時、すぐに武器に手が伸びてしまう。職業病だ。
武器を握ったは良いが、肝心の龍力が上がらない。
こいつとの戦闘で使い切ってしまったのか。マズイぞ。
「…………」
武器を取り、こちらを睨んでいるレイズを見て、レイ似の男はため息をつく。
「はぁ……よせ。勝負はついた」
彼は静かに言い、周囲を見るように促す。
「は……?」
レイズは初めて認識した。
今まで踏みしめていた、雲のような床面。それが、巨大な穴を空け、流れる白い靄を飲み込んでいた。
風の流れでそちらに流れているだけなのだが、謎の浮遊感と言うか、高所に突然連れてこられたかのような感覚となった。
「…………」
恐る恐る穴を覗き込むが、雲のような層が分厚く、下は確認できそうにない。
穴の奥は闇のように暗く、不気味だ。この下は『こう』なっていたのか。
穴の付近は風が強く、今にも吸い込まれてしまうそうだ。
レイズは身震いし、慌てて穴から離れる。
「あれは……」
「我々の戦いの跡だ」
「…………」
よく見れば、自分もそうだがレイ似の男はボロボロだ。
血は拭ったのか今は確認できないが、壮絶な戦いを終えた後だというのはよく理解できるほどに傷だらけだった。
「皆が起きたら説明しよう。とりあえず座れ」
「…………」
色々言いたいことはあるが、レイズは言葉を飲み込んだ。
自分だけ聞いても意味がない。全員起きるのを待とう。
仲間たちは、レイズより飛ばされたらしく、更に離れた場所に倒れている。
「……しっかり聞くからな」
「あぁ」
レイズは一旦剣から手を離し、腰を下ろすのだった。
そして、改めてレイ似の男を睨みつける。そして、観察した。
レイ似の男はそれに気付いたのか、レイズと視線を合わせた。
「……見られるというのはむずがゆいものだな」
「黙れ」
舌を打ち、レイズは視線を外す。
(レイに似てる……けど、よく見ると全然違うな……)
ぱっと見の風体はレイにそっくりだった。
しかし、見れば見るほどレイとは違う点が次々と発見できる。
レイとこの男は無関係なのか?もし、関係があるとすれば、『自分』との関係は?
「…………」
レイズは悶々としながら仲間の覚醒を待つのだった。