―神龍と龍王―
ドクン、と仲間たちの心臓が高鳴り、それぞれの属性の未知なる力が充満する。
(何だ!?これは!?)
仲間と共有している龍力。これは、ただでさえ膨大な情報量なのに、そこに『龍王の力と知識』が流れ込んでくる。
レイズたちはパンクしかけるが、パートナーが調整の手助けをしてくれた。
(死なせない!!)
(レイラを!守る!)
(お前たちの物語……続きを見せてくれ)
(消えるには、早い)
(神に歯向かうなんて……でも、面白い)
人間一人では到底処理できない龍王の情報。
力を認めたパートナー龍が幾らか負担をし、彼らの処理を手助けする。
(すげぇ力と知識だ……!ぶっ飛んでる!)
龍王の力と、その知識。
龍界で対峙したどのドラゴンよりも強い力だ。
もちろん、その強い力を扱うには、それ相応の知識が必要となる。
レイズたちが心掛け始めた丁寧な龍力の構築・生成術もそれの導入の一助となった。
構築・生成の適切な順序。龍術や技の効率の良い構成の方法。ショートカットやスキップ方法。
(これなら手早く力を構築できる!!)
龍王め。こんな仕掛けでサポートしてくるとは。
龍界直後、成長を実感できなかった。だが、龍王はしっかりお土産をくれていた。
そのお土産の中身が分かり、レイズたちは納得した。何の前知識もなくこの情報を得たところで、豚に真珠に終わる。
だから、龍王は力を工夫して渡した。
自分たちが龍王が本当に期待する場所まで到達した時、発動するように。
「行ける!行けるぞ!!」
仲間たちの龍力の境界線が全く分からなくなる。完全に混ざり合った。
「…………!!」
美しい光と共に、キメラドラゴンが巨大化する。
王の力が影響したのか、パーツがぐちゃぐちゃだったキメラドラゴンが姿を変え、一体のドラゴンを形成した。
龍圧と風で足元の白い靄が外に流れる。
「行くぞ!!皆!!」
「あぁ!!」
仲間たちの力と思い。
パートナーと王の力と思い。
全てを乗せ、神龍にぶつける。
「「「「「「貫け!!バハムート!!」」」」」」
ドラグーン系統の術よりも一段階進化した、バハムート。
バハムートが、吠える。
「オォォォォォォォオオオオオオオオオ!!!!!」
レイ似の男に向かって突撃する。
彼は真っ直ぐバハムートを見据え、腰を少し落とす。
そして。
「……神威」
剣に神龍の頭を具現した。
「……滅界!!」
「「「「「「!!」」」」」」
バハムートと、レイ似の男の神龍がぶつかった。
その瞬間、六人の腕に神の力がバハムートと通じてのしかかる。
激しい光と熱反応。龍圧に風。
「~~~~~~~!!」
力はほぼ互角。
六人の力をここまで乗せて、互角。
「もっとだ……!!限界まで……!!」
「おぉぉぉおおおおおッ!!」
力を出し尽くせ。
新しく得た龍王の力・知識をフル活用しろ。
「あぁぁぁあああ!!」
仲間の体が悲鳴を上げている。
腕が、足が軋む。
それでも、諦めない。一人でも力を緩めれば、一瞬で負けるからだ。
「レイに……!!勝つんだ……!!」
(その意気よ!!レイズ!!)
「!!」
ソルの声が脳内に響く。
その瞬間、力が湧き上がった気がした。
「!!」
一瞬、神龍の頭を押せた気がした。
「今だぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
レイズは叫んだ。喉が潰れるほどに。
「!!」
彼の声に後押しされるように、仲間たちの力が増幅していく。
そして、遂に。
「オオオォォォォォォオオオオオオ!!!」
レイズたちのバハムートは、神龍の頭を砕いた。
「!!」
レイ似の男の顔が驚きに歪む。
微かにそれが見えた次の瞬間、大爆発が起こった。
強大な力の均衡が崩れ、バランス崩壊を起こしたためだ。
「ッ!!」
レイズたちは爆風に吞まれ、吹き飛んだ。
しかし、レイズは何かにぶつかり、止まった。
だが、今の彼にそれが何かを確認する余裕はない。
ただ、背中に当たる心地よい力。よく知っている力だ。
レイズは必死に首を動かし、後方を確認しようとする。
そして、薄れゆく意識の中で、彼は見た。
吹き飛ばされていた自分の身体を支えている、ソルの姿を。
「ソ……ル……?」
それが幻覚だったのか、本物だったのかは分からない。
レイズの意識は、闇に堕ちた。