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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
543/689

―未知なる力―

龍力の合体。

それは、スゼイ戦でただ一度できた技。


リゼルやレイズはその現場を見ていないが、話には聞いていた。

それは、単純な足し算ではなく、プラスαの力を感じた、と。


そして、その力でスゼイを倒した。


「……僕たちに残された力は少ない。力を合体させるしかない」

「もし……それで勝てなければ……?」


不安そうなレイラの声。しかし、彼女を気遣うことなく、静かに言い放つリゼル。


「……覚悟を、決めろ」

「…………」


他に打開策はない。そして、失敗=終わり。

その現実に、ゴク、と唾を飲み込むレイラ。


ここは天界。助けは来ない。

自分たちの力で切り開かなければならない。

それができなくなった瞬間、終わる。そんな世界。


リゼルはそこを理解しつつ、未知なる可能性に賭けようとしている。


「…………」


シン、と静まる空気。

このままでは決定してしまう。バージルは慌てて言葉を放つ。


「あの時は4人の力だった。今度は6人だ。それを融合させるなんて……」


あの時感じた、龍力が溶け合う感覚。

完全に別属性であるのに、自分の力の一部のように感じた。

だが、それは4人だったからできた芸当のように思う。それが6人になれば、更に術式が複雑となる。


「……他に方法が?」

「え……?いや……」


リゼルの問いに、バージルは顔を少しだけ背ける。


未知なる可能性に挑戦し続ける必要があるのは確かだ。

だが、一度も予行演習なしにぶっつけ本番なのは如何なものか。


「……どうせ力はほとんどねぇ。やってやるよ」


レイズはやる気だ。

大技をことごとく見切られている以上、未知なる可能性に賭けるのも悪くない。


「あの時の感覚よね?上手くできるか分からないけど……」

「うん。けど、可能性があるなら」


マリナ、ミーネも了解し、準備に取り掛かる。


「はぁ。わぁったよ」


他に案もない。

バージルもすぐに龍力を高める。


「リゼル、レイズ。私たちに合わせてください」


言いだしっぺは自分だが、導くのは経験者の4人頼みだ。

リゼルは素直に首を振る。


「……あぁ」

「おう!」


ズオ、とレイズたちの龍力が高まる。



「お?作戦会議は終わりか?」


レイ似の男は自分たちの力に興味があるのか、この間は攻めてこなかった。

その判断、後悔させてやる。


「行くぞ……!!」


レイズたちの龍力がじわじわと混ざり合っていく。


眩い各属性の光。

流れるような、美しい龍力が展開していく。


「いいねぇ……!!待った甲斐がある!!」



龍力の境界線が曖昧になり、お互いの力が行き来し始める。

しかし、その先が上手くいかない。


「く……!!」


自分の波長とパートナーの波長。そして、仲間それぞれの波長が脳内に流れ込み、精神を揺さぶる。

スゼイ戦より大きな力を扱っているせいだろう。情報量が先日と段違いに多い。


「楽しくなってきた……!」


レイ似の男は口角を上げる。


この間、レイズたちはスキだらけだ。

強い攻撃でなくとも、技や術で遊んでやれば、あっという間ケリがつく。

だが、彼は動かない。


(お前たちの最高の力……見せてくれ)


顔はふざけつつも、その目はしっかりとレイズたちの龍力の質を見定めていく。



力強く、美しい龍力。

それが6体分混ざろうとしている。


「つ……」


仲間たちの力が混ざれば混ざるほど、精神はすり減っていく。

それだけ強大な力が引き出せている証拠なのだが、今のままではダメだ。


自分とパートナーのシンクロ率はそこそこだが、仲間とのシンクロ率が高くない。

スゼイ戦では割とすんなり行けた印象があったレイラ、バージル、マリナとミーネ。そんな彼女たちも苦戦している。


(太陽と月の力……!!)

(調整がシビアすぎる……!!)


初めて脳に感じる太陽と月の力。

加えて、レイズの力は太陽龍王のものだ。

龍力の質が異なるのは分かるのだが、なかなか掴めない。彼らとの間だけに壁を感じる。


レイズやリゼルはそもそも初体験だ。

そのハンデをこちら側でカバーしなければならない。


(しっかりしろ!!俺!!)

(生き残れ!レイラを死なせる気か!?)


龍力が混ざり、キメラドラゴンが構築されていく。

先日見たそれよりも美しいが、形が歪だ。そして、それほど大きくない。


「まだだ……!!」


6人分の波長と、6体分の波長。

属性も質も異なるその力を混ぜ合わせ、巨大な龍力を構築し、操作、相手にぶつける。

かなり難易度が高い。


「ち……く……しょ……!!」


もちろん、構築中も龍力を消費する。

急がなければならないが、急いでどうこうできる問題でもなく、時間だけが過ぎていく。

レイ似の男も受ける準備が完了したのか、最大限の龍力を纏い、構えている。


「もう……だめ……!!」


ミーネの顔が歪み、ふらつきそうになる。

その時だ。


全員の脳内に、同時に声が響いた。


(王……!!)

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