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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
538/689

―瓜二つ―

エラー龍力者とは言え、流石にここまで龍力レベルを上げてきた龍力者たちだ。

『慣れ』と言う意味では、彼らは環境に適応した。


「『慣れる』が『だれる』になるなよ。レイズ」

「俺だけかよ!?」


バージルに念を押されながらも、それに突っ込めるほどの余裕まで生まれている。


(フン……伊達にここまで来てはいない、か……)


戦闘を歩いているリゼル。

誰にも悟られぬよう、静かに口角を上げる。


「バリアの中……慣れてしまえば、普通の『空間』ですね……」

「そうだね。でも、力が落ちたらあの力の波に潰されるのよね」

「そうなりますね……それが目に見えないのも不思議ですね……」

「そういう能力?があるのかも……」


レイラ、マリナ、ミーネもそれなりに会話しながら着いてきている。


この空間に慣れなければ、死ぬ。

ある種の極限状態が、彼や彼女たちの適応スピードを底上げした。

彼らが知らぬところで、パートナーの龍が手を貸した可能性もあるのだが。


(どっちにしろ、進めている……)


この先に、何が待っているのか。

熱線を放った『何か』は、いつ目の前に現れるのか。


今を生きるドラゴンは、相変わらず一体も見当たらない。

巫女の気配もない。

心なしか、魔物の気配が弱くなっている気がする。荒れ狂う龍力をビンビンに感じているせいもあると思うが。


歩いていると、ふとマリナが口を開く。


「ねぇ……バリアの『形』って……どうなってるのかな?それ」

「え?どういう意味です?」

「え~と……私の勝手な想像だと、バリアって自分を中心に壁を作るイメージなのよね。でも、よくよく考えたら、自分はバリアの隅にいて、長ったらしいバリアを構成しているって可能性もあるのよね~」

「あ、確かに……」


ミーネもバリア中心に術者がいると考えていたが、実際は違うかもしれない。

自分たちが来る方向が分かっていて、力を削るために楕円形のバリアを張っている可能性もある。そもそも、円状ではない可能性だってある。


マリナの疑問に「なるほど」と思う一方で、答えが出ない無意味な疑問であることを言うバージル。


「……バリアの規模も形も本人にしか分からない。考えても無駄だと思うぞ?」

「そうね。気になっただけよ」




と、自分たちに重くのしかかっていた龍力の嵐が突然消えた。


「!!」


レイズたちに一気に緊張が走る。


「何だ!?」

「バリアの外に出ちまったのか!?」

「嘘!?」


突然の龍力環境変化に戸惑うレイズたち。


リゼルは舌を打つ。


(ち……進む方向を間違えたか?)


熱線が飛んできた方向を計算しながら歩いていたが、何も見当たらないまま、バリアの気配が消えてしまった。


見落としたか、方向が少しずつずれていったかのどちらかだと考えたが、再考は不要だとすぐに分かった。


「おい。見ろ」

「!」


白い靄の隙間。

そこから、人影が起き上がった。寝ころんでいたのか。

人影は見えるが、遠くて具体的な風体は確認できない。


「…………」


レイズたちはゆっくりとその人影に近づいていく。


「気を付けろ……」

「あぁ……」


お互いに姿が確認できる距離まで近づいた。

そのタイミングで、その人間は振り返った。


その瞬間、レイズの時間が止まる。


「……!!」


右目が隠れるくらいの長い前髪。色は暗めの茶色で、後ろ髪は襟足に届かないくらい。

ゆったりしたコートを直に羽織っている。そのコートは年季が入っており、見ようによっては永遠の旅人のそれだ。


相手の姿が確認でき、時間が進み始めたレイズは龍力を最大限解放しながら叫んでいた。


「レイィィィィィィイイイ!!」

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