―龍力バリア―
レイズたちは、先導するリゼルの後ろに続き、歩いている。
その間にも、龍力と向き合うことを忘れない。
(……まずは、簡単なところから慣らす)
いきなり戦闘から入るのはハードルが高い。
そのため、簡単な歩きながら龍力を練ることを課題とした。
もちろん、丁寧に構築・生成することを忘れない。
ながら○○はよろしくないが、ここには自分たち以外人間はいない。
他の仲間も近くにいることから、そこまで迷惑とはならないはず。
「おい、あれ……」
「一旦止まれ。回避する」
移動していくうち、魔物を見かけることもあった。
それに共通しているのは、鳥型の魔物であるということ。
あの怪鳥ほど大きくはないが、無意味に戦闘に臨む必要もない。
ファーストコンタクトの怪鳥で痛い目に遭っているリゼルたち。
確認できた時点で止まり、通り過ぎるのを待つ。
「……鳥ばっかだな」
「あぁ……」
歩きながら龍力を練り、かつ周囲の警戒も忘れない。場合によっては、その上での会話。
一度にやることが多すぎる。が、練習にはもってこいだ。
そのせいか、会話が雑にはなっているが。
戦闘を歩くリゼルは、この空間について、一つの考えに到達していた。
(龍界……とは感じが違う。そして、魔物の共通点……)
建物がないのは、人間が存在しない龍界だから。
しかし、巫女もおらず、魔物が存在している。今を生きるドラゴンも見られない。
そこで導き出される答えは、ここは龍界ではない。ということ。
特別な空間であることに変わりはないのだが、間違いなく人間界の一部だ。
そして、出現する魔物が鳥類であること。
鳥類と言っても、飛行能力を有するもの。それだけがこの空間に存在している。否、行き来している。との表現が近い。
最初に遭遇した巨大な鳥は、地面(?)を突き破って出現した。
つまり、白い靄の下に巨大な鳥が飛べるだけの空間があるということ。
そして、この空間の色。
白及び蒼。これは、雲と空を連想させる。
足元の靄も、雲によく似ている。尤も、雲を踏むことはできないが。
(……ここは、空の一部だ)
ただし、自分たちが見上げて確認できる場所ではない。
もっと高い場か、もっと別の『何か』なのかは判断つかないが、空であることは間違いなさそうだ。
地面の区切りから下を確認できれば確信に繋がりそうだが、意外にも隙間が見えない。
お互いが存在を認識できないようになっているのか。ただ、魔物はこちら側に来た。
その辺りの位置関係はまだ考えがまとまらない。
と、リゼルはふいに嫌な気配を感じ、足を止める。
「うお!」
「ッと……」
急に足を止めたため、連鎖的に仲間たちが背中にぶつかってくる。
「……リゼル?」
「どうしたんです?急に……」
「…………」
仲間たちの問いには答えず、彼は黙って目の前に手を伸ばす。
「?」
リゼルの謎の行為に頭に「?」を浮かべる仲間たち。
すると。
リゼルの手が何かに弾かれた。
「!」
彼は手を引っ込める。
弾かれた一瞬だけ『壁』のようなものが見えた。
「何だ!?」
「ち……」
痛みは走ったようだが、大事にはなっていない。
「何だ……?」
レイズたちに緊張は走る。
弾かれたであろう場所には、何もない。
「見えました?」
「うん」
「わたしも、見えた……」
ミーネも、マリナも認識できている。
リゼルを弾いた瞬間、網のようなものが見え、消えた。
それを認識してから、余計に『嫌な感じ』に襲われるレイラたち。
「……集中しすぎだ。もっと外にも意識を」
リゼルはため息をつくも、彼らに対して一定の理解はある。
余程集中していたのだろう。
こんなにも『嫌な感じ』がするのに、気付かずについてくるとは。
それだけ自分が信用されている証でもあるのだが、個人でも気付いてほしいものだ。
「……これが、龍力バリア、か……」
レイやヒューズが使っていただろう『嫌な感じ』の力の正体。
一定以下の龍力を追い払ってしまう、龍力バリア。
リゼルはそれを睨みつける。
この先に、熱線を放った『何か』がいる。