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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
533/689

―熱線―

リゼルたちはこの空間の調査を進めている。

しかし、分からないことだらけで、進展はなかった。


景色は変わらないし、何も見えてこない。

魔物の気配は強かったままだが、姿自体は見ることはなかった。


人間界と時間はシンクロしているらしく、日が陰り始めてきた。

白と蒼だけだった世界が、オレンジ色に染まる。


「綺麗……」


普段あまり意識して見ることはない夕焼け。

ここだと一段と色が強く、美しく見える。


「ち……冷えてきたな」

「焚火……は無理そうですね……」


登山途中で薪は使い切った。

そもそも、こんなに寝泊まりする日数があるとは思ってもいなかった。


その時だ。


「!」


鳥類が高く鳴くような声が響いた。


「敵か!?」

「強い……来るぞ!!」


地面が盛り上がり、白い靄の隙間から、巨大な鳥の魔物が姿を現した。

緑色の体毛に覆われ、羽は茶色い。

アルカリオン山頂の古城くらいありそうな巨大な鳥。


巨大な翼、その翼爪、鋭そうな足の爪。


「ッ!!」


魔物の気配は感じていたが、この距離だと肌にビリビリ来る。

戦う前から分かる。強い。


レイズたちに緊張が走る中、怪鳥が奇声を上げる。


「キェェェェェエエエエエエ!!」

「!」


耳をつんざくその奇声に、思わず耳を塞ぐレイズたち。


「やってやる!!」


レイズがフル・ドラゴン・ソウルを解放しようとした時だ。


「おい……!?」


地面が膨れ上がる。

一つ二つではない。何ヶ所も膨れ上がっている。

この怪鳥が出てきたときのように。


「まさか……!!」


空気が抜ける音とともに、白い靄の隙間から同じような姿の怪鳥が次々と姿を現していく。


「十体はいます!!」

「冗談でしょ!?」


一体だけでもキツイと身体が理解しているのに、それが十体以上。

レイズもフル・ドラゴン・ソウルを一旦中止する。

この数相手では、いくらフル・ドラゴン・ソウルであったとしても厳しい。


「逃げなきゃ……!」

「けど、何もねぇぞ!?」


ミーネの言う通り、逃げるが勝ち、だ。

しかし、敵の数は多い上に、視界を遮るものが何もない。


「目くらましは!?」

「……無理です!!数が多すぎます!!」


レイラの光で閃光を、とも考えたが、数が多すぎる。それに、視界を遮るものがないため、相当な距離は知らなければ、追いつかれてしまう。

この環境で、それは不可能だ。


怪鳥は襲って来そうな雰囲気だが、仲間割れしているのか、互いに威嚇し合っている。

これは、単に戦うのではなく……


「まさか……ですけど、私たち……餌、なのでは……?」

「!」


魔物と戦闘に入るケースには、様々な要因がある。

単に接触したから、視界に入ったから、縄張りに入ったから、そして、空腹だったから、など。


ゾク、と全身の毛が逆立つ。


「ぜってぇ嫌だ!!!!」


なりふり構っていられない。

食われて死ぬのは、絶対に嫌だ。


一度は躊躇ったフル・ドラゴン・ソウルだが、逃げることも叶わない以上、戦うしかない。

レイズは全身全霊の龍力を解放する。


「!!」

「ムチャだ!!」

「けど、やるしかねぇだろ!?」


レイズが炎を纏い、駆け出そうとした時だ。



『この空間が震えるほどの龍力を全員が肌で感じた』



「!」


凄まじい力。凄まじい圧力。

遠い空の彼方から、一筋の光が走る。


「!」


凄まじい龍力の源は、そこからだった。


その光は、真っ直ぐこちらに向かってくる。


「伏せろ!!」

「!!」


リゼルの声に、全員が反応する。

そして。


「~~~~~~!!」


幾多の怪鳥を焼き尽くした。

一撃で。


夕焼けの空が更に焼ける。

周囲は、焼けるニオイと怪鳥の奇声、そして、龍力の嵐に包まれる。


「……!!」


熱線の直撃は避けたレイズたちだが、荒れ狂う龍力の嵐に吞まれ、意識を保てなくなる。

逃げの姿勢だったこともあり、龍力を高く維持していなかったことも大きい。

龍力の防御壁が薄いため、モロにその衝撃を受けてしまう。


正体不明の熱線による攻撃が終わったとき、起きているメンバーは誰もいなかった。

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