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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
532/689

―白と蒼の世界―

レイズは、夢を見ていた。

自分が空を飛ぶ夢だ。


どこまでも高く、飛べる。夢だからなのか、自由に飛び回れたりはしない。


そこで、声が聞こえる。


「ズ……イズ……!!」

「ん……?」


自分の名前が呼ばれていることに気付く。

声は段々大きくなる。


「レイズ!!」

「!!」


バージルの声に驚き、レイズは飛び起きる。

その瞬間、バージルの頭にぶつかり、お互い涙目になる。


「って~~!」

「この……!!」


最高に目覚めが悪い。

そして、初めて外の世界に目を向ける。


そこは、『白』と『蒼』がすべてを支配する空間だった。

厳密に言えば、レイズたちが立っている、座っている地面に相当する面が白。

空に相当する頭上が蒼。当然だが、雲が見えている部分は、白い。


「な……んだ……?ここ……?」


レイズは呆然としたまま周囲を見渡す。

見る限り白と蒼の世界だ。木々、土、建物何もない。


足元の地面(?)は、一挙一動ごとに煙のように舞う。

地面の感覚はあるが、どうやら靄のようなものが床面を漂っているらしい。

これが、何を意味するのか。


「…………」


傍に立っているレイラたちも呆然としており、誰も状況を把握できていないらしい。


「目覚めたら……ここでした……」

「うん……光が……ッ!」


その先を言おうとした瞬間、マリナは頭を押さえる。

覚えているのは、祭壇でのことと、レイラの嬉しそうな顔が見えたときまで。


光に包まれた後の記憶がない。

空高く宙に浮く夢を見ていた気もしないでもないが、思い出せない。


「あれ……さっきまでは……」

「平気?」

「えぇ……」


覚えていた気がしたのに、忘れている。

他の仲間も光に包まれた後のことは覚えていないらしい。


「魔物……の姿は見えませんね……ですが、気配は感じます」

「そうだな。気を抜くな」

「けど……どうすりゃいいんだ……?」


レイズは四方八方見回し、絶望する。


一面白と蒼の世界。

目印になるものはない。

そして、道もない。


ヴァイス平原の白蒼版だ、と密かに思うレイズ。


「ここにいても埒が明かない。行くぞ」

「どこに?」

「とにかく、調査だ」


自分たちが置かれているこの状況。

このまま呆然と過ごしていても、道は開かれない。


(道……?)


「道は開かれる……」


ボソ、とレイズは呟く。


「道の、先なんだ。ここは……」

「まさか……龍界……?」


バージルの考えに、レイラたちはある一定の理解を示す。


「確かに……可能性はあります。が……」

「巫女ちゃんの姿が……それに、ドラゴンの気配はあんまり……」


そう。

龍界ならば、巫女のドラゴンが案内龍となるはず。

しかし、姿が見えない。

それに、今を生きるドラゴンが一体も見えないのは不思議だ。強い生命力の気配もしない。

更に疑問なのは、魔物の気配。

偶然かは不明だが、自分たちが龍界に行ったときは魔物の姿も気配もしなかった。


「……ここは、『特殊』なのかもな」


リゼルは静かに言う。


「特別な場所であることに違いはなさそうだ。が、詳しいことは分からない」

「……はい」

「闇雲に進むのは気が進まない……が、指標もない。慎重に調査するぞ」

「了解です」

「魔物の気配は強い。いつでも戦えるようにしておけ」

「分かってる」


リゼルたちは剣を抜き、戦いに備える。

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