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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
531/689

―太陽と雷―

バージル、リゼルも無事、盃に光を灯した。

これで、後はレイズとマリナだけだ。


マリナは自分のプライドのために、レイラと龍力を見てもらっている。

いい線まで行っているようだが、今一歩及ばない。レイラが首を横に振っているのが見える。


「……ストイックだな」

「……黙っていろ。あいつは……」

「あいつは?」


バージルに聞かれ、言葉に詰まるリゼル。

上手く言えないし、わざわざ言うまでもない気もする。


「……何でもない」


マリナは、仲間だ。

彼女だってこちらをそう思っている。だから、止めない。


地位こそ違うが、ここのチームではそこがフラットだ。だから、なおさら対等でいたい。

レイラが光を灯した後も、自分の力が通用するのか確かめたいのだ。


「あいつは、やる」

「……知ってるよ」


バージルは目を閉じ、邪魔をしないように下がる。

その間、リゼルの変化に考えが巡る。



リゼルは変わった。

着目する対象がレイラだけではなくなった。

リゼルの生い立ちを考えれば、レイラに固執するのは理解できる。


ただ、この度を経て、彼の着目する対象が広がった。

あのリゼルが、ここまで丸くなった。



(二人とも……信じるからな)


レイズ、マリナの二人は集中して自分の課題に取り組んでいる。

わざわざ近寄って茶々を入れるのは、無粋だ。




「くそ……」


手の中に広がる太陽。

レイズはそれの安定化に苦戦していた。


(俺は……全然だな)


大きな力を扱のには慣れている。否、慣れている『つもり』だった。

良くも悪くも、繊細さよりも力に引っ張られる場面が多かった。

龍力を構築・生成する土台に繊細さが重要なのは理解しているつもりだったが、術や技を出す際にそこまで心掛けていなかった気がする。なぜなら、それで技が出せてしまうためだ。


レイズは思う。

レイや、その仲間との『差』。

力関係で負けているのは大前提だが、龍界に行っていなさそうな彼らに強大な力が扱えているのは、恐らく『練度』だ。


これは龍力者の歴とは意味が違う。

自分の龍と向き合い、そして、その力と向き合う。

雑に龍を使うのではなく、一発の龍力を丁寧に作り上げ、洗練された術技に乗せる。

一瞬一瞬で目まぐるしく変わる戦場でも、彼らはそれを怠らないのだろう。

そうすることで、彼らの龍力の調整スピードや構築・生成スピードが鍛えられていく。


それが、超強力な龍力者へと繋がる。


(心のどこかで……テキトーになってたんだな……)


ある程度の精神力、龍とのシンクロがあれば、自滅せずに龍力は扱える。

だが、それは有象無象の龍力者レベル。


レイクラスの敵と対等に戦うためには、今まで意識していなかったことにも気を付ける必要がある。


(だろ?ソル……俺はそこを見てなかったから……)


苦手ながらも集中し、龍力を丁寧に構築していく。

小さな太陽が輝きと熱を増す。


(だから……『声』が聞こえないんだ)


炎龍時代に聞こえていた『声』。

声が聞こえる基準は解明されていない。つまり、『これができた』とか、『あれができれば』というものがない。

生前の龍の性格に大きく依存するため、個人差が大きい。


要は、炎龍に認められたからと言って、他の龍に認められるかは別問題、と言うわけだ。

レイズのケースは更に特殊で、太陽龍王の魂が宿っている。関係あるかは分からないが、現太陽龍王の期待もある。


(やってやるさ……レイに、勝つんだ……!!)


かつてないほどの集中。

全神経が目の前の太陽と繋がっている気さえする。


小太陽の炎の流れ、ゆっくりと回転する速度、発せられる熱。

全てが繋がり、自在に操れる気分になる。


今でも十分強い力だが、レイズはまだ満足していない。


(まだだ……ここで妥協するなんて、ソルは許さねぇ……それに……)


炎が大気を焼く。


(俺だって……!!)


小太陽が少し大きくなる。

龍力が膨れ上がり、コントロールが一層難しくなる。


その時、レイラの声が響いた。


「光が!!消えそうです!!」

「…………」


返事はしない。否、それすら省略し、目の前の太陽に集中したかった。

応答がないレイズに困惑する様子もなく、レイラはマリナの雷に集中する。


彼女の雷の強く激しいが、盃が光るほどのそれではない。もっと強く、そして、繊細に。


「…………」


マリナもそれを分かっている。

脳をフル回転し、龍力をコントロールしていく。

大きさ、繊細さ、そして、緻密さ。


(マリナ=ライフォード!!しっかりしろ!!)


目をしっかり開く。瞬きの時間すら惜しい。

歯を強く噛みすぎて痛む。だが、気にしない。

一切の妥協を許さない。ここで一瞬でも緩み、到達しなかったら、間違いなく一生後悔する。


「光が……!!消えます!!」

「「行け……!!」」


レイラの声と同時に、レイズは盃に、マリナはレイラの手の中にエネルギー体を落とした。


その瞬間、6体の龍が光り、紋章が繋がった。

ヴン、何かが起動するような音を響かせながら、祭壇は更に強い光に包まれる。


その刹那、マリナは見た。

涙を流しながら親指を立て、笑っているレイラを。


「ッ……!!」


自分も、レイラたちの域に到達できた。

マリナは溢れる涙を堪え、口元を押さえながら俯いた。


湧き上がる喜びを噛みしめながら。





この日、アルカリオンから一本の光の柱が天に伸びた。

この光は、単なる白い光ではなく、様々なカラーの光であった。

それらは美しく混ざり合い、神秘的な光の柱であったと見た人間は言う。


天国への道であるかのように。

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