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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
530/689

―盃に光を―

レイズ、バージル、リゼル、マリナ、ミーネの挑戦が続く。


五人とも、力は十分高まっている。

レイの件がなければ、騎士団の誇りとなっていただろう。

ただ、力だけではダメだ。レイたちは、その先の領域にいる。


「きちぃ~~~!!」


タイムリミットは存在するが、それに気を取られると絶対に失敗する。

それが分かっているから、彼らは目の前のことに集中する。


リミットの目安はレイラが知らせてくれる。

彼女はマリナについているが、最も盃を確認しやすい場にいる。

だから、彼らは目の前の盃に集中できる。


エネルギーバーをかじりながら、レイズたちは苦戦苦闘する。

唯一(?)助かっているのが、戦闘ではないこと。


生死を決するような敵はいないため、龍力の残量を気にせず集中できる。


そんな中、最初にコツを掴み始めたのは、ミーネであった。




「もう少し……」


ミーネはエネルギー体を球体にすることに拘るのをやめ、刺々しい氷の結晶にすることにしていた。

球体にするルールはないと判断した結果だが、盃の形にあった球体にする必要があるなら、練り直しとなる。

それでも、彼女は自分がやりやすい形から寄せていくスタイルを取った。


「よし……!!」


ミーネの手の中には、美しい氷の結晶が煌めいていた。

盃の大きさに合わせ凝縮しているため、エネルギーの密度も高い。戦闘中では決して作り上げることがないであろう力の結晶だ。


「点いて……!」


ス、と澄んだ音を響かせながら、ミーネは龍力を盃内に落とす。

すると、氷の結晶が眩い光を放ち、盃から蒼龍の銅像へと龍力が巡っていく。


血液が循環するように、その光は幾度も往復する。


そして。


「やった……!!」


盃内に蒼い光が充満し、銅像の目に光が宿る。


「できたわ!」


彼女の嬉しそうな声が響く。

しかし、仲間たちは彼女を見ない。興味がないのではなく、目の前のことに集中しているため。

それに、現場を見なくとも分かる。


目を刺激した蒼い光。肌で感じる龍力。


(やるな)


バージルは素直に感心し、座り直す。

エラー龍力者でも、それはハンデにはならない。


どれだけ自分とその龍に向き合い、波長を合わせられるか。

そして、緻密な龍力の構築・生成。


龍魂取得が遅いとか、早いとか関係ない。

センスも関係するが、努力が全てだ。


(少し……『うねり』をつけるか……)


完全なる球体を構築・生成するのは、バージルにはハードルが高かった。


よって、風が舞うように流れをつけながら生成することにシフトする。


(あくまで、うねりだ。球体をベースにする)


球形でなくともいいことは分かったが、盃内に納まらなければならないはず。

ベースとして目指す球体からあまり大きく外れず、コンパクトに龍力を練る。


(よし……良い感じだ)


風龍のエネルギー体。

緑色の光る楕円形となり、その中で風が激しく流れている。


あとは、これを安定させ、盃に落とすだけだ。

後、少し。




「…………」


良い感じなのは、リゼルもだった。

月光龍ということもあり、彼は球体に拘った。

元々器用であったし、龍力歴も長い。月光龍歴は短いが、それは今までの経験やセンス、土壇場での適応力でカバーした。


リゼルの手の上には、小型の月が浮かんでいる。

澄んだ光を反射し、綺麗な月が生成されていた。


「月光龍……僕は、ここまで来たぞ……?」


自分の力を誇示するように、わずかに口角を上げるリゼル。

月光龍に変わり、仲間内で下位であったことを密かに気にしていた彼は、この成功体験が非常に嬉しいのだ。


龍力も安定している。エネルギー量も申し分ない。

後は、これを落とすだけだ。


「僕らの、勝ちだ」

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