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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
528/689

―構築と生成―

龍力者が扱う龍力。

力の引き出し方のポイントをシンプルに言えば、パートナーの龍とのシンクロ率だ。

つまり、自分と龍との波長を合わせること。


シンクロが低ければ、ドラゴン・ソウルとしてある程度の力を使うことができる。

シンクロが高まれば、フル・ドラゴン・ソウルとして更なる力を使うことができる。


「フル・ドラゴン・ソウルの上か……」


そして、更にシンクロを高めていけば、彼らが掴みかけている『完全なる龍魂』として、レイたちと同等の力を扱うことができる……とレイズたちは考えている。


龍力を高め、大きな力を放つことはできる。だが、龍力を高めつつ、繊細な龍力を扱っている感覚は今まで無かった。

言葉は悪いが、大雑把に龍力を構築・生成し、技や術として放っても『力』は使えるのだ。


強大な龍力と繊細な龍力との両立。

これは、知識云々ではない。普段、龍力者がどれだけ意識して力を扱っているか、である。


「凄い、レイラ……」


そう言う意味では、レイラは最強なのかもしれない。

幼少期から教え込まれた丁寧さ。龍力を扱うことでも同義だ。

最初に光と灯したのは、レイラであった。


「ありがとうございます。何とか、出来ました……」


白龍の目が光り、盃に光が灯っている。


「…………」


その様子を、黙って見守っていたリゼル。

彼女の雰囲気を見る限り、『完全なる龍魂』の域には達していない。

フル・ドラゴン・ソウルとそれの中間点。感じる圧や力からして、そんな感じだ。


要は、フル・ドラゴン・ソウルを十分極められれば、盃は反応する。自分たちでも、光は灯せる。




(月光龍……僕は、僕の力を信じる)


焦りを敵に見抜かれ、そこに付け入られたリゼル。

大きく、長く息をつき、黒龍の盃に手を伸ばす。




(氷龍……スィーアちゃん……)


レイラの成功を目の当たりにし、ミーネは龍界のことを思い出す。

一人で心細かったが、氷龍は自分に答えてくれた。龍界でも生き延びることができた。

繊細な龍力とはイメージが異なるかもしれないが、自分は長時間龍力を発動させ、氷の龍界を突破した。


雑な龍力では、残量やペース配分を見誤り、龍力が底をついていただろう。

だが、彼女はそれをクリアした。

意識した訳ではないが、生存本能がそれだけの課題をやってのけた。


(あたしは、やれる)


ミーネの周囲に粉雪が舞う。

彼女は真っ直ぐ盃に力を注ぐ。




「くっそ~~!!」

「整わねぇ……!」


レイズ、バージルの二人は苦戦していた。

良くも悪くも、二人は大きな力を出せるが、繊細さに関しては意識せずに龍力と付き合っていた。

レイズの師はバージルであったことから、最初に染み付いた龍力のクセは、なかなか抜けない。


自分なりの力の使い方を身につけつつあるが、考え方の起源はバージルとの特訓の日々だ。

最初に教えられたコツやクセに、無意識に引っ張られる。


レイズやバージル自身、性格的に大雑把なところがあることも、要因の一つである。


(力では負けてねぇ……繊細さ、緻密さ、か……)


バージルは盃に手を伸ばしている仲間の龍力を観察する。

力は自分と大差ないが、生成されているエネルギー体は『綺麗』だ。


「…………」


自分の龍力のエネルギー体は、形こそ球形に近づいているが、綺麗ではない。

どこがどう、と問われると答えにくいのだが、足りないのはそこである。

『惜しい』というのが第三者の評価になるだろう。




(太陽龍むずすぎる……)


龍力の属性が変わっていしまったレイズ。

炎龍で得た経験で何とか力をここまで上げてきたが、繊細さに関しては完全に無視していた。


太陽龍という珍しい龍ということなのか、雑に力を解放しても、威力が出る。


(ソル……俺じゃぁ、無理なのか?)


太陽龍に変わってから、『声』が聞こえた記憶がない。

それが、レイズの自信を揺らげさせていた。


(いや、考えるな……『力』は出せてる。無理なら、そもそも力が出せないはずだ)


レイズの良いところは、心の引っ掛かりがあっても前に進めることだ。


「ん˝!!」


迷いを振り切るように、レイズは力を込め、盃に手を伸ばす。

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