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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
527/689

―光を灯せ―

「要はこの盃に光を点けりゃぁ良いんだろ?簡単じゃん」


難しい謎解きも、入り組んだ迷路もない。

至ってシンプル。こちらとしては大歓迎だ。


レイズは盃に手をかざし、龍力を高める。


「…………」


龍力を高めて数秒。

手の下の盃も、盃の後ろにある龍の石像も無反応だ。


「おい、反応しねぇぞ」

「え……?壊れてんのか……?」

「な訳……」


バージルに言われ、盃を覗き込みながら龍力を維持しているレイズ。

相変わらず変化はない。


「んじゃ、俺はこっちで」


レイズのやり方が合っているかは分からないが、マネしてやってみよう。

バージルは風龍の石像の前に移動し、手をかざす。

仲間はそれらを背後から見守っている。


「光れ……光れ……」


バージルも龍力を高めながら念じるが、盃も龍像も変化はない。


「何も……起きません、ね……?」

「あぁ……」


レイラはメモ用紙を裏表見てみる。しかし、用紙にはそれ以上のことは書かれていない。

それに、用紙が古く、あんまり弄繰り回すと塵となってしまいそうだ。ヒントも書かれていそうにないし、これ以上は触らない方がいいだろう。


「導火線っぽいのもないわ。どうやって定着してるのかしら?」


石像や盃を調べていたマリナ。

土龍の盃には間違いなく龍力が定着している。だが、その仕組みは謎だ。

ろうそくのように糸があるわけでもなく、ツルツルだ。


「……龍力を『置く』感じでしょうか?」


レイラは丁寧に龍力を高め、掌へと集めていく。

そして、ゆっくりと盃にそれを落とした。


すると。


「!」


盃と龍の目が光り、盃の中で力が充満した気がした。

しかし、その光はすぐに消え、龍力を注ぐ前の状態へと戻ってしまう。


「……レイラのでやり方は合っているらしいな。定着しなかったのは……単に力不足か……」


リゼルは「力不足」と表現せざるを得なかったが、一般的な龍力レベルから言うと、十分な力であることに違いはない。

つまりは、半端な力では切符すら買えない、ということか。


「……やるか」


龍魂では力不足と判断し、フル・ドラゴン・ソウル状態となる。

そして、龍力を練り、盃に落としてみる。


「…………」


盃内に月龍の光が充満する。


(来たか……?)


そう思った瞬間、光が消え失せ、月龍の力も感じられなくなる。


「……ダメか」

「……のようですね」


龍魂、フル・ドラゴン・ソウルでもダメ。

盃の反応から考えても、力を注げば注ぐほど良いのは明らかだ。


「おい、全力で龍を解放しろ。その力で一気に注げ。フル・ドラゴン・ソウルじゃ足りない」

「マジか」

「うし」


白龍のレイラとマリナは、一旦マリナに変わり、マリナが盃の前に立つ。


そして。


「「「「「!」」」」」


5人の龍力が一気に膨れ上がり、この空間を揺らした。

狭い空間でフル・ドラゴン・ソウル以上のレベルの龍力が吹き荒れている。

屋外で戦闘しているとき以上の迫力だ。


凄まじい龍力に大気は震えているが、不思議と祭壇の壁はビクともしない。

力の衝撃に耐えられるだけの強度はあるらしい。


「く……!」

「どうしたよ……!?」

「力と……操作が……!」


見ると、レイズの龍力が不安定になっている。

力と繊細な龍力の生成の両立。それが上手くできていない様子であった。


それを見た後、バージルは自分の龍力を見る。

手の中で激しく光る緑色のエネルギー体。だが、形は歪だ。

綺麗な球体にする必要があるかは不明だが、繊細な龍力生成ができていないことは容易に想像できる。

このまま盃に龍力を落としたとしても、届く前に粒子と化し、消えていくだろう。


「おい!俺のは『きたねぇ』!そっちはどうだ!?」


自分の龍力に集中したまま、バージルは叫ぶ。


「だめ!全然まとまらない!!」

「これ難しすぎない!?」


マリナ、ミーネの慌てたような声。彼女たちも上手くいっていないようだ。


「リゼル!!」

「うるさい!!」


四文字で分かる。あいつも上手くいっていない。


「ちょっと一旦戻さねぇか!?」

「分かった!」

「えぇ!」


力さえ込めればいいと思っており、ここまで上手くいかないことを想定していなかった仲間たち。

龍力維持がしんどくなり、バージルたちは龍力を一旦落とす。


龍技や龍術で扱う『龍力』とはまた別のセンスが必要だと思い知るレイズたち。

悔しさを飲み込み、再挑戦しようと精神を整えるのであった。

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