―山頂にあるもの―
シャレムと別れた後、レイラは山頂に何があるかを仲間たちと共有した。
「上には城と祭壇があるらしいです。シャレムさんは、城の管理人だそうです」
「へぇ~……そうなんだ」
「……その話をするってことは……」
察しが良くて助かる。
「はい。行ってみたいです」
レイラは真っ直ぐ訴える。
正直、ここに来た目的は達成している。気分転換もできたし、シャレムにも会え、リゼルも戻った。
十分な成果だ。
普段なら、「山頂に用はない」と一蹴するところだが、なぜかレイラは山頂に拘った。
「城と祭壇だろ?あるのは」
「行っても良いけど、無理に行かなくてもいいんじゃないか?」
「シャレムさんがいるし、中には入れないわ」
レイズ、バージル、マリナはやや反対気味だ。
何より、用事がない。
「それは大丈夫です。シャレムさんは、表にいます。なので、裏に周ればぶつかることはありません」
「……なぜ分かる?」
「『独り言』です」
フフン、となぜか胸を張るレイラ。
胸元の布が引っ張られ、胸の形が顕となる。
「レイラ……」
ミーネはそれに困ったような顔になる。
彼女から何かしらの情報を引き出したのは違いないらしい。
そして、その内容は、レイラに興味をもたせるには十分な内容だった、と。
「四聖龍が守る場所です。そこに、フリーで入れるんですよ?」
「……好奇心か」
「正直に言えば、そうです。それに、ここまで来たって言うのもあります」
「…………」
呪いに掛かっていたとはいえ、意識が飛んでいたわけではない。
リゼルは自分のせいでレイラをここまで連れ出してしまった罪悪感に駆られ、何も言えなくなる。
もちろん、レイラはそんなこと思っていないが。
「ここで下りてしまえば、二度と来ることはないかも知れません。少なくとも、気軽にこれない場所なんです」
「……行くだけ、だぞ。壊すなよ」
「……しゃーねぇな」
最初にレイズが折れる。バージルも諦めたような顔を見せる。
「……行く感じになってきたわね。ま、良いわ」
「あたしは、どっちでも」
マリナ、ミーネも賛同し、下山は後回しとなった。
「「…………」」
レイズたち一考を見つめる四つの目。
その目は、彼らの行き先が決まると同時にその場から消えた。
「……ねぇ、良かったの?」
「何が?」
「一応管理人でしょ?追い返さなくて……」
「良いのよ。大したものは置いてないわ」
銀髪のアリシア。金髪のシャレム。四聖龍の二人だ。
二人は山頂の古城前に向かって歩いている。
「……『もの』はなくても、『何か』はあるでしょ?」
「アリシア……」
シャレムは懇願するような顔でアリシアを見る。
「決めたでしょ?あたしたちは、『別の道』で強くなる、って……」
「そう、ね……『その先』に何があっても、わたしたちにはそれぞれの道がある」
「そういうこと、よ。道は複雑で……迷って……引き返して……もう嫌になって止めたくなるときもあるけど……」
ギュ、とシャレムは拳を強く握りしめる。
「進んで得た力でレイラ様を守るって、決めたんだから」
「そう、だね……」
アリシアも山頂を一度だけ振り返った後、シャレムを追いかける。
そして、こう呼びかける。
「光龍神殿にでも行ってみる?」