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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
521/689

―山頂前の―

レイズたちは適当な場所で一晩過ごし、翌日に登山を再開した。

明かりもない山道を行くのは危険と判断したためだ。それに、ぶっ続けで登山する体力も気力もレイズたちにはなかった。


「流石に野宿は疲れが抜けないな」

「あぁ……最近は帰れてたのがデカい」


久しぶりの野宿。

冒険時は慣れたと思っていたが、身体は正直だ。

眠りが浅く、だるさが抜けきっていない。


「置いていきますよ?」


歩く速度が落ち、最後尾のレイラ&リゼルに追い抜かれそうになる。


「まだ行けるって」


そう言いながら、リゼルの様子を確認するレイズ。


相変わらず虚ろだが、目指すべき山頂を見つめている。

今までずっと足元を見つめていたことを考えると、良い傾向である。

何がそこまで彼を駆り立てるのか。その先に、何が待ち構えているのか。


「…………」


レイズは唾を飲み込み、密かに気合を入れ直す。


(絶対、なにかある……あいつは、無意味にレイラに頼みごとをしない)


何があるかは分かんねぇけど、と首を捻り、足を速める。



「…………」


リゼルの少し前を歩きながら、レイラは仲間たちに感謝していた。

マリナもミーネも黙って前を歩いてくれている。レイズ、バージルの二人もなんやかんや言いながらもこのグループから離れることはしない。


(本当に……本当に素敵な人たちです)


彼らに打算はない。

ただ、純粋にチームのことを思い、離れずに協力してくれている。


レイラは女王という立場であるが、そこに壁を作ったり、一戦引いたりすることなく、ほぼ対等に接してくれる。

レイラの周囲に、打算なく近くにいてくれる人間は少ない。


数少ないフラットな関係でいてくれる彼、彼女たちを本当に大切にしたいと思うレイラ。

もちろん、リゼルもその一人だ。


山頂に何が待ち受けていようとも、リゼルが前に進みたいと思う限り、自分も、そして仲間も進む。


(あなたのボヤきがないと、物足らないですよ)


と、先頭を歩いていたマリナとミーネの足が止まる。

気付けば、山頂の手前ほどまで来ていた。


「はぁ……はぁ……」


昨日見えていた王都が更に小さくなっている。


レイラは足を進め、止まっている彼女たちに追いつく。


「どうしました……?」

「いや、少し広場っぽくなってて……」

「あ……」


人通りが少ないであろう整っていない道。そして、人の手が入っていない草花や木々により、広くない山道がずっと続いていた。


そこから一変。


スペースを要さないスポーツならできそうな広場が目の前に広がっていた。

明らかに人の手で整えられており、テントを広げた跡や焚火の跡も残っている。


「最終休憩所……ですかね?」

「かも、ね……休憩するには距離的に半端だけど……」


ここで休憩するくらいなら、一気に進んでしまった方が良さそうな位置関係だ。


「先の道もだいぶ広いわ。助かる~……」


広場の先に見える山道。今までの道よりも広く、人の手が入っているのは明らかだった。


「ふ~……」


どさ、とレイズは座りこむ。

人一人が十分座れるスペースがあるのは有難い。

道中は道が整っていないこともあり、リラックスできる空間ではなかった。


「……少しだけ休みましょうか」

「よっしゃ」


バージルも座り、水筒の水を飲む。

マリナ、ミーネも腰を下ろし、思い思いに水分や栄養を補給した。


喉を潤したバージルは、応答がないことを前提の上でリゼルに話しかける。


「で、リゼルよ。何を感じたんだ?」

「…………」


ただ一人、リゼルは腰を下ろさず、ずっと先を見つめている。


「……ま、そのうち教えてくれや」


案の定だ。

バージルは肩をすくめ、息をつく。



その直後だ。山頂側の山道から足音がし始めたのは。


「!」


この感じ。魔物ではない。人間の物だ。


「…………」


レイズたちは音を立てないよう立ち上がり、構える。

山道を降りてきた人物は、レイズたちも知っている人だった。


金髪ロン毛。凛々しくも美しくも感じる美貌。


「……シャレムさん!?」

「え?あなたたち……!?」


予想だにしていない人物の登場に、レイラたちは口がポカンと空いた形となる。

それはシャレムも同様だったようで、今まで見たことがない抜けている顔になる。

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