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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
515/689

―最初から決まってる―

(……恩義か)


パートナーは少し呆れたように言う。だが、ミーネにとって、そこが起点なのは変わらない。


(それが、あたしが戦うたった一つの理由だから)

(それだけで(国とか、レイとか、どうでもいいのよ)


パートナーの言葉を遮り、言う。

ミーネは相手の言葉を遮って発現しない。だが、これに関しては別だ。


(!)

(レイラが戦うから、剣を握る。レイラが傷つくから、一緒に傷つく。レイラが守ってくれるから、あたしも守る。ただ、それだけ)


心の言葉に呼応するように、龍力が徐々に高まっていく。

斬り合いの最中故に、戦闘に直に影響する。剣の威力が増大し、シェキナーの剣に勝ったのだ。


「!?」


驚いた顔を見せ、怯みと苦痛を見せるシェキナー。


(レイラが戦う限り、あたしは戦う。当然、ここで死ねない)

(…………)

(それが、前に少しできた自分のために戦うことにもつながるから)


パートナーは黙っている。

聞いているのか分からないが、意思を伝える。


(あたしの力は、仲間とともに)


ミーネの剣が青白く光る。

氷が分厚くなり、端が鋭利となっていく。

内から湧き上がる力。この戦いにおいて、後にも先にもこの力は引き出せない。

そのくらい、ミーネはパートナーの力を感じていた。


この時間を逃すな。最高の力を、シェキナーにぶつける。


「絶氷蒼龍剣!!」

「ちぃ……!!激流水龍剣!!」


全てを凍らせるほどの冷気。

ミーネが未熟な龍力者であれば、周囲の木々や地面を凍らせ、氷の世界に変えていただろう。

だが、彼女は成長した。環境に影響を与えることなく、シェキナーのみに龍力をぶつける。


シェキナーの龍力は、全てを激流に呑み込むほどの力だ。

半端な龍力者であれば、このフィールドごと流れるほどの雑な力だ。

だが、彼女は違う。憎悪をエネルギーとし、ここまで登り詰めた。目の前の相手のみに龍力をぶつける。


「「!!」」


氷と水の龍。

ぶつかり合いの中心から凄まじいエネルギーを放出し、場が龍力の嵐となる。


ぬかるんだ地面に、二人の足が沈む。

歯を食いしばり、お互いの龍力に耐える。これを耐え切り、相手を切り裂いた方の勝ちだ。


「!」


龍力のうねり。嵐の中心。

ぶつかり合いの最中、ミーネはシェキナーの龍力を一瞬だけ、それも少しだけ上回った。


(今ッ!!)


ミーネは全身全霊の力で剣を振り抜き、シェキナーの胸を斬った。


「ッ……く……!!」


彼女の胸から血が迸る。

傷口には氷が付着している。そのように斬ってはいないのだが、強すぎる龍力のせいだろうか。


激流が止まり、シェキナーの龍力も穏やかになる。

毒々しかった彼女の龍力だが、だんだんと色が抜けてくる。


「く……そ……」


鈍い音を響かせ、シェキナーは倒れる。


「はぁ……ッあぁ……」


詰まらせながらも大きく息をし、ミーネは龍力を下げていく。

シェキナーはまだ諦めていないのか、仰向けになって肘で起き上がろうとしている。


「こ……の……!」


だが、肘が滑って立つことができない。

それだけではない。彼女から龍力をあまり感じない。

万が一立てたとしても、戦いにはならないだろう。


「終わりよ……シェキナー」

「ッ……」


静かにシェキナーを見下ろすミーネ。


(見下してんじゃ……ない……ッ!!)


それは、シェキナーの屈辱感を煽るものだった。だが、彼女に力は残っていない。

「クソぉ」と小さく悪態をつくことしかできず、泥に力なく拳をぶつける。

その間にも泥水と血が混じり、どす黒い泥となっていく。


そこで、ミーネは思い出す。

シェキナーは、『あれ』が使えたはず。それなのに、彼女は自分にそれを使わなかった。


「ねぇ……教えて」

「……?」


気付けば、勝手に言葉が出ていた。

聞くつもりはなかったのだが。


「毒を……毒を使えば一発だったでしょ?どうして……」

「嫌よ……この手で……壊せなく……な……る……」


シェキナーは天を仰ぎながら、震える手を掲げる。

数秒後、その腕から力が抜け、地面に落ちる。


シェキナーは穏やかに目を閉じていた。

ミーネは静かに目を閉じ、勝利を噛みしめるのだった。

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