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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―試験―
514/689

―恩義VS憎悪―

シェキナーの周囲の空気が震えている。

濁流のような龍力が彼女の周囲を展開し、その流れの筋が鼓動のようにうねっている。


(こんな……ことって……!!)


ミーネは無意識に身震いする。


自分たちは数えきれないほど強者と戦ってきた。

その強者に、数えきれないほど負けてきた。

その度に強くなり、先日は敵の一人を討伐する手前まで来ることができた。


シェキナーの立場は、レイのグループの下層に位置するはず。

それなのに、この龍力。

しかも、氷龍曰く、暴走した訳でもなく、契約した訳でもない、と。


「ミーーーーーーィィねぇぇぇぇぇええええええ!!」


豹変するシェキナー。感情を露にし、ひしゃげた声で叫ぶ。


「ホントに意識ある!?」


パートナーの読みに疑問を投げかけるミーネ。


(……少なくとも、支配されてはいない)

「えぇ!?」

(それより……くるぞ)

「!」


ミーネは直感で真横に跳んだ。

とにかく、体勢を整え、剣撃に備える。


「……!」


走りながら、ミーネは振り返る。

先ほどまで立っていた場所には、激しい水流が発生していた。

無防備に吞まれれば、間違いなく窒息する。助かった。


「だぁッ!」

「あぁッ!!!」


剣と剣が激しくぶつかり合う。


「ッ……!!」


先ほどよりも衝撃が重たい。一発ごとに腕が悲鳴を上げる。少しでも龍力で劣れば、骨が砕かれそうだ。


「まだよ!!まだ終われない!!」

「く……!」


シェキナーの剣を眼で追うのが精一杯だ。

ミーネは防御が間に合わず、攻撃を受けてしまう。だが、ミーネは耐える。痛みで体勢を崩せば、たちまち切り刻まれてしまうためだ。


(強い……!!でも!!まだやれる!!)


幸い、こちらもフル・ドラゴン・ソウル以上の力で戦っている。そのため、数発で戦闘不能になることはない。

が、受けすぎるのは危険なことに変わりはない。


(冷気を……もっと!)


ミーネの剣に氷が付着し始める。

具現化ほどまで龍力を消費することなく、剣に龍力を乗せることで可能となる技。攻撃力の底上げが可能だ。


「そんな小細工で勝てるとでも?」

「……いいえ。でも、あなたの『水』はどうかしら」

「!」


シェキナーの周囲を巡る水のうねり。

それがミーネの冷気により凍らされ、空気中に散っていく。


「この……」


不愉快だ。シェキナーは舌を打つ。

僅かだが、ミーネの龍力シェキナーの龍力に影響を及ぼし始めている証拠である。

だが、それは勝敗を決する要因にはならない。あくまで、力の見せ合いレベル。

実際の戦闘となれば、話は変わってくる。


ミーネとシェキナーは同時に剣を振る。

氷と水の龍力がぶつかる水流と冷気の応酬。一瞬のスキもできない。


(……憎悪の塊だ。憎悪だけであそこまで極めれるとはな)

(凄いこと?)

(当然だ。おまえにも分かるだろう?龍の力の複雑さが)

(えぇ……)

(……人間が龍の力を扱うなど、笑止千万だった。だが、それは過去の話。今ではそれが当然な時代だ)

(そう……ね……)


パートナーの人間の評価。

自分はパートナーや太陽龍王、氷龍王に認められ、ここまで来たが、『人間』というくくりで言えば、龍力を自在に操るなど、ドラゴンとして思うところがあるのだろう。


(龍力は複雑だ。龍の波長と人間の波長。龍力の構築する力、それを理解する力……簡単にいかないことは身をもって知っているはずだ)

(…………)


コク、と頷くミーネ。

というか、今もシェキナーとの攻防は続いている。

なるべく早く終わらせて戦いに集中したいと思う一方で、この『声』を聞いていると力が湧き上がってくる感覚もある。


(純粋な憎悪……一見強い意志のようにも思えるが、龍力において、それは足枷でしかない)

(え……?)

(対象が龍でなくなるためだ。意識が憎しみの相手に向いてしまう)

(そっか……あたしに……)


シェキナーの場合、自分や国にその憎悪が向いている。

したがって、自分の中に眠る龍に向くことがない。


そう。通常であれば。


「考え事か!?」

「ッ!」


一瞬の動揺。シェキナーは的確にそこを突く。

ミーネは最速で体勢を整え、避ける。そして、すぐに技のぶつかり合いに戻る。


(……そんな中であいつはこれほどまでの力を身につけている)

(…………)

(おまえは、どう対抗する?あいつの憎悪の塊に、どう立ち向かう?)

(あたしは……)


自分が戦う理由など、最初から決まっている。

レイラを見たい一心を堪え、前を向く。


(レイラへの……レイラたちへの恩返しよ)

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