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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―成果―
511/689

―最初の本命―

剣で貫かれることを覚悟したレイラ。

しかし、いつまで経っても剣が刺さってこない。


「…………?」


手をずらし、ゆっくりと目を開ける。


そこには、氷漬けにされたシェキナーがいた。

青白い、分厚い氷。太陽光に反射し、水滴が光っている。


この氷は、間違いない。顔が緩み、全身に鳥肌が立つ。

精一杯顔を上げ、周囲を見渡す。そして、彼女を見つけた。レイラは様々な意味で安堵する。


「ミーネ……!!」


大ダメージを受けて療養中の彼女だ。

辺りを確認すると、手を前に突き出し、肩で息をしている彼女が見えた。

いつもはサイドテールにしてある彼女だが、起きた身のままなのか、髪はフリーだ。その髪は術後の余韻で靡いている。



「ハァ……はぁ……」


大きく息をしながら、ゆっくりと手を下ろすミーネ。


(間に……あった……)


レイラの無事を確認し、彼女は本当に安心していた。




十数分前、自分が目覚めたとき、医療テントの様子は眠る前と様変わりしていた。

人数が大幅に増え、ベッドは満床だ。痛みによるうめき声や団員の声が飛び交っている。この状況で今までよく眠れたものだ、と自分を責める。


その医療テントでは光龍使いの団員による懸命な処置が行われていた。団長もハーストも怪我人の処置に追われていた。それに、テントにも光のバリアが張られ、攻撃や音からも守れるようになっていた。


すぐそばにいた団員に状況を聞き、医療テントを抜け出した時、戦場にレイラたちはいなかった。

ここに被害が及ばぬよう、場所を変えたのだとすぐに分かった。


「まだ、近くにいるはず……!」


ミーネはすぐに龍力の気配を探し、感じる方向へ走った。

レイラを見つけるのに、そう時間はかからなかった。


「いた……!」


しかし、状況は最悪だ。

レイラ、マリナは倒れ、レイラに関しては剣でトドメを刺す直前であった。


「!!」


時間はない。

ミーネはパートナーに呼びかける。


(絶対助ける!!力を貸して!!)


自分の思いとパートナーの波長が合った感覚。

スゼイ戦での感覚に近いものを覚える。

瞬時に紋章を描き、術を放つ。


(アイスコフィン!!)


レイラを守る術でも、剣の軌道を反らす術でもない。

相手を一瞬で氷漬けにする龍術だ。


咄嗟過ぎて、レイラを攻撃しようとしている人物よりも多めに力を使ってしまった。

だが、結果オーライ。


相手は氷漬けになり、レイラは生き延びた。




そして、今に至る。


「レイラ!!」

「ミーネ!」


ミーネは駆け寄り、レイラを抱きしめる。


「痛ッ……!」


そこで初めて、レイラの右手のダメージに気付くミーネ。


「ッ!!……酷い……」

「えぇ……ですが、この程度なら……それよりも!」


物凄い勢いでマリナの方を向くレイラ。

彼女も倒れており、息が辛そうだ。顔色も悪い。


「マリナ……!?」

「毒です!でも、大丈夫!」


レイラは治癒術をかけ、マリナの毒を取り除く。すると、すぐに呼吸が落ち着き、血色がよくなってくる。

彼女が落ち着いたのを確認し、自分にも治癒術をかける。

抉れていた傷口が塞がっていき、ある程度マシになってくる。だが、完治までは程遠い。なぜ完璧に治さないのか、と怪訝な顔で彼女を見る。


「……もう大丈夫です。あとは、自力で治ります。皆もきっと大丈夫」

「あ……!」


そこで、レイズ、バージル、リゼルの三人が少し離れた場所で倒れているのを発見する。

皆戦っていたのか。そして、試合で負けた自分だけが、呑気に眠っていたのか。

だが、それも意味があったと思える。こうして復帰し、レイラを救うことができたのだから。


「はぁ~……」


ミーネは胸を撫で下ろす。力が抜け、その場に座りこんだ。


「良かった……ほんとに」

「ありがとうございます。本当に助かりました」

「…………」


あなたたちに貰ったものを返しているだけ、と言いかけたが、止めた。真面目なレイラのことだ。それも重く受け止めてしまうかもしれない。

ミーネは微笑み、黙って頷いて見せた。


「でも……」


レイラは氷の塊を見る。

そこで、ミーネは初めてまともにその相手を見た。そこで、彼女の表情が固まる。


「え……?」


分厚い氷に覆われ、姿形はハッキリとは判別できない。だが、分かる。

『彼女』は……


「ミーネ!離れて!!」

「!」


レイラの声で我に返り、反射的に距離を取るミーネ。

そこで彼女が叫んだ理由を理解した。


「氷が……!!」


渾身の龍力を込めて放った『アイスコフィン』。その分厚い氷に、ヒビが入っている。

氷に亀裂が入る音が響く。その亀裂は大きく走り、氷全体が亀裂まみれとなっていく。


「そんな……!」


氷の棺桶が崩壊するのに、時間は要さなかった。

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