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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―成果―
509/689

―虚脱と鮮血―


「どういう……こと……?」


目の前で痙攣するレイラ。彼女を纏っていた龍力もかなり落ちている。

訳が分からないが、兎にも角にも助かったことが理解でき、次第に頭が回り始める。


「はは……ははは……」


不敵に笑いながら、シェキナーはレイラの脇腹に蹴りを入れる。


「ッ!」


横腹の肉の感覚が足の甲に伝わる。

龍力による防御壁も薄い。攻撃が、通る。


「……ふふ」


その事実に、シェキナーはほくそ笑む。

そして、もう一発。


「ッ!」


骨が軋む。龍力の防御壁なしで龍力者の蹴りを何回も受けることはできない。先に身体が壊れてしまう。

レイラの歪む顔が爽快である。だが、まだだ。


「まだ殺さない……壊して、壊して……その先だよ……『絶望』は……」


クク、とシェキナーの喉の奥から声が漏れる。


(どう……して……?)


蹴りを受けながらも、混乱しながらも考えを巡らせるレイラ。

今はパートナーの力も感じない。『完全なる龍魂』も、『フル・ドラゴン・ソウル』も解除されている。


先ほどの異常なまでの高揚感。その後自分を襲った、虚無感。

全身から力が抜け、自分が自分でなくなる感覚。


身体が重い。

剣を握る手も、身体を支える足腰も鉛のようだ。

視界もはっきりしない。

頭が、脳がぐるんぐるん回っているようにも思える。


だが、脇腹の痛みは強く感じる。生物の本能は残っているらしい。

それが分かったところで、何もできない。このままでは、身体が壊されてしまう。


(光……龍……?)


そう言えば、最近その声を聞いていない気がする。

龍力の高まりと高揚感。その中で、光龍の声だけが無かった。普段なら、聞こえてくる声が。


「ッ……!」


その間にも、脇腹への衝撃が来る。反撃できない相手に容赦ない。


(立て直さないと……!!)


ぐぐ、と身体に力を入れるが、上手く動かない。

自分の身体なのに、自分の身体ではない感覚だ。それなのに、痛みはしっかりと伝わってくる。


「無様ね」


何発もの蹴りを入れ、満足したのかシェキナーは下がる。

そして、剣を構えた。


(嘘……早く……!?)


下がったのは、満足したからではなく、攻撃方法の切り替えであった。

マズイ。非常にマズイ。


蹴りだけであのダメージなのに、刃物を使われればひとたまりもない。

この戦場には、自分たち以外誰もいない。望みは、無い。


「予定は狂った。けど、結果は変わらなかったわね」


剣を逆さまにし、両手で持つ。そして、振りかざした。


「それ」

「……!!」


ぐじゅ、という耳を塞ぎたくなるような音、そして右手の激痛。


レイラの右手には、シェキナーの剣が刺さっていた。

ドクドクと血が溢れ、シェキナーの剣を、大地を紅に染めていく。

激痛により、レイラは剣が持てなくなった。冷たい音と共に、彼女の手から剣が落ちる。


痛みに泣き叫びたい。だが、声が出ない。

喉が震え、空気が抜ける音が微かに出る程度である。


「はぁ……かいッ……かん……」


レイラの苦痛そうな顔を見て、シェキナーは今日一艶めかしい顔を見せる。

頬が紅潮し、目が潤む。吐息もどこか色っぽい。


(もう……終わり……?)


涙を流しながらも、レイラは歯を強く食いしばる。

気をしっかり持て。自分にそう言い聞かせるが、レイラの限界はすぐそこまで来ていた。

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