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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―成果―
507/689

―女の戦い―

憎しみを向けられる行為。それは、何回経験しても決して慣れるものではない。


『あの日』の直後、レイラは国の惨状を知るため、騎士団員とともに世界を回り、各騎士団基地と情報を共有し、必要な支援をしてきた。

その最中、被害者やその関係者から酷い言葉を掛けられた回数は数えきれないほどになる。

容赦なく、限りなくかけられる罵倒。その度に心が締め付けられ、折れそうになった。

だが、横にはリゼルがおり、騎士団員がいた。自分がすべきことを見失わないよう、力強く支えてくれた。


それでも、黒い感情は貯まり続けていた。

だが、彼女は変わった。太陽龍王が、光龍王が認めてくれた、自分の力とその信念。

耳を塞ぎたくなるような言葉を何度かけられても、今の自分は誇り高きドラゴンと共にある。


レイラの剣の光が強くなる。


(レイラ……)


マリナは口に血を含みながら、彼女を見る。歯の間から血が滴り、地面を染めていく。

今までの光とは、少し感じが違う。眩い光ではあるのだが、どこか落ち着きを感じる光だ。


「復讐は、終わりです」

「なに……?」

「あなたを、止めてみせます」

「……!」


シェキナーの周囲を駆ける龍がこちらを向く。

彼女の表情も黒く染まる。怒りを押し殺すような声で言う。


「……やってみなさいよ」

「えぇ!」


輝く剣を構え、レイラは駆ける。シェキナーは毒々しい力を剣に乗せ、迎え撃つ。

どす黒い水の龍と温かな光の龍。二つの龍力が激しくぶつかり合う。


「~~~~!」


相変わらず強い龍力だが、先ほどよりも押し返されなくなっていることに気付くレイラ。

これで、ほぼ互角か。厳密に言えば。若干こちらの龍が弱い。


剣の柄を強く握り、吹き飛ばされないように踏ん張る。

刃同士が音を立て、相手の僅かなスキを窺っている。


(最高の力のはず……!!なのに……!!)


止める、と息巻いたレイラだったが、有言実行できそうにない焦りが生まれ始める。

スゼイ戦で感じた力と心の高揚もある。パートナーの波長も良い感じである。

それなのに、力はやや劣っている。


つ、と彼女の頬を汗が垂れる。


「残念だったわね……!」


これがレイラの本当の全力。

シェキナーは勝てると判断したのか、口角を上げた。


「……!」


ぐぐ、と全身にかかっている力が増した。

マズい。シェキナーの龍力に押しつぶされる。


「光龍!!」


魔法の言葉になりつつある『光龍』を叫び、レイラは吠える。

勇気が湧いてくる魔法の言葉。実際はどうか分からないが、力が溢れてくる感じがした。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」

「ッ……」


剣の角度を変え、シェキナーの剣を明後日の方向に走らせる。

そして。


「光鋭刃!!」


複雑な技を出せる余裕がないレイラ。短時間の全集中で出せる最高の力でシェキナーの横腹を斬る。


「……!」


衣服が破れ、血が散る。だが、傷は浅かった。シェキナーは体勢を崩しながらも技を繰り出してくる。


「この……!!水龍連爪!!」

「ッ!」


龍爪を剣にイメージした連撃。

一発目は防いだが、二発目は剣が間に合わなかった。

左の前腕に軽い傷を負うレイラ。痛みはあるが、右利きであるし、剣の振りに影響はない。


「はぁ……はぁ……」

「ふん……少しはやるじゃない」


お互い理解した。

これからの戦いは、龍力による殴り合いだと。

下手に戦場を駆け回って戦っても、ダラダラと力を使ってしまうだけ。


レイラサイドには毒を負った人間もいる。

シェキナーサイドは、さっさとレイラを潰したい。


「「…………」」


お互いが短期決戦を望んでいる。

レイアの手。シェキナーの手。双方に力が入ったのは、全くの同時だった。


「「!!」」


剣と剣とがぶつかり合う音が響き、火花が散る。

光と水の龍力もぶつかり合い、大気を、大地を揺らす。


お互い、少しでも気を抜けば、腕が飛ぶ。

そのくらいの激しい攻撃力で二人は戦っていた。


正直、肉を裂こうなど考えていない。とにかく、攻撃先が相手の剣に届けば構わない。空振りは龍力の『浪費』だ。


作戦も、龍力配分もない。

最高の力を目の前の女にぶつけていくだけ。


「あぁ!!」

「この……!」


轟音と暴風を生みながら、二人は力をぶつけ合う。

髪も乱れ、綺麗な肌には血が滴り、舞った砂が張り付いている。


大地も抉れ、二人を中心に四方八方に崩れている。

この異様な空間に入れるのは、自分たちだけだ。

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