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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―成果―
504/689

―下層の敵戦力―

「はぁ……あなたたちはターゲットではないのだけれど」

「やる気、みたいだね、姉さん」


ターゲットではない邪魔者の出現に萎える二人。

面倒そうにため息をついている。


「イイでしょ?別に」

「我々は強者と戦いたいのですよ」

「……風の導きに従うだけ」


彼らの登場は、シェキナー達にとって鬱陶しいことこの上ない。

だが、彼らを潰さない限り、騎士団への攻撃はできそうにない。ならば、速攻で潰すだけ。


「……クオル。最速で潰して」

「オーケー、姉さん」


少年の龍力が禍々しく波打つ。完全にクオルに任せるらしく、シェキナーは剣すら構えない。毛先を人差し指に絡ませて遊んでいる。


「…………」


その舐められた様子に、怒りを覚える三人。


「なめないでもらいたい!!」

「ざけんな!!」


イゾウ、イルザーラが踏み込む。

サフィーナはまだ進まない。二人で様子を見るつもりなのか。


「龍殺刃」

「煉獄!!咆哮!!」


闇と炎。超強力な龍力がクオルを襲う。

だが、クオルは構えない。


ただ単純に、土龍の力を解放しただけ。


「ぐッ!?」

「がはッ!!」


大地から無数に伸びる土の牙。

それらが二人を貫く。


「疾風龍!!」


二人と入れ替わるようにサフィーナは走る。

手に剣。そして技により自傷。そして、流血。


属性盛り盛りの攻撃がクオルの技後の硬直のスキに繰り出される。


「ッ!!」


技後の硬直でクオルは存分には動けない。

身体を捻って回避しようとするが、サフィーナの攻撃を食らってしまう。

衣服が切れ、少量の血が舞う。


「……鬱陶しい」


クオルは舌を打ち、左手をサフィーナに向けて突き出す。

そして、龍術を発動させた。


「グランド・ブレイク」


素早い詠唱時間だが、大きな土龍の紋章が描かれる。

サフィーナの素早い動きに対応しており、彼女の移動先に紋章が出現した。

紋章から土龍の頭が出現する。そして、その口かは大地を破壊するような強烈な衝撃が発せられる。


「ッ……!」


範囲は狭い分、威力が凄まじい。

サフィーナの防御壁を貫いてきた。


三人は、あっという間に倒されてしまった。


「はぁ……はぁ……」

「く……」

「教えて……風よ……」


クオルの後ろで、シェキナーはため息をつく。


「あなたたちじゃ話にならないわ。どいて」

「ちぃ……」

「こんな……」


イゾウ、イルザーラは舌を打つ。


ここまでとは。試験で変に善戦したせいで、戦えるのでは、と思っている自分がいた。

彼らは、騎士団は、レイラ様はこんな敵と戦っているのか。

一回も攻防を行うことなくやられるなど、初めてのことだ。屈辱的だ。



「おい、そろそろ……」


レイズが前に出ようとするが、イゾウたちは落ちてしまった龍力を高めていく。

彼らはまだ諦めていない。だが、この状況で続けるのは得策ではない。


「だからそろそろ……!」


バージルに肩を掴まれ、振り返るレイズ。

彼は黙って首を横にゆっくりと振った。


「バージル……」


その顔は険しく、悔しさが滲んでいる。

そして、彼の底に渦巻く龍力は、強く、そして燃え上がるように激しい。


「ここで手を出せば……彼らの思いを踏みにじることになります」

「レイラまで……」


一刻も早く交代したい。すべきである。だが、それはできない。


彼らはシェキナーやクオルのターゲットではない。真なるターゲットは自分たちだ。

試験を有利に進めるためのアピールがきっかけとはいえ、彼らにもプライドがある。

無理矢理にでも交代することは容易いが、逆の立場であれば、本当にギリギリまで手を出すなと思っていただろう。


戦闘の意志が消えない彼らにイラつくシェキナー。


「……クオル。早くして」

「!……わかってるよ……」


シェキナーの不機嫌そうな声に、身体をビクつかせるクオル。


「そういう訳だから」


クオルが剣を振る。

それと同時に、大地から土の槍が出現する。

その槍は三本。イゾウ、イルザーラ、サフィーナに狙いを定める。


「…………」


三人は虚ろな目でそれを見ている。

龍力こそ維持しているが、いつ意識が飛んでもおかしくない。

三人を支えているのは、気力だけだ。


「地龍鋭突」


空を切る音と共に、土の槍が発射された。

滞空時間は一瞬だった。


気付いたときには、槍による攻撃は終了していた。


「……!!」


レイズたちは口を開けたまま固まってしまう。

レイラ、マリナは口元を押さえ、目に涙を浮かべる。



「く……」


イゾウは槍による攻撃を回避。

直撃は避けることができたものの、左腕に甚大なダメージ。

上腕の肉が抉れ、上腕骨が見えてしまっている。



「あ……ぁ……」


イルザーラは土の槍を斧で砕き割ろうとしたが、龍力差により失敗。

腹に土の槍が刺さっている。血が滴り落ち、服を、地面を紅に染める。



「か……ぜ……ボク……は……」


サフィーナは背水により龍力は一人だけ少し高かった。

だが、槍を破壊するほどの力は残っておらず、先端を斬り裂いた時点で槍が直撃していた。

サフィーナの攻撃により槍道が反れたため、致命傷は避けたものの、両腕に甚大なダメージを受けてしまっている。

皮がめくれ筋肉組織がむき出しになっている。



三人とも数秒ほど立っていたが、意識が飛び、倒れてしまう。


「さて……」


クオルが清々しい顔でこちらを向いた。

三人の勇姿に触発され、龍力が空気を震わせるほどに高まるレイズたち。

かなりダメージを受けているが、命を繋ぐことに望みはある。


次は自分たちだ。だが、彼らが倒れているこの場で戦うことはできない。

リゼルは舌を打ち、さり気なく場を見渡す。すると、離れて様子を窺っている騎士団員が視界に入った。


「医務室へ運べ!!僕たちは場所を変える!!」


リゼルは全員に伝わるよう叫ぶのだった。

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