―確かめたい―
レイズたちと敵とが激突する瞬間。
龍力を纏い、間に割って入った人間たちがいた。
「!」
レイズサイドや敵サイドも反射的にバックステップで離れる。
激突したであろう場を見ると、三人の龍力者が立っていた。
「イゾウ……!」
「イルザーラ……!?」
驚くリゼルとマリナ。あと一人は見覚えはあるが、名前が出てこない。
「あと……」
「サフィーナだ。ミーネの相手だった」
リゼルの相手をしたイゾウ、マリナの相手をしたイルザーラ、そしてミーネの相手をしたサフィーナ。
その三人が間に割って入った。
敵の二人からすれば、「邪魔するな」といった感じだろう。だが、様子を見ているだけで、攻撃を仕掛けてくる気配はない。
「何を……!?」
「……確かめたい」
イゾウは静かに、だが、力強く訴えた。
「自分は負けました。それは認めます」
「負けが直接関与しないって聞いてさ。見物してたんだよ」
「……風がここで吹いている」
イルザーラはそこで三人とたまたま会い、話し合ったという。ただ、サフィーナは風がどうこう言うだけで話し合いにはならなかったそうだが。
「それで、あんたたちとあっちの関係に気付いたんだよ」
「あれは敵戦力そのもの……でしょう?」
「……正確にはレイの下層の敵だ。本命はもっと強い」
リゼルは間違いがないように伝える。
「なるほど、です」
「ふぅん……」
挑戦者たちにしてみれば、実力をアピールできるチャンスである。
試験では負け記録でも、ここで力を示すことができる。
ただ、今目の前にいる敵は、レイやヒューズたちの実力までは及ばないはずだ。
したがって、ここで勝利できることと、レイやヒューズと対等に戦えることがイコールにはならない。
「……前哨戦、という感じですかね」
「どーでもいいよ。どっちにしても敵なんだろ?」
「……それは間違いない。だが、どうする気だ?」
リゼルの問いに答える前に、イゾウは刀を構える。
「あなたの龍力は強い。それに、負けは負け。それは理解しています。が……」
「『力』があるってことを見せてやるさ!!」
「ここは退けない。風が……泣いている……」
三人の龍力が高まる。
そこで、敵の女性が舌を打つ。
「ち……余計な真似を……」
「姉さん……」
「構わない。やるわよ。クオル」
ここで初めて、弟の名がクオルだと知るレイズたち。
「クオル君、ね。あんたは?」
イルザーラが斧を肩に構えながら問う。
「……シェキナー」
「シェキナーちゃん、ね。あたしは炎だけど、水すらも焼くわよ?」
「……うるさいわ。雑魚ほど吠える」
「!」
本当に鬱陶しそうに顔をしかめるシェキナー。
その態度に、ピキ、とイルザーラのこめかみに血管が浮かぶ。
それと同時に彼女の炎の勢いが増す。
「風が……歪む……」
イルザーラの龍力の変化を風で感じるサフィーナ。
それに合わせ、彼女も龍力を高める。
彼女たちの後ろで、レイズは叫ぶ。
「リゼル、やらせていいのか!?」
「ッ……!」
リゼルは言葉を詰まらせるだけで、何も言えない。
彼らを退かせるべきか、戦わせるべきかが分からない。
彼らのやる気を考えれば、戦わせるべきだとも思う。しかし、敵はレイの一派。
シェキナーとクオルがどの程度戦えるのか分からない。下手すれば、死人が出る可能性もある。
「……退く気がないみたいです。様子を見ても……?」
「ち……」
三人はやる気だ。
ここまで場が高まってしまえば、やらせるしかなくなる。
それに、退くよう訴えても聞く空気ではない。
「やらせるしかない、か……」
「ワンチャン倒せるかもな」
「……どうだかな」
バージルの淡すぎる期待をリゼルは切り捨てる。だがまぁ、ここはやらせてみるしかない。リゼルは剣を抜いたまま、数歩下がる。
「…………」
レイズたちもそれに習い、下がる。ここは、彼らに任せよう。