―エラー龍力者の姉弟―
水龍の女性と地龍の少年。
レイズたちが駆け付けてからは、バカみたいに暴れていない。彼らの到着を待っていたかのようだ。
「皆さん!無事ですか!?」
「レイラ!」
遅れてレイラも駆けつける。
レイズたちに怪我はない。それを確認すると、レイラは一安心したように胸をなでおろす。
しかし。
突然、地龍の少年が大地の牙を剥いた。剣に地龍の頭がダブって見える。
「みぃつけたッ!!」
「!!」
「ちぃッ!!」
リゼルは全力の爆発力で地の牙を止める。
「!!」
凄い力だ。リゼルよりも小さいのに、力負けする。
それは、龍力をリゼルよりも引き出せている証拠でもある。
「……へぇ!!」
少年は嬉しそうに笑う。
リゼルは渾身の力で少年を押し返す。
「どけッ!!」
「~♪!!」
口笛を軽く吹き、少年は下がる。だが、力に押されたというよりは、自分で意識的に退いた感じだ。
女性の方はこの間動いていないが、分かる。
この人も、強い。
「……何者です?」
「……エラー、って言うんですってね」
「!」
レイズ、マリナ、ミーネは顔を見合わせる。
あの二人も『あの日』に被害者か。
「わたしと弟は……全てを失った……!!」
女性を取り巻く力が禍々しく変化する。
フォリアのような清らかなバブルではなく、毒々しい色のバブルが展開している。
「けど、『あの人』はわたしたちを拾ってくれた……龍力のコントロールは教えてくれなかったけど、見て盗んだ」
「『あの人』……?」
鈍いわね、と女性は呆れたように笑う。
「あなたたちが必死で倒そうとしている人よ」
「レイ……!!」
レイズが真っ先に反応する。
「あいつの仲間か!?」
初めて見る、新しい敵。予想していたことだが、レイサイドに新たな戦力が加わっている。
「どうしてここに……?」
当然の疑問と言えばそうだ。
ここは、『あの島』に行けるかどうかの試験的な場。
外部からの乱入ならば百歩譲って理解できるが、この二人はテント内で暴れ始めている。
更に言えば、タイミングもおかしい。戦闘後で最も力を消費しているタイミングではなく、力が戻り始めたこの時間で、だ。
「騎士団のアホに捕まったからよ」
「アホって……」
捕まったお前が言うか?とバージルは目を細める。
「わたしたちは普通にあの島に帰ろうとした。けど、見つかったの」
騎士団が『あの島』を監視し始めたのはつい先日だ。
それより前までは、特に監視していなかった。その監視網に引っ掛かったのか。
「でも、運が良かった。あなたたちは、部外者でも強い人間が欲しかった。団員のアホがベラベラ喋ってくれたわ」
「…………」
「見つかったときはその場から逃げようとも思ったけれど……わたしは考えた」
水色の冷たい瞳で睨まれるレイラ。
「『あなたに会えるかも』って」
「……!!」
リゼルは舌を打つ。
予想していたことが本当になってしまった。だが、あの島からも普通に出入りしているのであれば、時間の問題だった、と言われて終わりだ。
「それで、わたしたちはその試験に潜り込んだ」
「……なら、なぜ待った?それに、何で他の挑戦者に攻撃した?」
「ふん、気分よ。そこに論理的思考なんかないわ。ま、普通に試験を受けるより騒ぎを起こせば、騎士団の最高戦力とやらが来るとは思ったけど」
全ての行動に論理的思考が働くわけではない。
感情で動いたり、無意識だったり、様々だ。ただ、その気分一つで傷つけられた側はそれで納得しない。
剣を交え、言葉も交わした。少なからず繋がりがあった連中だ。
レイズは怒りを抑えながらも、尋ねる。
「で、レイラに何する気だ?『あの日』にレイラは関係ないだろ」
「ん……でも、探してるのはあなただけじゃないから」
「!?」
流れを切り、そこで初めて剣を抜いた女性。
聞きたいことは山ほどあるが、話は終わりのようだ。
「来るぞッ!!」
レイズは叫び、剣を構える。