表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
-全ての始まり-
40/689

声と涙

レイズとレイラは、再びダルト遺跡の敷地へと足を踏み入れた。

当然だが、龍力者の気配あり。遺跡の前に立っている。


「行くか。気をつけてな」

「えぇ。お互いに」


近付くにつれ、天の雲が厚くなっていく。稲妻が弾け、光が走る。


二人は剣を抜かずに、龍力を発動させた。しかし、剣は抜かない。

仮説が間違いで、雷に打たれれば即行動不能となる。よって、これは「身を守るため」の力。


額から汗が流れる。心臓の鼓動が煩い。


「落ち着け……落ち着け……」


緊張感が高まる中、ゆっくりと、刺激を与えないように近づいていく。

普通に歩くよりも、精神を削られる。


と、レイズは足を止める。

確か、この辺で最初の落雷があった。ここを超えたら、射程範囲内。


「この辺りか」

「……えぇ」

「ふ~~~~……」


レイズは呼吸を整え、気持ちを整理する。

二人が感じていた違和感。それの答え合わせが、ここでできる。

そして、射程範囲へと歩を進める。


「……!!」


天の雲が光る。が、雷は落ちてこない。雲の中で弾けて消える。

やった、とレイラが呟くのが聞こえた。


「よし……」


第一関門突破。

雷の龍力者は、敵意に敏感だ。そして、その者が纏う龍力にも。


二人は、先ほどの会話を思い出していた。


「バージルとリゼル、騎士団は、あの龍力者を『敵』として見ていた」

「はい」

「けど、俺は正直……敵としては見れなかった。俺だって暴走したし、助けたいって思った」

「……私もです。ですが、表立って口には出せませんでした。けど、助けたいって思いました」


騎士団やリゼル、バージルも彼女を敵として認識していた。

彼らにも少なからず『助けたい』という気持ちはあったと思っているが、敵として対処するという思いが強かったはずだ。

だから、言い出せなかった。


「力を、抑えて……俺たちは、敵じゃない……」


龍力と敵意に反応して、暴走のきっかけとなっている。

自分たち二人だけは「敵意」がなかったから、攻撃の手が緩かったのだ。


ただ、いくら敵意や龍力に敏感と言っても、侵入者であることに変わりはない。

だから、シンクロのタイミング次第で、雷は落ちてくる。これは、一戦目も同じだった。


「……!!」


レイラの真横。

図太い雷が落ちていた。

地面を走る稲妻が、レイラを巻き込む形となる。


「レイラ!!」

「ッ……!!平気、です……ッ!!」


痛みを堪えながら、レイラは声を振り絞る。

龍を纏っていて良かった。完全生身だったら、倒されていたと思う。


身体を走る稲妻が消え、レイラも少し落ち着いてきた。

そのタイミングで、レイズは声をかける。


「ゆっくり、行くぞ……」

「えぇ……」


心を乱さないように進み、龍力者との距離。5メートルまで近づいた。


先刻より、表情は苦しそうではない。

だが、心ここにあらず。と言う印象だ。

意識は龍が支配している。これは間違いない。


問題は、ここからだ。

レイズたちに敵意はない。だが、意識が龍に支配されているのでは、会話もできないだろう。

かと言って、剣を抜くわけにもいかない。

少なくとも、こちらからは。


龍力者との距離。2メートル。会話できる距離まで近づいた。

相変わらず天の雲は厚い。時折光り、落ちてくることもあるが、明後日の方向だ。

龍の攻撃性と、龍力者の人間性とのバランスにより、攻撃を反らしてくれたからだと思う。


「う……ぅ……」


龍力者である女性からうめき声。

何か言いたそうだ。この機会を逃さず、レイラが声を上げる。


「あの!!私たち、あなたを迎えに来ました!!」

「助けに来たんだ!!苦しいだろ!?」


レイズも間髪入れずに声をかける。

会話に持ち込めるなら、持ち込みたい。意識が戻るきっかけになるかも知れない。


こちらの言葉をしっかりと認識しているのか、龍力者の女性は反応を示す。


「……う……たす、……け?」


女性は苦しそうに顔を歪め、涙を浮かべる。

それと同時に、ぞわ、と彼女の龍が乱れた。稲妻が四方八方に噴出し、大地を駆ける。

レイズとレイラを避けて走った稲妻。その状況に安堵した瞬間、激痛が走った。


「!!」

「いって……!」


避けていた稲妻の数本が、レイズとレイラを貫いた。

それでも、彼女の制御が効いていたのか、ダメージは少ない。


(マズいか!?)


龍とのバランスが非常に不安定。暴走状態故に攻撃性は増しているが、女性本人の気持ちも現れており、無差別攻撃はしてこない。


「負けるな!頑張るんだ!あんたは強い!!それに、俺たちもいる!!」


具体性のない、ただの根性論だ。しかし、声を掛けないよりは何倍もマシだ。

こちらの声が聞こえるなら、可能性はある。


「ぐっ……」


頭を抱え、倒れ込む。

龍が乱れる。稲妻とオーラの歪みと共に、龍力が膨れ上がった。

大地を走る稲妻の量が大幅に増える。見た感じ、倍に。


「ッ!!」

「雷が!!」


身体から、大量の放電。

いくら二人を避けるように走っているとはいえ、いくら何でも量が多い。

増量前でも数発食らうレベルだったのだ。これが、倍になっている。

当然、コントロール精度が落ち、自分たちを外せなくなる。


そう思ったレイズたちは、咄嗟に腕で稲妻から身を守る。


しかし、いつまで経っても痛みが走らない。

恐る恐る、腕の隙間から彼女の様子を窺うと……


「これは……」

「え……?」


その雷の攻撃は、綺麗に二人を避けるように走っていた。

稲妻が駆けた後の煙。それが、二人の直前でカーブし、そのまま斜めに走っている。

彼女が龍力をコントロールした証拠だ。自分たちに当たらないように。


行ける。

レイズは鳥肌が立つのを感じながら、叫ぶ。


「頑張れ!!戻ってこい!!」

「う……」


帯電している彼女の体。龍力を抑えたまま触れば、こちらもただでは済まない。

一瞬躊躇ったが、レイズは思い切って彼女の肩をつかみ、揺さぶる。


「レイズ!?」

「痛って……」


驚くレイラの声。

白い稲妻が走り、両手が痺れる。

彼女を刺激しないための、少ない龍力ではこちらの体が長くはもたない。


(関係あるか!!助けるんだ!!)


レイズは歯を食いしばり、声を掛け続ける。


「聞こえるか!?もう少しだ!!戻って来やがれ!!」


痛みに顔を歪めながらも、心から声を上げるレイズ。


(レイズ……あなたは……)


それを見ていたレイラは、静かに彼女の手を取った。当然だが、自分も痺れる。

稲妻が走り、手が、そして全身が痛い。

だが、彼女の痛み、苦しみに比べれば大したことはない。


ゆっくりと、優しい声で語りかける。


「大丈夫です……大丈夫です……もう、一人じゃないんです」

「う……」


気持ち、雷が弱まった気がした。

落ち着いた龍力を察知したか、レイズも大きな声を掛けるのを止め、ゆっくりと語りかけた。


「痛いよな……苦しいよな……俺も、暴走したんだ……だから、分かるぜ……」

「レイズ……」


放電は止まらないが、さらに雷が弱まった。

ただ、龍力レベルは変わっていない気がする。これは、外への放出から、内の維持へと変わっているのだ。


「今は苦しいけど……暴走した俺だって、コントロールできた。一人じゃなかった。お前も、もう、一人じゃない」

「そうです。私たちがいます。落ち着いて……ゆっくり……」


バチ、と音がしたと思うと、雷が完全に収まった。

彼女の顔から苦しそうな表情が消えた。


自然と、普段の表情であろう顔に戻っていく。

そして、自分たちを認識。それぞれと視線を交差させる。

レイズ、レイラの状況を察知したその女性。程なくして、頬を涙が走った。


涙でくしゃくしゃだが、素敵な笑顔。


「……ありがとう。あなた達の声、届いたよ……」


雷の龍力者は、その場で気を失った。がくん、と膝が折れ、倒れそうになる。

そんな彼女を、レイラは慌てて抱きかかえる。


「おい!?」

「……大丈夫。気を失っただけです」


ゆっくりと横にするレイラ。


「…………」


安らかな彼女の顔。大丈夫。脈は正常。

それが確認できた瞬間、レイラの目から涙が溢れた。


(良かった……本当に、良かった……!!)


自分は、自分たちは、間違っていなかった。

自分たちの手で、苦しみの渦の中にいる龍力者を救うことができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ