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龍魂  作者: 熟田津ケィ
-全ての始まり-
35/689

雷剣と雷撃

渦中の龍力者と一回も剣を交えていないのに、状況はかなり悪い。

バージル、リゼルのバリアは消え失せており、再度張れる時間もない。


お互いが状況の悪さを把握しつつも、言葉を交わす余裕がない。

位置関係や雷の状況を見ながら、走っている状態である。


「……!!」


とにかく、バラバラに走る。


雷は一発ずつだが、威力が絶大だ。

範囲はかなりバラつきがあり、予測がつきにくい。恐らくだが、龍力充填時間(溜め)が長いかどうかで最終的な威力・範囲が決まっているはず。

悪い意味で不安定、良い意味で、敵に範囲を絞られにくいことが挙げられる。


ここまで陣形をバラされてしまっては、単騎での実力が試される。


(連携もクソもねぇな!!)


精神を乗っ取っているであろう雷龍が、そのような狙いを持っているかは不明だ。

だが、結果として今の攻撃スタイルで敵を殲滅できている。

学習し、このスタイルにまとまったと予測してもいいだろう。


これは、暴走状態でも学習し、行動を変えてくる可能性を示唆している。

基地で聞いた情報以上のことをしてくる可能性、この戦いで攻撃方法を変えてくる可能性だって浮上した。


リゼルは脳内でその可能性を考えながら、ギリギリの所で雷を交わしていく。


「ッ!!」


バリアも消え、自分の龍だけでの力では、防ぎ切れない。

稲妻の激痛が走る。だが、足は止めない。


(もう少しだ……!!)


バージル、レイズ、リゼルの三人は、龍力者との距離10メートルまで近づいていた。

しかし、走り回ったせいで息が上がっている。


レイラは、その少し後ろを走っている。

たまに自分にも攻撃が来るが、優先は前のリゼルとバージルなのだろう。

威力が低いことや、避けやすいことが重なり、自分はほぼ無傷だ。

リゼル、バージルと同じラインにいるレイズにも、攻撃はあまり飛んでこない。

ゼロではないが、ヘイトは低め。龍力の強さに反応しているのだろうか。


そうこうしているうちに、龍力者の顔がハッキリ見えてくる。


(あの方が……)


情報通り、自分と変わらないくらいの年齢だ。

肩のあたりまで伸びた髪が、外ハネしているのが印象に残る。

衣服はボロボロ。結んでいる箇所も確認できる。胸は隠しているが、大きさは隠しきれていない様子。


表情は虚ろ。閉じられていない口から流涎している。

明らかに意識が不明瞭。その状態でも、ここまでの龍力が引き出せている。

暴走状態の特徴そのものである。


と、最前線のバージルが一番に接近した。


「くらえ!!」


彼は剣を振り上げる。

防御に割き、残った分の龍力を込め、振り下ろす。

敵は納刀したままだ。行ける。


しかし。


「は……!?」


バージルの剣は、『何か』に止められた。

女性が持つ剣で止めたのではなく、別の何か。

確かに、何かを握っているような手の形だが……


「何だ……あれは……?」


レイズは目を見張る。


先程まで、手には何も持っていなかった。しかし、今は剣が握られている。

それも、普通の剣ではない。

雷に質量をもたせた剣。雷そのものを握っているかのようだ。

彼の攻撃は、それに阻まれてしまっていたのだ。


「雷剣の……具現化!?」

「具現……あれが……?」


レイラの声に、レイズは何となく理解する。

龍力を操るだけでなく、その力で武器まで創ってしまうとは。


「コレを今、作り出したってのか!?」


一番動揺しているのは、バージルであろう。

相手は剣こそ握っていたが、納刀状態だった。確実に、一発は入ったと思ったのに。

そう言えば、いつの間にか、元々持っていた剣が地面に転がっている。

襲い来る敵の力量的に、コレでは力不足だと判断したのだろうか。


リゼルは目を細める。厄介な敵だ。


(……フン)


本来なら、相当な龍力と集中力が必要だ。

エラー龍力者が、一朝一夕でできる芸当ではない。

ただ、今は龍が暴走している状態。意識は当然、その龍が支配している。

それゆえの代物か。


雷剣は迸る雷により、常時形を変えている。

大きく長さが変わるわけではないが、間合いが分かりにくいのは、戦いにくい。


その時、女性の力が増した。

雷剣で押し返され、バージルは体勢を崩す。


「ッ!?」

「ク……ラエ」


少女には似つかない、低い声。その声が聞こえた時には、もう遅い。

恐ろしく強大な雷が充填されていた。今の自分に、避ける余裕はない。

そのまま剣を振られ、バージルは雷剣の餌食となる。


「ぐわぁぁぁぁぁあっ……!!」


雲から雷を落とすのにかなりの力を消費したはずだが、龍力は全然衰えていなかった。


バージルはそのまま吹き飛ばされ、地面に転がった。


「バージル!!」


レイズは叫ぶ。しかし、無反応だ。

気絶しているのか、そのまま動かなくなる。


「やりやがったな……!!」


レイズはカっとなり、がむしゃらに剣を振る。剣の平で、とか考えていたが、そんなこと忘れ、ぶった切るつもりで猛攻を仕掛けている。

が、全て見切られ、雷剣で防がれていく。


レイズの動きは大きいが、女性の動きは最小限。

これでは、彼の力はすぐになくなってしまう。


(あのバカ……そんな剣では倒せない)


リゼルも参加しようと思ったが、こちらにも意識が向いている。

レイズに集中しているかと思えば、瞬間瞬間こちらを見るのだ。突っ込んでも対処されるのは明白。


「ち……」


仕方なく、詠唱に入る。

が、その瞬間、天が光る。自分の影が強く地面に映る。


「……!」

「リゼル!!」


レイラの悲痛な声に、リゼルは咄嗟に跳ぶ

しかし、ゼロスピードで跳んだところで、移動できる距離は知れている。


リゼルは初めて、マトモに雷の一撃を受けた。


「が……!」


詠唱に集中力を割いていた上に、龍の紋章を描くために、龍力もそちらに割いていた。

最悪の状況で、大きな一撃を食らってしまった。


リゼルは膝から崩れる。


「はぁ……はぁ……」


が、倒れない。

手を地面に付き、倒れまいと踏ん張る。


(僕は……レイラを……)


歯を食いしばり、龍力者を見る。

レイズと剣を交えながらも、「敵」はきちんとこちらを意識している。


相手をしているレイズが片手間で対処できてしまっているのが大きい。

と言うか、なぜ彼に雷撃を撃たない?雑魚だからか?


何にせよ、不意打ちが通用する相手ではない。


(レイラを……まも……る……)


強い意志で剣を握った瞬間。天が光り、二度目の落雷。

避ける力はもう残っておらず、リゼルは雷に打たれた。


「!!」

「リゼル!!」


雷の余韻が去ったころには、リゼルは地面に倒れ、そのまま気絶していた。

バージルも倒れ、最も信頼していた彼までもやられてしまった。あの戦いを見る限り、いつまでもつかは分からない。


これが、暴走龍力者。

かつてないほどの強大な相手に、レイラは絶望しながらも、純粋な気持ちを胸に、走り出すのだった。

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