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龍魂  作者: 熟田津ケィ
-全ての始まり-
34/689

雷の洗礼

レイズたちは、ダルト遺跡の周辺まで近づいていた。

厳密には、ダルト街道と雷龍遺跡の敷地の境目あたりまで。


眼前には、広い広場と、歴史を感じる遺跡。

雷龍遺跡と聞いていたから、常時帯電しているのかと思いきや、そうではなかった。

外観だけで言えば、雷龍遺跡でなくても通りそうである。


そこで、レイズたちは足を止める。


「そろそろか?」

「……そうだな」


遺跡の手前には、何もない場所が広がっている。


龍力者の射程は、約50メートル。

目測でそれを見極めることはレイズにはできないが、何となく、この広場内の殆どが射程圏内だと思った。

この敷地を越えた瞬間から、雷に打たれる可能性が高い。


問題の龍力者は?と目を凝らす。その女性を見つけるのに、時間はかからなかった。


「……いた」


隠れている訳でもなく、遺跡の前に女性が一人、立っているのが分かる。

遠目で分かりにくいが、髪色は黄色に近い金髪。

その手には、剣が握られている。間違いなく、歓迎されていない。


リゼル、バージルは龍力を発動させる。

それを見て、レイズ、レイラも龍を呼び覚ます。が、彼らに比べると、ややスロースタート。


「良いな?行くぞ……」

「おう……」


なぜか小声になるバージルと、それにつられて小声になるレイズ。


遺跡に近づくにつれ、肌にさすような気配が強くなっていく。

あの龍力者が殺気立っているのが分かる。


分かっていて近づいていくのは、物凄く嫌な気分だ。

と、その時、レイズは異変を察知した。


「雲が……」


境界を越え、少しだけ進んだ瞬間、ダルト遺跡を中心に雲が厚くなるのが分かった。

ゴロゴロと雷が弾ける音も聞こえる。あちらも臨戦態勢に入ったということだ。


距離がまだあるのに、とも思ったが、こちらの龍力に反応した、と言うことなら理解できる。

龍術を使っていないのに、このプレッシャー。距離があるのに、目の前で龍力が弾けているように感じる。

この直前でバリアを張らなかったのは、彼女をなるべく刺激しないようにするためか。


「ここが直前かと。いいですね?」

「あぁ。問題ない」


敵を見据えるリゼル。

雷を交わしきり、敵を無力化してやる。


「レイズ?いいか?」

「あぁ。大丈夫だ」


そういう彼の手は、震えている。

大丈夫そうには見えんが、との言葉を呑み込み、バージルも前を向く。

ダルト騎士団を全滅させるだけの力を持つ敵。

他人を気にする余裕はなくなるだろう。実際、彼にも頑張ってもらうしかない。


「どうする?一斉に走るか?」

「それで行くか。考えても分かんねぇし」

「誰が狙われても、恨みっこなしですね?」

「好きにしろ。僕は守りと攻撃で忙しい」


この状況でも、彼はレイラを守りつつ戦うのか。


「リゼル。最優先は彼女です。いいですね?」

「…………」


彼はレイラを見るだけで、返事も頷きもない。

彼にとっての最優先は、レイラだ。実際、王の命を預かっているため、当然であるが。


「じゃ、それでいいな?行くぞ?」

「おう」

「はい」


リゼルはどうせ無視だろう。彼の返事を待たず、飛び出すバージル。

背後で聞こえる足音で、他三人も走り出したのが分かる。


ダルト遺跡上空の雲に、稲妻が弾け、光る。

ぞく、と背筋が凍りそうな恐怖。全員の龍が、その脅威を感じている。


「……来るぞっ!!」


一閃。


バージルの頭上に、極太の雷が出現する。

耳を刺すような轟音。強烈な一撃。


咄嗟に、横に跳んだバージル。

轟音と共に、彼がいた場所に図太い雷の柱が現れた。

その柱は稲妻を走らせながら、龍の余韻を残しながら消えていく。


標的は人間。

遺跡の大地には傷一つ、焦げ跡一つ残っていない。


(やっべ……!!)


これだけ強大な攻撃なのに、環境への影響が最小限だ。

雷龍の余韻が残る程度にしか、残っていない。


暴走状態でここまで正確に標的を判別できるのか。

彼女の例外さが際立つ事象である。


「っつ……」

「バージル!」


バージルは親指を立てる。何とか回避したようだが、幸運は続かないだろう。

このバリアで防ぎ切れるのか?これが剥がれた後、どうなってしまうのか?嫌な考えが巡ってしまう。


(クッソ……強すぎだろ!?)


しかし、足は止めない。それにしても、あの図太い雷。密集していては、仲間を巻き添えにしてしまう。

彼らは、それぞれと距離を取った。


天の雲が、また光る。


「!!……また来ます!!」

「……!!」


リゼルの背後で、レイラが叫ぶ。その声に、彼は天を見る。

標的も大事だが、この雷の試練がある以上、そちらにも意識を割かなければ。


稲妻の量と、龍力の気配。そして、メンバーの位置関係。

それらの情報から、自分に来ることが予測できた。


「チィ……」


目を細め、レイラの位置を探る。光龍の気配は、まだ近い。

とは言え、雷に巻き込まれるほど近くはないと判断できるが、念のため。さらに走るスピードを上げる。


(あいつ……!まだ上がんのか……!)


あれがトップスピードでないことに、レイズは素直に驚いている。

数秒後、更に轟音。雷が落ちた。


「リゼル!!」


直撃直前でスライディングし、なんとか避ける。距離もだいぶ詰めることができた。

しかし、範囲が広い。直撃は避けたが、余波を食らってしまう。

と言うか、さっきよりも雷が大きい気がする。気のせいだろうか。


若干の痛み。

バリアと、闇龍の防御壁を超えてきたか。

戦闘には問題ないが、バリア込みの龍力で負けたことに、苛立ちを覚える。


「くそ……」


当たり前だが、バリアも薄くなった。

自分の龍なら、あと二発程度はもつだろう。レイラも、多分同じ。他は、知るか。


また、雷の範囲が毎回同じではないのは、キツイ。

当然、上空で充填される時間で異なるのだろうが、避けきれない攻撃が来ることに変わりはない。


(溜めの時間を与えなければいいだけの話だ)


止まるわけにはいかない。リゼルは再び走り出す。

それに、自分が狙われている間、他はフリー。その間、好きに距離を詰めればいい。


龍力者は攻撃の手を休めない。

また、雲が光る。


先行するバージルとリゼル。

雷の機動的に、どちらかが狙われている。


「バージル!!リゼル!!」

「「!!」」


轟音と共に落ちる雷。

毎回スライディングや跳躍が間に合うはずもなく、被弾が増えてくる。


「ぐッ!!」


直撃は避けられているが、雷の端や、弾ける稲妻が痛い。


龍力者は、前にいる二人に的を絞ったのか、その二人をしつこく攻撃してくる。

気付けば、彼らを覆うバリアはなくなっていた。それでも、二人は走ることを止めない。


ターゲティング貰わないと、二人が危ない。


(迷っている暇はねぇ……!!)


中途半端な龍であるレイズだったが、強引に龍力を込める。

ただ、まだまだ発展途上の龍だし、躊躇だって消えていない。他の三人に比べると、歪な龍力。

これでも、今出せる全開の力。


自分の意識が飛ばないギリギリを狙いながら、かつ全速力で走る。

龍力調節と高負荷の運動。その両立は相当難しい。

だが、必死で維持するレイズ。少し前の自分なら、意識が吹っ飛んでいたと思う。

練習を続けていて、本当に良かった。いざという時に戦えないと、友を失う。


「……追いついた!!」

「攻撃は一発だ!!とにかくバラバラに走れ!!距離を詰めろ!!」

「あぁ!!」


自分と並んだレイズを見て、バージルは指示する。

その後、一瞬バリアに視線を走らせ、舌を打つ。


今更ながら、それが消えていることに気づいた。


(もうねぇじゃねぇか……!!)


無意識にリゼルを見る。彼のバリアも、消滅していた。

一瞬レイラに頼もうかと思ったが、距離を詰めるために走っている状況。詠唱中は動けない。術者と恩恵を受ける者がリアルタイムで離れてしまうことになる。


(クッソ!!)


自分たちが立ち止まれば可能だが、前衛がレイズだけになる。バリアを重ね掛けしている暇はない。

ここから先は、自分の龍の防御力で凌ぐしかない。


(こっからだぞ……!)


次受ける時は、もっと痛い。

雷の洗礼をこれだけ受けても、まだ龍力者には届かない。


ギリ、と歯を鳴らすバージル。

限界は、刻一刻と迫っている。

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