ダルト街道と岩石地帯
レイズたちは、ダルトを出発し、雷竜使いのいる遺跡へと足を進めていた。
遺跡はダルトの住民も行き来することがあるため、道は舗装されている。そのため、歩きやすい。
しかし、街道を反れようものなら、周囲は大小さまざまな岩石がゴロゴロ転がっており、見通しは悪い。
木々は少ないが、岩陰に草花は生えている。言ってしまえば悪いが、殺風景である。
こんな環境の場所に、なぜ住み着こうとしたかレイズには分からない。
岩石地帯に、人間が創意工夫して住んでいる環境である。
さて、ダルトも肌寒かったが、町の外に出ると、更に気温が下がった気がする。
騎士団の服装は機能的だが、万能ではない。寒さを凌ぐには、アンダーシャツや上着が必須。
基地内で拝借して良かった。レイグランズ出発時の装備では、凍えてしまう。
それでも、寒いのは寒い。
「やっぱり寒いなー」
レイスは、ぶるりと身体を震わせる。
「だいぶ北に来たからな。日もそんなに射さないし」
「北に来た……」
何気なくバージルは言ったのだが、それが駄洒落になっていた。
それをレイズに拾われ、少し恥ずかしくなる。
「おいやめろ。無意識だぞ」
「……へいへい」
そんなやりとりが羨ましいのか、レイラはクスクスと笑っている。
リゼルは、最後尾を黙ってついてきている。
「歳の近い友人は良いですね」
「なんだ、レイラには……」
レイズは、友達いないのか?と言う言葉を飲み込んだ。
リゼルに殺されそうな気がしたからだ。
バージルはレイズのそれを察し、別の言葉に変える。
「やっぱり公務は忙しいか?」
「……そうですね。今となっては、時間がいくらあっても足りません」
タイミング的に、最悪な時期である。
グランズが動ける状態なら、彼女の負担も軽くなるはず。
しかし、行方不明である以上、全てのしわ寄せが彼女に行くのだ。
「……そうか」
「以前は、少なからず交流はあったのですが……ね……」
レイラは少し悲しそうな顔をする。
そんな顔を見て、何も言えなくなるレイズ。それは、バージルも同じだ。
「…………」
国民には、国が行っている復興の表面しかまだ見えていない。
見えていないところで、レイラたちは必至で働いているのだ。しかし、思うようには進んでいない。
本当に黒幕がいるのか怪しさはあるものの、レイラのことは信用していいのではとも考える。
一緒にいたのは本当に短い期間だが、単純に「何もしてくれない」と罵るのは違うのではないかと考えだしている。
その数秒後。
「おい、あれなんだ?」
レイズは歩みを止め、指差す。
「ん?……あれは」
街道を反れたところで、岩がうごめいている。
風は吹いていない。バランスがおかしいわけでもない。
つまり、自発的に動いているのだ。
「魔物か!?」
動いている岩は、やがて人に近い形に組み上げられた。
よく見れば、五体ほどいる。まだ岩に擬態している状態のヤツもいるかもしれない。
「ゴーレムだな。岩の魔物だ」
バージルは呟く。
数も多い。この距離であれば、わざわざ戦う必要もない。
それに、ダルト付近ではゴーレムは強い部類の魔物だ。
種族的に強いのもそうだが、岩属性故に物理攻撃が通りにくい。よって、龍力消費が激しい龍術で応戦する必要がある。
龍力を温存するためにも、避けられる戦いは避けた方が良い。
「戦いを控えています。やり過ごしましょう」
「分かった」
レイズたちは、ゴーレムがいる間反対に街道を反れ、岩陰に身を隠した。
ゴーレムは自分たちに気付いていないのか、岩同士をぶつけ合いながらうごめいている。
こちら側は縄張りの範囲外なのか、遠くへとゆっくり移動している様子。
「やり過ごせそうだな」
「あぁ。良かった」
休憩がてら、待つことにした。
当然、特訓は欠かさない。
レイズは手の中で炎を生成する特訓をしていた。
ゴーレムが近くにいるため、大きな力は扱わないが、練習には丁度いい。
「もう少し……」
ぼ、と小さな炎が生成される。小さいが、龍力的には安定している。
それを大きくするのではなく、自由に動かせるように試みてみた。
右回転、左回転、螺旋状に動かしてみたり、急発進急ブレーキをかけてみたり。
龍力操作に関しては、龍力絶対値が小さい状態でやる方が、自分には合っている。
慣れてきたら、この力を大きくした状態で、似たようなことをする。もっと慣れてきたら、身体を動かしながら操作していく。
自分のプランは、こんなイメージだ。
炎を色々動かしていると、レイラに話しかけられた。
「……ここでも、練習ですか?」
「あぁ。少しでも早く慣れないとな」
彼の手の中で、小さな炎が揺らめいている。
安定していたが、話しかけたことで、揺らぎが大きくなる。
「……邪魔、しましたね」
「う……」
分かりやすい。
レイラは引っ込み、リゼルの近くに腰を下ろす。
「……地図によると、まだ歩くみたいですね」
騎士団に貰った地図を広げ、彼女は距離を計算する。
「半分は来てないのですか……来てないのか?」
「四分の一くらいです。残念ながら」
言葉が固いバージルの問いに、ゴーレムの様子を見ながらレイラは答える。
ゴーレムの群れは、少しずつではあるが順調に離れつつある。
「様子を見ながら進みましょう。戦いはなるべく避ける方向で」
ゴーレムが十分遠ざかったところで、レイズたちは再び歩を進める。
力を温存する意味でも、戦いは避けたい。しかし、屋外でどれくらいそれが望めるかは、運次第であるが。




