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龍魂  作者: 熟田津ケィ
-全ての始まり-
24/689

特別部隊

入団式が終わり、団員それぞれが配属地に向かう道についていた。

少し心残りなのは、アーロンが言っていた女性のこと。


(……結局、会わなかったな)


バージルは、分かりやすく肩を落としていた。

同じ場所で試験を受け、リゼルとの戦いでも怯まなかった彼女。銀色の髪の女性、フォリア。

同じ会場で試験を受けた縁もある。会ってみたかったが……

この機会を逃せば、会える可能性は限りなく低くなるため、残念である。


(飛行艇で散るのか。流石に無理だな)


王都以外の配属者は、本部から飛ぶ飛行艇に乗り込み、散り散りになる。

研修も移動先で行うため、最大のチャンスはここだったのだが。


(はぁ……しゃなぇねな。俺はココだ)


配属先は送付された書類に同封されており、式典後に向かう場所が記されていた。

バージルの物には、レイグランズ城内の謁見室に来るように記されていた。


これは、王都勤務であることを意味している。

多分だが、レイズも同じだろう。彼は俗に言うエラー龍力者であるし、中央に置いておきたい存在のはずだからだ。


よって、そこで会うだろうと思い、バージルは城内を歩いていた。


(……流石城だな。ホテル以上だ)


柱も装飾も、ホテルのものとは格が違う。

高級そうなだけでなく、頑丈さも兼ね備えていそうだ。

そのこともあり、城のダメージは多くなかったのかもしれない。


と、謁見室の前まで来た時、やや懐かしい顔が見えた。


「レイズ!!」

「お、バージル!」


数日ぶりの再会。

予想通り、彼も王都配属だった。


が、少々気になる点がある。


「……他のメンツは?」

「いや?今んとこ俺たちだけだ」


レイズは一番に着き、待っていたが、誰もここには来ていない。

その事実に、バージルは首を捻る。


(王都勤務が二人?そんなことあり得るのか……?)


しかし、騎士団内部の事情を知らない人間がいくら考えても、答えには到達しない。

彼とは違い、レイズはそのことを一切気にしていない様子。

そんな姿を見て、考えるのがバカバカしくなってきた。


(……もういいや)


と、一人のメイドが見えてきた。


(あれ?あの時の?)


見たことある気がするメイドにつれられるレイズたち。

例によって、二人は謁見室に通され、待つように指示された。


既に用意されていたイスに座り、一息つく二人。


「実感が湧かないな……」


と、レイズがポツリと呟いた。


「……何がだ?騎士団のことか?」

「それもあるけど……ここでレイラと会ったことだよ」

「会ったのか!?」


バージルは驚き、大きな声を上げる。天井に声が反響する。


「静かにしろよ」

「す、すまん……」

「エラーで自発的に?志願したのは俺が一人目ってことらしい。それで、話した」

「……そうなのか。一人目、なのか……」


そこは考えていなかった。

エラー龍力者の騎士団への入団。言葉上は入団だが、実情は国に保護・監視されている状態。

肩書は騎士団員となるが、ポジティブな面だけではない。


教育も受けれて給料も出るのだから、オイシイ話だと思っていた。そのため、もっと志願者がいると勝手に考えていた。


しかし、実際はレイズが自発的入団第一号。

入団試験の人数が多い印象だったため、そこまで気にしていなかった。

実際は、レイラのスピーチあったように信頼関係は深刻なようだ。


「生活は機能してるけど、信頼がないのは……」

「まぁ、きついな……」


国家としてやっていけるのか。

ただ、減税や修繕に全力なことが伝わり、支持率は下げ止まりしている。

が、騎士団に家族を預けられるかどうかは、別問題だ。

解決するのは、実績を上げるしかない。


異次元や確固たる覚悟など、強い言葉で誤魔化すのでは誰にも届かない。

先送りできない事案に取り組み、生活を改善させなければ、国の声を聞こうと思う国民はいない。


などと小声で話していると、レイズたちが入ってきた扉から、リゼルが入ってきた。

闇色の髪、片目が隠れるほど長い前髪。キツそうなご尊顔。低身長。相変わらずだ。


「…………」


二人と目が合うが、リゼルは何も言わない。だけならまだよかった。なぜか舌打ちをされる。


(あのクソやろう……)


無礼なヤツだ。あれで騎士団員が務まるのか、疑問である。

実力は認めるが、騎士団としても礼節は見についていないように思う。


彼は、二人から少し離れた位置に座った。

腕と足を組み、目を閉じる。


「……何なんだ?」

「さぁ……」


リゼルがいるこの空間で、静かな空気が辛い。

レイズたちが声を掛けようかと迷っていると、奥の扉が開いた。

それと同時にリゼルは立ち、姿勢を整える。それを見ていた二人も、慌てて立ち上がる。


扉から出てきた女性ーレイラ=シュフールーは、ドレスではなく、騎士団で身に着けるような服を着ていた。服の装飾はリゼルと同じか、それ以上だ。

上着は男性団員と同じようなコートだが、下はスカートにブーツスタイル。

腰に剣を携え、戦う準備万端のような格好だ。


相変わらず、美人で、そして凛々しく見える。

……と言うか、あれで戦うのか?見えてはいけないものが見えてしまうぞ。

と思い、バージルは眉をひそめる。


まぁ、リゼルが何も言わないということは、そういうことなのだろう。

フォリアを探すのに夢中になっていて、他の女性団員(特に下半身)を見ていなかった。

レイラに限らず、他の団員もスカートスタイルなのかもしれない。


「よく来てくれました。どうぞ、こちらへ」


彼女は出てきた扉とは別の扉を示し、来るように指示する。


「行くぞ」


ここで初めて、リゼルが口を開く。

二人も従い、扉を潜る。

その先は、小さな部屋だった。


中央にテーブル。その四方にソファーが置かれている。

部屋の隅には、花が活けてある。


レイズ、バージルはレイラと向かい合うように二人掛けのソファーに座った。

リゼルはまた少し離れた位置に立ち、腕を組んだ。今度は座らない。


主役はあくまで自分たちのようだ。


全員が落ち着いたタイミングで、レイラは頭を下げた。

さら、と美しい髪が重力に倣う。


「改めまして、入団、おめでとうございます。同時に、ありがとうございます」

「あ、あぁ……」

「……っす」


バージルは緊張している。レイズは話すのは二回目だが、はやり慣れない。


「……早速ですが、あなた方二人には、特別な配置を考えています」

「特別……?」


バージルは繰り返す。

それにレイラは頷き、続ける。

そうか。だから、自分たちしかここに来なかったのか。

他の王都配属の団員は、本部にでも向かったのだろう。


「レイグランズから南北にある大陸に、ダルトという町があります。そこで、龍力者の暴走と思われる通報がありました」

「!!」


龍の暴走。レイズは身を固くする。

恐らく、あの日の被害者だろう。


「ダルト……」


この世界の南方寄りに位置する大陸。そこにある町だ。

石関係の産業が盛んだと聞いたことがある。


「……駐在している騎士団では太刀打ちできなかったそうです」

「!!」

「もちろん、実力がないわけではありません。が、応援が欲しいと本部へ要請がありました」

「まさか……俺たちが?」

「……はい」


そこで、レイズは口をはさむ。


「待ってくれ。暴走だろ?」

「……えぇ」

「なら、力が空になれば収まるはずだろ?しかも、俺と同じなら、何週間も前の話だ。今も暴走状態なのか?」


そう。レイズが経験した暴走は、凄まじいエネルギー放出が主だ。

エネルギーを使い果たせば、暴走は収まり、龍力者は気絶してしまう。


(レイズ……お前、言葉が……)


と言うか、バージルはタメ口でガンガン言えるレイズにヒヤヒヤしている。

いつリゼルに刺されるか気が気ではない。


彼の心配はお構いなしに、話は続いている。


「……報告では、遺跡を守るように龍を使っているようです」

「守る?」

「ダルトの近くには、雷龍の遺跡があります。その龍力者は、暴走状態にあるものの、遺跡に人が近づかなければ、龍は落ち着いているようです」


人の接近が、暴走のトリガー。

周囲に人がいなければ、その龍力者は落ち着いているとのこと。


「えっと……それは……良いことなのか?」

「いえ……その方は、龍魂の影響で、遺跡から離れられない状態にあります。遺跡に川は流れていますが、食料は魔物次第です。良くも悪くも、これらが彼女の命を繋いでいるようです」


それは、生前の龍の性格的な部分か、それとも無意識にエラー龍力者が『守りたい』と思っているからなのか、ここでは結論は出ない。

どちらにせよ、行動の多くを龍に支配されていることは理解できた。


「……珍しいタイプの暴走ですね」


バージルは大きく息をつく。

これだけエラー龍力者が一気に増えたのだ。不思議なケースが出てきてもおかしくない。


「はい。むやみやたらに力を使うのではなく、何かに固執している点からも、今までのタイプとは違います」

「それで、俺たちが?」

「はい。私も同行します」

「「え?」」


レイズとバージルは顔を見合わせる。


「あなた方二人と、私、そして、リゼルでの特別編成で挑みます」


まさかの特別編性。

研修すっ飛ばして、本任務。


レイズとバージルは、速攻で最前線に送り込まれることとなった。

王レイラと、その右腕と一緒に。

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