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龍魂  作者: 熟田津ケィ
-全ての始まり-
23/689

入団式

入団式当日。

騎士団の制服に袖を通したバージル。

白ベースの裾が長いコート。半袖と長袖を支給されたが、自分は半袖を着用した。

そして、下は黒パンツ。柔らかい素材だが、耐久性も兼ね備えている。

鏡でその姿を映し、身だしなみを整える。


「へへ。遂に入団だ」


多分、同じ時間にレイズもこれに袖を通したことだろう。


(……結局、別行動になっちまったな)


試験前に別行動になってから、本日までレイズと合流できていない。

この数日間、龍魂の教育ができておらず、かなり歯がゆかった。

合格したのだから、入団までに少しでもレベルを上げておきたかったのだが、それも叶わず。


個人で頑張ってくれていればいいのだが、慣れない土地で慣れない力を個人で練習させるのは望み過ぎか。

この数日、バージルは出歩く際もレイズの姿がないかと気にしていたが、この大都会で一人の人間と約束なしで会おうなど、無謀。

実際、会えずに終わっている。


さて、式典は騎士団の本部ではなく、レイグランズ城で行われると契約書に書いてあった。バージル含め、多くの団員は初めての場所だ。

地図などなくとも、上へ上へと歩いて行けば、自然と城に着く。それに、近付くにつれ、団員の姿も多くなっていく。ついて行けば、尚更安心だ。


そして、到着する。雇い主兼、王が住む場所のレイグランズ城。


「ここ、か……」


酷く壊れたと聞いていたが、修繕はほぼ終わっており、再出発のスタートは切れている様子だ。


会場に来て驚いた。

考えてみれば当然だが、入団するメンバー(同期)は、あの日会場にいた人間だけではなかった。

一定の期間で合格した者を集めているようで、バージルが見たことない面々もいた。

ざっと見て、合計で100名弱くらいか。ここから、各地の騎士団基地に移動することになる。


(フォリアは……どこだ?)


なぜかレイズよりも先に女の合格者のフォリアを探すが、見当たらない。

仮に見つけたとしても、声を掛けるほどの仲ではないが、もう一度しっかりと見ておきたかった。

同期の中でも、同じ班での合格者。勝手に縁を感じていた。


(ダメだ。多すぎて分かんねぇ)


人も集中し、すり抜けて探し回れる状況でもない。

早々に諦め、バージルは大人しく前を向く。


騎士団サイドは、騎士団長、支部長、レイグランズの市長などが来賓している。

もうじき、始まる。


「!」


式典が始まると同時に、クラッカーが鳴らされ、騎士団の吹奏楽が始まった。

過去の王が作曲したとされる曲で、力が湧いてくるような演奏だ。


袖を通したときも気持ちは高ぶったが、今この時間は更に気持ちが強い。


(いよいよ俺も騎士団員か……)


もちろん期待している。が、不安もある。

騎士団に入ったのは、真実を知るためだ。志半ばで死ぬこともあるかもしれない。

だが、虎穴に入らずんば虎子を得ず。飛び込まなければ、何も得られない。


ただ、レイズの教育も「けじめ」としてなさなければ、レイズ母との約束がある。

そう言えば、同じ部隊か、近い部隊に配属されるのだろうか。

別の町となれば、かなり達成不可能になってしまうが……


そういう意味では、アーロン経由で試験を受けたのは良かったかもしれない。

彼に権限があるかは分からないが、近しい場所にしてくれるはずだ。


などと考えていると、演奏が終わった。


「~~~~~~~!!!」


大きな拍手で吹奏楽団が見送られた。

拍手が止んだ少し後に、一人の女性が入ってくる。


「ッ……!!」


その美しさに一瞬目を奪われた。会場が一気に静まり返る。

白い純白のドレス。丁寧に手入れされているであろう、美しいストレートの金髪

大きな目に瞳はブルー。肌にはシミ一つない。


姿を見たことがなくとも、説明されなくとも、分かる。

あれが、あのお方が、この国の王。


(レイラ……様)


コツ、と踵を鳴らしながら、中央のスピーチ台に立つ。

歳は自分と変わらないだろうに、威厳があった。


レイラは一人一人に目を向けながら、挨拶をする。


「……レイラ=シュフールです」


一呼吸置き、続ける。


「皆さん。騎士団合格。おめでとうございます」


透き通った美しい声だ。

変に偉ぶっておらず、位の高さが鼻につかない。


「この国は、今大変な時期にあります。人々からの信頼は落ち、各地で犯罪が急上昇しています。そして、あの日の影響か、魔物も強く、凶暴になっています」


あの日以来、エラー龍力者が一気に増えた。それと同時期に、魔物の狂暴度も上がっている。

人間サイドの変化を、魔物なりに肌で感じ取っているのかもしれない。


「……城の武器庫も破られ、王都は大混乱でした」


今は落ち着き始めているが、直後の混乱は酷かった。

城の武器庫にまで侵入を許すとは。国民の怒りの矛先は完全に『自分たち』に向いている。


また、エラー龍力者による犯罪も多発している。

あの日の被害者でも、龍魂を扱えない者は多い。ただ、その反面、問題なく扱える者もいる。

発現時に居場所を失い、龍魂を得る。攻撃できる力を得てしまったエラー龍力者は、次にどんな行動を取るか。想像したくもない。


「……事態収束。人々からの信頼を再び得るために、皆さんの力が必要です」


懇願するような声で、レイラは続ける。


「魔物から町を守り、意図せず龍を得てしまった方に寄り添い、ケアをする。そうして、この国は再出発するのです」


レイラは黙り、目を伏せる。沈黙が場を制した。

スピーチが終わり、下がるのかと思いきや、彼女は、全く動かない。

あれだけのスピーチをしたのだ。今更緊張している訳でもないと思うのだが。


「……?」


変に思った数人が、彼女の顔をまじまじと見つめる。


緊張と不安。それは少なからずあるだろう。

場数を踏んでいても、緊張はする。それに、この情勢だ。不安もある。

が、違う。喋ろうかと口を開いたかと思えば、ゆっくりと口を閉じる。これらの動作を、繰り返している。


「ッ……」


喉奥から漏れる声が、前列に居た者だけに届いただろう。

団員がソワソワし始めた時、覚悟ができたのか、彼女は声を届けた。

決意に満ちた声を。


「そして……あの日の真犯人を……私は、倒す」


自分たちに向けた歓迎の声ではない、王自身に向けた、使命を突きつける声。

「倒す」という言葉を選んだのも、そうとうな覚悟が伺える。


「あの日、爆発から生き残った方がいました。彼は、絞るような声で言いました」


レイラは正面を向き、声を張る。


「レイ、裏切った。と!!」

「!!」


バージルと合えずじまいだったが、無事今日を迎えていたレイズは、一瞬身が凍った。


(焦った~~……レイ……)


文字頭が同じなため、かなり驚いてしまった。

名前の一部が被ることなど、珍しくないが、ケースがケース。

俺は裏切り者ではないぞ。


「……私は当時、騎士団の遠征に参加していました。その日は王都への帰り道。爆発も、龍魂の様々な光も、この目で見ました」

「…………」


レイズは目を閉じる。

あの日まで、自分は平和に暮らしていた。この先も、このような生活が続くと思っていた。


「その彼は……傷跡が深く……亡くなりました」


つ、とレイラの頬に涙が光る。


レイと言う人物の裏切りを知らせた者の死と、レイラの涙に辺りはざわつく。

黒幕がいると報道されていたが、名前は伏せられていたためだ。

それもあり、架空の人物だ、と罵る者も多かった。当然だ。保身のための言い訳にしか聞こえない。


しかし、名前を伏せたのは、国を裏切れるだけの力を持つ者。

下手に刺激をして、向こうから仕掛けられたら、今度こそ国は終わる。


(……だから、伏せた……言われる覚悟で)


入団式で、彼らはその名を知った。


「絶対に、私は真犯人を見つけます。そして、倒します。この国をかき回した、真犯人を!!」


小さく息切れが聞こえる。

それだけ熱が入ったスピーチだということだ。


「そのために皆さん、力を貸してください。お願いします」


レイラは深々と頭を下げる。


「~~~~~~~!!!!」


場は沸きに沸いた。

レイラは微笑み、ゆっくりと場を後にした。


((レイラ……言い切ったな……))


レイズもバージルも、同じ感想だった。

この場で口にすることで、覚悟を見せたし、裏切り者の名前と言うカードも切った。

王としての覚悟と、父の責任を負う覚悟。それを、新人にも来賓者にも見せつけた。


(……レイ。お前も、俺の知りたい真実のピースなのか?)


知りたいことは、無限にある。

何にせよ、ここがスタートライン。真実を知る、物語の。

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