入団試験開始
騎士団入団試験。バージルサイド。
レイズと強制的に分断され、バージルは一人、騎士団本部の試験会場に通された。
意外だったのは、女性志願者がそれなりにいたことだ。
ミナーリンでの騎士団基地には、女性隊員は一人見かけなかったし、会場に来るまでの道中も男性ばかりだった印象である。
見かけなかった=いなかった。ではないのだが、少々驚いた。
(ま、半々じゃねぇけどな)
比率は7:3くらいか。
全体的に若い志願者が多い。年が行っている志願者もいるが、かなり少なめ。
(そういや、年齢の上限とかはないのか?)
長期キャリア形成のためとかで、30代くらいに上限を設けそうだが、明らかに40~な見た目の者もいる。
龍力者になった時点で、外見年齢は当てにならなくなる。よって、逆に言えば、龍力者で歳を取っているように見える場合、実際の年齢はもっと上になる。
考えるのは、男女比や年齢のことだけではない。
(つか、俺には多く見えるけどな)
志願者は少ない。と聞いていたが、絶対値はそれなりにいる気がする。
エラー龍力者を騎士団で支援するような話をアーロンがしていた気がするが、ここにはいないらしい。つまり、ここにいる全員が、正規ルートで龍力者になった者となる。
国への不信感は凄まじい時期だろうと思う。それでも、自分の力を国のために使いたい人間は一定数居る様子。
実際、支持率は盛り返しつつある。スピード感をもって減税されたのが大きいか。また、二重課税になっている品目にもメスが入っているらしい。実行はされていないが、国民生活に直結する減税に積極的なのは嬉しい事実だ。
(国民のために仕事してくれたら、支持率は勝手に上がる……至極簡単な話だな。経済オンチには分からないらしいが)
さて、一応の試験を受ける身としては、緊張もする。
状況的に、龍力が扱えないエラー龍力者は騎士団の方から誘いがかかる。だが、当然自分たちのような者は、自ら志願し、試験を受ける。
言い換えれば、エラー龍力者が全員合格で、正規の龍力者はふるいにかけられると同義。
(変な話だ。まぁ、仕方ないか)
状況が状況だ。国としては、管理できるエラー龍力者は多い方が良い。
そして、コントロールできている龍力者は実力が伴っていなくてはならない。
試験開始時刻が迫るにつれ、何やら前に張り紙が掲示された。
そこには、試験の組み分けが書かれていた。
バージルは首を伸ばし、その張り紙を凝視する。
(えぇと……試験は列ごとか)
ここから、さらにいくつかの会場に振り分けられ、試験が行われるらしい。
そのメンバーは、ここで並んでいる列で決まっているようだ。
バージル班の受験者は、5人。
男子(と言っても年齢層は様々だが)4人、女子(バージルと同じくらい)1人だ。怪しまれないよう、座り直す動作に紛れてその女性を確認する。おや、それなりに可愛いのでは……
何て、呑気なことを考えられていられるのは、推薦状のお陰である。
(……緊張してるな。みんな)
当然、バージルの班だけでなく、受験者全員の表情は固い。当然だが、緊張と不安でいっぱいいっぱいのようだ。
ある意味でチートアイテム持ちのバージルは、非常に大きい精神的余裕が生まれている。
と、奥の扉が開き、地位の高そうな男が出てきた。
アーロンと同い年くらいだろうか。
黒髪で、ひげが整えられている。
彼は、受験者を一通り眺めると、中央のスピーチ台についた。
「えー、諸君。この度は、騎士団入団試験に応募してくれて、大変ありがたい」
しかし、と続ける。
「この国の状況は良いとは言えない。団員は一人でも欲しい。が、実力の乏しい者に合格を出すことはできない。そこは分かってほしい」
受験者の緊張が高まる、バージルもつられて緊張する。
彼の表情は、推薦状を見ている雰囲気ではなかった。
実力主義。当然だ。
「試験は、模擬戦闘とだ。一人一人行う。各班に分かれて、少し待機していてくれ」
「「了解です!!」」
体育会系だろう。数名が大きな声で返事をした。
一つ頷き、男は部屋を出ていった。
挨拶が終わった後、バージルたち受験者はすぐに場所を移動した。
騎士団の小部屋に案内され、椅子に座る。周囲を確認してもおかしくないシチュエーション。
例の女性の姿を見るのは今しかねぇ。
バージルは女性を見る「ついでに」部屋をぐるりと見渡した。
銀髪で、首くらいの短髪。可愛い系ではなく、悪戯が好きそうなクール系……じゃなくて、待機部屋は、殺風景で何の面白みもない。
小会議室くらいに扱われる部屋だろう。
「……ふぅ」
バージルは用意されていた水を飲み、気持ちを落ち着かせる。
緊張はしていなかったが、いつの間にか気分が張り詰めていた。周囲の緊張がうつったようだ。
(試験対策は……まぁそれなり。後は、喋れるか、だな……)
試験内容は、模擬戦闘と面接。いたってシンプル。
模擬戦闘とは、具体的にどのようなものだろうか。
「模擬」と付いているからには、魔物相手ではなさそうだ。
十中八九、実力ある団員が相手をしてくれるのだろうが、それで何を見るのか。
シンプルな強さか。龍魂の技術か。武器の扱いか。頭の回転か。当然、戦闘においての全体的な総合力は見られるだろうが……
加点方式か、減点方式か……
多分、そこで雑魚すぎる者は落とされる。
強さを認められた者だけが面接に進めるのだ。
面接で言うことは決まっている。
真実を知るため。そして、エラー龍力者を一人、育てた経験だ。
ただ、この張り詰めた空気の中で、綽々と喋れるだろうか。
そうこう考えているうちに、一人目の受験者が呼ばれた。
成人して数年経っているくらいの青年だ。
何気なくそちらを見ると、目が合ってしまう。
「お先に」
「……あぁ」
バージルは仕方なく反応する。彼は一度頷き、部屋を後にした。
いよいよだ。
(俺は、真実が知りたい。国の発表でも、噂でもない。俺の目で、確認するんだ)
膝の上に置いた拳を、強く強く握りしめるのだった。




