表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
―本物と付け焼き刃―
199/689

―絶望の中でも―

ハーゼイ、ウィーンチームと、フリアとの戦いは続いている。


二人で攻めても、フリアは涼しい顔で攻撃を受けたり、かわしたりしている。

逆に、フリアの攻撃はきつかった。一発一発が、本当に重い。

四聖龍の名を持つ熟練者でも、彼の攻撃を受ける度に上肢が痺れ、全身の骨に衝撃が響いた。

フル・ドラゴン・ソウルを極めたと自負している二人だが、そんな彼らの龍力をフリアは軽々と上回っている。

まだフル・ドラゴン・ソウルとしての深みがあるのか、それとも……


そんな中、二人はある気配に気づく。


「ウィーンの、気づいてるか?」

「あぁ。『一人』増えてる」


ハーゼイとウィーンはフリアを意識しつつ、目線をずらす。

当然、誰が来ているのは、フリアも気づいている。彼らが視線をずらしたのに合わせ、口を開いた。


「……なんだ、来たのか。スゼイ」


道の脇から現れたのは、長い髪をもつ金髪の男。

胸に包帯が巻かれ、裾が長い白いコートを直に着ている。暑いのか寒いのか分からない格好だ。


(こやつ、資料にあった……)


こんな姿の敵が、資料にあった気がする。確か、雷龍使いだったはず。

戦う前から、殺意ビンビンだ。


「あぁ。強そうなのがいるじゃねぇか」


その男は、ハーゼイとウィーンを品定めするように見ている。

彼は戦う気満々の様子だが、フリアはどこかしらけている。


「……持ち場は違うはずだが?」

「暇なんでな。目的が果たせりゃいいだろ」


どうやら、彼が配置された場所には強敵(四聖龍)が来なかった様子。

よって、戦いの匂いを感じてやってきたのか。


「……へいへいっと」


フリアは呆れた顔をする。ここで追い返すのは不可能っぽい。この戦闘狂め。

四聖龍の二人は並び、小声で話す始める。


「……資料に会った雷龍使いだな」

「じゃの。しかし、厳しいのぅ」


フリア一人ですら手こずっているのに、ヤバそうなのがもう一人増えてしまった。


「……シャレムも手が離せそうにないな」


先ほどまでいたスペースで、光龍同士が激突している。

感じる龍力から察するに、彼女よりも、強い。


「ワシらが最後の砦じゃ。負けるわけにはいかん」

「……分かっている」

「じゃが、分が悪いのは確か……」


『分が悪い』とハーゼイは表現したが、現実はもっと深刻だ。

それはウィーンも分かっているため、何も言えなくなる。


「…………」

「お前さんは、どうする?」

「ちぃ……」


分からない。

数々の戦闘を勝ち抜き、四聖龍の立場を手に入れたウィーンだが、今回ばかりはお手上げだった。

こんな敵がゴロゴロいるなんて。


(鍛錬を怠らなければ……)


四聖龍の立場を得て、調子に乗っていた部分は多少ある。

それに、四聖龍になってしまえば、前線から一気に離れてしまう。騎士団からの依頼でもない限り、強敵とは戦えない。

自分は、井の中の蛙だったようだ。

仮に鍛錬を続けていたとして、彼らの強さに並べていたのだろうか。圧倒的強さに、自分がそのレベルにいるビジョンが見えない。


「じじい。俺は……」

「……勝ち目はないと考えておるな」

「……あぁ。それは、お前もだろ」

「ふぉふぉ、否定はしない」

「どうする気だ……?」


敵に勝てない。しかし、敵の『目的』を潰すことは容易だ。

ハーゼイは声のトーンを落とす。


「イ……す」


正直聞き取れなかったが、何となく察しはついた。

ウィーンが何か言おうとした瞬間、フリアと金髪の男の龍力が跳ね上がった。


「!」


蒼白い稲妻が周囲を駆ける。

あの戦闘狂、やはり強い。


「……あと、コレを渡しておこう」

「んだ?これは……」


敵の龍力が跳ね上がっているにもかかわらず、呑気に何かを渡してくる。

それは、小さな土色のクリスタルだった。宝石店で安く売っていそうなもので、今渡される理由がさっぱり分からない代物だ。


「持っていてくれ。それだけじゃ」

「は……?」


ウィーンは何か言いかけたが、本当にタイムアップだ。

二人が襲い掛かってくる。


「作戦会議終わり!やろうぜ!!」

「オレとも遊んでくれるだろ!?」


二人は構える。


「来るぞッ!」

「あぁ!」


開戦と同時に、ハーゼイは杖を掲げ、土龍の紋章を空に描いた。


「ストーンエッジ!!」


だが、それはあまりにも小さな龍力。

フリアたちは、難なく避けていく。


「おいおい、しょぼすぎるだろ!?」

「なめんなよ!」


二人は真っ直ぐ突っ込んでくる。

屁の突っ張りにもならない龍力だったが、これでいい。


「……ワシらはワシらの仕事をしよう」

「あぁ……」


ハーゼイとウィーンは覚悟を決める。

後は、自分の四聖龍としての役割を遂行するだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ