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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―飛躍―
197/689

―フランバーレ戦―

シャレムと女の戦いは続いている。


牢獄では手狭である。それに、戦闘の余波で崩れるかもしれない。

シャレムは、先頭場所を牢獄から離れた場所へと移していた。

一応さり気なく移したつもりだが、きっと敵は気づいている。

それでも乗っかってきたことを考えると、向こうの目的はイングヴァーのみらしい。


騎士団が苦労した犯罪者は多いが、向こうサイドが必要としているのは、『数』ではなく『質』と言うことか。


「だぁッ!」

「!」


剣と剣がぶつかるだけで、空気が震えた。

女が放つ光が、持っている二本の剣に伝わっている。

彼女の龍は、シャレムと同じ光だった。


(同じ、か)


同じ属性故に、力の優劣がよく分かる。

あと一歩。あと一歩少しが届かない。それに、怖いのは、敵がどの程度力を温存しているのか、である。


(底が読めない……)


敵との剣劇の合間に発生する、睨み合いの時間。

シャレムは、手の甲で口元の汗を拭う。

こちらは割と必死で戦っているが、彼女の表情は変わらない。

不思議な雰囲気。どこか虚ろで、しかし、芯を感じる。


「……アンタ、名前は?」

「……フランバーレ」

「へぇ、覚えといてあげる」


精度の高い『フル・ドラゴン・ソウル』を維持しながらの戦い。

どちらにとっても、長期戦は避けたいところ。


「……貴女は、負けるわ」

「っさいわね。またそれ?」

「えぇ。貴女の実力は分かったから」


仮面のように、表情が変わらないフランバーレ。

冷たく言い放たれたその言葉に、体温が上がるのを感じるシャレム。


「!」


ぷつ、と彼女の何かが切れた。


シャレムの目が見開かれる。

片方の口角が上がり、表情が歪む。その感情は、怒り。

モデルの顔とは思えない顔だ。


「へぇ、何が……分かったって!?」


ドン、と地面を強く蹴り、最大限に龍力を高める。

ビリビリと空気が震える。鳥たちも一斉に距離を取ろうと飛び立っていく。

しかし、フランバーレは顔色一つ変えない。

それどころか、ガッカリしたようにため息をついている。そして、こう呟いた。


「……それが貴女の限界よ」


当然、フランバーレの声は彼女に届かない。


「だあぁあッ!!」


シャレムは飛び出す。全てを、込めて。

先程とは比にならない龍力だ。オーラの形状が変化し、龍の姿を模していく。


「光龍破斬!!」

「白刃双」

「切り裂け!ブリリアント・クロウ!!」

「ホーリー・ランス」


光龍の技、術がぶつかる。

ぶつかる度に、木々は薙ぎ倒され、龍圧が戦場を抜けていく。


シャレムの本気の技・術。

それなのに、段々とシャレムが押され始めた。


「こいつ……!」

「…………」


はやり、力を隠していた。

今の自分の龍力のように、派手さはない。しかし、確実に龍力レベルが上がっている。

これまでの戦いで、全力ではないと何となく分かっていたことだが、実際やられると、ずしりと心にくるものがある。


(アタシは四聖龍……負けられないの!!)


つ、と頬を汗が走る。嫌な汗だ。

シャレムの焦りを感じ取ったのか、フランバーレは重ねて言う。


「大人しく、イングヴァーを渡して」

「……渡さないっつってんでしょ!」


シャレムが斬りかかろうとした瞬間、イングヴァーが収容されてある方向から爆発音がした。


「!」


そちらからは、土の龍と炎の龍、そして月の龍の気配が伝わってくる。

力の雰囲気的に、土と炎の力は、ハーゼイとウィーンだ。月の龍は、敵の気配だろう。


「あっちも始まったみたい……」

「ッ……!!」


シャレムは焦ってしまい、イングヴァーが収容されている牢を見てしまった。


「へぇ……『あっち』にいるのね」

「!!」


しまった。気付かれた。

無駄だと思うが、しらばっくれるシャレム。


「……どうかしらね」

「さっさと終わらせないと……」


面倒な事象が転がっている、と言わんばかりな声だ。

そして、その気配。

フランバーレは、自分を見ていない。イングヴァーを連れ去ることだけを考え、そのためにはどうすればいいか考え、見ている。

その瞳の中に、シャレムはいない。


「アタシを、見ろよ!!」


その事実に、シャレムは吠える。

光が強く、さらに強く輝き始める。


「……まだ、やるのね」


そこで初めて、フランバーレの顔が険しくなった。

その顔は、本当に冷たく、人間が私生活でできるようなそれではなかった。


恐ろしい雰囲気だが、関係ない。シャレムは戦うべく、走り出す。

しかし、その直後、フランバーレが消えた。


「!!」


迸る血。

痛みを感じ、自分が斬られたことに気づいた時には、もう既に生温い血が宙を舞っていた。

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