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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―飛躍―
196/689

―守り―

場所は変わり、イングヴァ―牢内。

窓は小さい。入り口も閉ざされているため、本当に薄暗い。


レイズたちは、団長と共にイングヴァーの牢中で守りを固めている。

牢の外観は他のダミーの牢と変わらない。違うのは、圧倒的強度。

待機スペースはあるが、あくまでメインは牢獄。それに、他の牢と外観を揃えるために、広くは作っていない。

そんな狭いスペースに、レイズたち6人と、団長が待機している。


「…………」


気が滅入りそうな空間だ。

それに、いつ敵の襲撃が来るかの不安感・緊張感がある。

レイズは落ち着かないのか、その辺をウロウロしている。


マリナは隅で膝を抱えて座っている。視線は、牢の壁に向いている。


「……ここ、崩れないわよね?」

「一応、地龍使いが協力して作った牢ですが……」


レイラは回答を濁す。正直断言できない。

当然、多少の衝撃では崩れない作りになっている。それでも、敵が本気で龍力を解放すれば、どうなるか分からない。

レイズたちに地龍使いはいない。そのため、これが騎士団の限界だった。


他の団員や隊長たちは、メインの牢獄内で守りを担当している。

フル・ドラゴン・ソウルクラスの敵と対峙する可能性が高いのは、ここだ。

そのため、下っ端であるが、中枢に配置されているのだ。


敵が現れた際に対応するのは、基本的に四聖龍だ。

だが、敵が牢まで来た際には、四聖龍と協力してイングヴァーが奪われるのを防ぐ役割がある。


イングヴァーは眠らされ、今は大人しい。

龍鎖も何重にも巻かれ、龍力自体は本当に弱い。

問題なのは、彼が敵の手に落ち、龍鎖が解かれたときだ。

ただでさえ、犯罪者が何名も敵の手に落ちている。それに加え、イングヴァーの強さが乗っかるのだ。

レイズたちは彼の強さを知らないが、雰囲気だけでも危険だと判断できる。何としても阻止しなければならない。


「殺せば?」とバージルは思うが、この国には死刑が存在しない。

そのため、牢獄で延々と彼のお世話をする必要がある。

バカバカしい、と彼は思っているが、誰もそのことに言及しないし、そんな雰囲気でもない。


と、龍力の乱れが全員に伝わった。


「!!」

「おい、これ」

「……始まったわね」


仲間たちは次々に呟く。

レイラにも緊張が走る。


(シャレムさん……頑張ってください……!)


クラッツは荒ぶる感情を抑え、できる限りどっしりと構えている。

ここで龍力を乱せば、敵が察知してくるかもしれない。

それに、騎士団トップの自分がここで慌ててしまえば、レイズたちにもそれが伝わる。

実力はトップではなくなってしまったが、団長が冷静であれば、彼らも安心だろう。


(乱すな。ダミーはある)


団長の雰囲気にリゼルも習い、冷静を装う。

部隊内では自分とレイラが実力トップだ。

真面目すぎ、考えすぎるレイラは不安を隠せていないようだが、自分は違う。

部隊内で指示を飛ばすことも多いリーダー的ポジションなため、少なからず他のメンバーは自分を見ている。

だから、乱さない。


「……加勢しなくて本当に大丈夫ですか?」


不安感か、レイラはリゼルに聞く。


「あぁ。四聖龍の強さを見ただろ。僕たちは邪魔になる」

「まぁ……そうなのですか……」

「心配か?」


バージルはレイラを見る。


「少しだけ。『あの時』のシャレムさんの力……フリアよりかは小さかったから……」

「マジか!?いつのだ!?」


レイズは大声を上げてしまう。慌ててイングヴァーを見るが、起きる様子はない。

彼女は言う『あの時』とは、顔合わせの時らしい。


「えぇ……あれが全力ではないとのことだったので、気にしないようにしていたのですが」

「それは僕も思っていた……同じ理由で言わなかったが」

「…………」


団長は黙ったままだ。心なしか、顔が険しくなっているようにも見える。

四聖龍よりも敵が強いとなると、もう本当に打つ手がない。


「四聖龍には言ったの?」


マリナは恐る恐るレイラに尋ねる。彼女は首を横に振る。


「……いいえ。あの方たちには、絶対的な自信があります。それに、あの場の龍を見ての判断です。不確定要素がありすぎましたので……」

「そう……」


四聖龍も敵も、力の底は未知数だ。

彼らの力は、敵に通用するのだろうか。


(負けないで……!)


レイラは手を組み、四聖龍の勝利を祈るのだった。

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