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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―飛躍―
194/689

―二本の剣―

明確な敵意でも、殺意でもない。

ただ、凛としてそこに存在し、周囲を引き寄せない『壁』を感じる。

敵意・殺意は感じられないが、好意的な感情もない。

ただ、冷たくそこにいる。そして、目的のためなら殺しも簡単に行う。そんな気配だ。


こちらの背に回ったアドバンテージを活かすつもりがないのか、一向に攻撃を仕掛けてこない。

まぁ、自分レベルであれば、背後から攻撃されても容易に対処できるが。

いいだろう。その面、拝ませてもらおう。


「…………」


わざとらしく、ゆっくり振り向く。そこには、自分と同じか、やや下くらいの女性がいた。

白衣に、紅色の袴。ただ、その白衣は肩が剥き出しのデザインだ。女から見ても、セクシーに思う。

そして、自分と同じ金髪。ハーフアップスタイルで、髪を留めている。

茶色い瞳は、底がないほどに濃い。その瞳で、どんな世界を見てきたのだろうか。

腰には、種類の違う二本の剣が見える。しかも、片手で扱うには重そうな剣が。


「ふぅ……」


彼女は、どこかスッキリした顔を見せる。

登場の仕方が、霧の間から出てきたように思えた。なるほど、龍の仕業か。


「アンタ……」


嫌な気配は相変わらずだが、違う。

元凶は、こいつじゃない。


(……複数いるわね。というか、こいつ……アタシとキャラ被ってるわ)


金髪。スタイル良し。メイン武器が剣。

髪型や服装は異なるが、お互いがお互いの真似をしても、しばらくは気づかれなさそうだ。


と言うか、ハーゼイとウィーンは何をしている?他の敵とでも遭遇しているのだろうか。

ただ、助けを呼ぶのは自分らしくない。一人でも、戦える。


「念のため聞くけど、観光じゃないわよね?」

「……えぇ」


しらばっくれるかと思っていたが、意外にもすんなり答える女。


「……目的は?」

「イングヴァーを貰いに」

「!」


ここに護送した犯罪者の中で、最も危険な男。

渡すわけにはいかない。


「拒否するわ。全力でね」

「……残念」


女は肩を落とす。

外見だけで言えば、か弱い女性の部類に入るだろう。

堂々としている風でもないし、どちらかと言えば、自信なさげである。

しかし、それは外見だけの話。


自分のように、内面まで見ることができる人間には、そう映らない。

揺るぎない強さ。凛とした龍力。

秘めた力がひしひしと伝わってくる。

非戦闘時でこのレベルだ。戦闘開始時には、どんな変化を見せてくれるのだろうか。


「ここで潰してあげるわ。四聖龍の名に懸けて」

「……いいえ。貴女が負けるわ」

「!」


ハッキリと言いやがった。こちらが負ける。と。

冗談やハッタリを言っている顔ではない。未来でも見えているかのようだ。


「だから、大人しくイングヴァーを渡して」

「お断りよ。それに、アタシは強いから!!」


言い終わると同時に、シャレムは地面を蹴る。

彼女が蹴った地面にヒビが入り、一部分が抉れる。凄まじい脚力だ。


「はぁッ!!」


龍力を一気に高め、剣を振る。


「!!」


地面を蹴り、剣を振るまで二秒もかかっていない。だが、女は二本同時に剣を抜き、シャレムの攻撃を防いだ。

刃と刃が激突し、龍圧を生む。


(へぇ……やるわね)


攻撃を防がれただけなら、驚きはしない。

戦闘前から内なる強さは見えていたし、今の攻撃は力試しだ。敵の力量を計る程度の龍力しか込めていない。


(で、あの剣……)


問題は、敵が扱っている武器だ。

普通の使い手なら、両手で扱う剣を、片手で。それも、二本同時に使っている。


(……状況に応じてって訳じゃないのね)


本気ではないが、それなりの力で攻撃している。

瞬間的に龍力を高めたにも関わらず、女はその速度と龍力に対応してきた。

この女、本当に強い。シャレムは気合を入れ、戦いに臨むのだった。

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