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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―飛躍―
193/689

―纏わりついている気配―

シャレムは一人外に残り、海風に吹かれていた。

彼女のバックには、青い空と、同じく青い海。風に乗り、雲が、彼女の金髪が流れる。

それは、映画のワンシーンのように、それは雰囲気があり、美しかった。監獄がシーンに入り込んでいるのが、残念でならない。


(……イヤになるわ。ホントに)


彼女は、小さくため息をつく。

光龍の宿命なのか、それとも自分が敏感だからなのか。

龍魂を極めれば極めるほど、人の気配が強く感じられるようになった。


彼女が感じている気配は、人がそこに存在するものだけではない。

悪い人間と、良い人間だ。これは、本質的に彼女が感じるもの。

心の中で良いことを考えている、外見の悪い人間。心の中で悪いことを考えている、外見の良い人間。

また、個々の人間の感情の起伏。


普段生活している分には気にならない。ただ、今回のケースのように、シンプルに相手が犯罪者が相手だったり、味方である騎士団サイドでも、この地位の関係で疎まれていたりすると、本当に気疲れする。

様々な負の感情が、ピリピリと肌に伝わる。


気疲れするしんどさだ。

こちらも多少気を張っているため、余計に辛い。


そして、問題なのは『質の違う嫌な気配』がずっと纏わりついていることだ。

王都で少し話したが、レイラ王のように『憧れ』が強い感情ではない。

こちらを狩ろうとする気配。敵の気配。


(なるほどね。アタシたちに頼むのも分かるわ)


気配だけで分かる。


(……強い)


護送中であれば、こちらの戦力も分散され、敵としては戦いやすかっただろう。しかし、敵はそれをせず、今まで何もしてこなかった。

今から襲う確証はないのだが、それならば、この嫌な気配の説明がつかない。

敵は、戦力が整っているこの状況でも強気に出てくるだろう。


(これだけ強い気配なのに、場所が掴めない……)


色々探ろうと彼女も努力しているが、掴めないでいた。

これが知りたくて、ここに残っていたのだが。


騎士団が島周囲を警戒しているが、彼らが戦闘で勝てる見込みはない。

自分たちに繋ぐため、せいぜい場所を知らせるくらいだ。


「!」


と、別の気配が近づいてきた。

嫌な気配はしない。こちらへの憧れが混じる気配。

視線を向けると、そこにはレイラが立っていた。


「あら、王様」

「止めてください。私には、まだ……」

「冗談よ」

「……あの」

「ん?」


もじもじしているレイラ。


「尊敬、します。お仕事も忙しいはずなのに、四聖龍の仕事まで……四聖龍になるのも簡単ではないはずですし……」

「ふふ、ありがとう」


シャレムから見れば、可愛らしい十代のファンの女の子だ。だが、彼女には王としても立場がある。

騎士団全体としてへの態度は明るくする気になれないが、個々の対応、しかも『憧れ』の感情を持つ少女への対応は話が別だ。

多少気が張っていても、笑顔は忘れない。


「でも、今はアタシより、仲間の所にいなさい……多分、『来る』わよ」


『来る』のタイミングで声のトーンを落としたシャレム。

多分、と付いていたが、それは予想ではない。確実な未来だ。


「!!」


レイラはキョロキョロと辺りを見回す。が、当然いない。

気配ダダ洩れなのに、場所を掴まさせない、相当の実力者だ。


「後でゆっくり話しましょう」

「皆にも伝えます!」

「えぇ。でも、戦闘はしない方が良いわ。四聖龍を呼びなさい」

「はい!」


レイラは慌てて中に入って行く。

嫌な気配はどんどん強くなる。


(さて……)


彼女は剣を抜き、戦闘に備える。

剣を持つ手が、微かに震えている。これは、怯えではない。武者震い。


と、海を監視していた騎士団の動きが慌ただしくなった。

次の瞬間。


「!」


霧の間から出てきたかのように、『それ』は彼女の背後に姿を現した。

遂に、『敵』が来た。

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