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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―飛躍―
191/689

―当面の目的―

レイズたちにとって最重要課題であった、フリア、スゼイの件は軽く流されてしまう。

騎士団的には、リアルタイムで中止しているのは、犯罪者がロストしていることだ。

まぁ、フリアやスゼイの件は、無視できない課題であるが、緊急性はそれに劣る。


行方不明の犯罪者。十中八九、敵の手に落ちたと考えて良い。

牢獄にいた犯罪者が忽然と消えていることや、潜伏場所を突き止めても、あと一歩のところで足取りが掴めなくなっているパターンがほとんどであることから、同グループの仕業だと考えている騎士団。

騎士団としては、これ以上敵戦力を上げるのはマズイと考えている。


そのため騎士団は、各地に散らばる逮捕に苦労した犯罪者を四聖龍の監視の元、一つに集めようと考えている。

対象者は、騎士団が逮捕に苦労した、厄介な龍力者のみである。

敵にエサを堂々と見せることにはなるが、四聖龍の監視下であれば、万が一敵が現れても、対抗できると考えている。

そこで、敵を一人でも捉え、居場所を吐かせる算段だ。


敵が襲ってこなくとも、犯罪者を一つに集め、監視できるのはメリットが大きい。

四聖龍が常駐することになるが、守りは固められる。

良くも悪くも、騎士団が囲っている収容者数が減ったために出来る政策だ。


四聖龍も了承し、話は北の四聖龍に変わる。


「で、北の四聖龍は?」

「は、その事なのですが……」


クラッツが前に出る。


「新たな四聖龍が敵である可能性を考え、本会議には呼んでおりません。ですが、北の隊長がでっち上げた別件で連絡を試しにしてみたところ……」


ちら、とクラッツは隊長を見る。


「は、すでにその回線は切られており、完全に連絡が取れなくなっていました」

「!」


周囲に衝撃が走る。

騎士団の最高戦力の一つ。北の四聖龍の席が空いてしまった。

これは、騎士団としても大きな痛手だ。そして、連絡が取れなくなったということは、四聖龍の立場が必要なくなったということだ。

つまり、敵は何かしらの目的を達成したことになる。それで、そこを去ったのだ。



「ほう……」

「ふ~ん。敵確定じゃない」


シャレムは毛先を指に絡め、遊んでいる。

その顔に、焦りはない。


(落ち着いてんな。つか……)


レイズの憶測かもしれないが、四聖龍はそれぞれ自分が『最強』だと自負している様子だ。

先程のやり取りの中でも、ハーゼイはシャレムを「本物だ」と認めはしたものの、勝敗には言及していない。

北の四聖龍が完全にロストしたと聞いた今も、危機感はゼロだ。

『最強』である自分がいれば、問題ないと考えているのか。


四聖龍ロストの件で、ざわついている会場。


(やべぇ……)


バージルは一人、焦っていた。

北の四聖龍『ゼロ』の存在を、知らせるタイミングを完全に失っていた。

まぁ、どうせ偽名であろうし、騎士団も『北の四聖龍は敵』と判断した。意図せずに周知させることはできたためめ、結果オーライなのだが、フォリアの勇気を自分の口で伝えることはできなかった。


「北の四聖龍の行方は追いたいと思う一方で、こちらの守りも固めなければなりません。北の四聖龍は一旦保留とします」

「……ま、敵を追っていれば、いずれたどり着くじゃろう」

「そうね。ま、アタシがいれば問題ないわ」

「ふん。口だけにならなければいいがの……」

「はぁ?ビビってんの?爺さん」

「……もうよい」


実力は間違いないが、それは龍力レベルでの話。

敵との戦力差は、実際に戦ってみないと分からないのだ。


北の四聖龍は敵。忘れてはならないのは、前の四聖龍が席を奪われたのは事実だということ。

すなわち、元四聖龍よりも、実力が上なのである。


ジジイと高飛車女の喧嘩が始まりそうなため、ウィーンは話を進める。


「当面の目標は、犯罪者の護送か?」

「そう予定しています。敵の出現場所に規則性はありません。ルートは考慮していますが、安全は保証できません」

「だろうな」


話が進んだことで、ハーゼイとシャレムは矛を納めた。


「……敵の目的が分からないのは気味悪いわね」

「そうじゃな。ずれた解釈をしているかもしれん。それだと、また後手に回るぞ」

「分かってるわ。けど、分からないんだから、仕方ないじゃない」


シャレムは唇を噛む。

素直に見れば、犯罪者を奪い、仲間にして戦力を整える。そして、騎士団をつぶそうとしている。のだが、聞く限りは、十分戦力は整っているようにも思える。

王都での一戦、マナラドでの事件、マナラド近辺での一戦。残念ながら、どれも拮抗した戦いではなく、ボロ負けしたと聞いている。


「我々四聖龍が敵と戦うのが理想じゃな。敵の力量も直に分かる」

「ふん……結果は同じだ。オレがつぶしてやるよ」

「アンタも、足引っ張んないでよね」

「ほざけ」


冷静、自信家、高飛車。

ハーゼイのみ、話が通じそうなイメージだ。

後の二人は、意見すら許されそうにない。


騎士団サイドとの距離はあるが、一応協力関係にある。

自分たちは、最高戦力で彼らと戦う準備を始めるのだった。

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