表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
―飛躍―
189/689

―三人目―

「全員揃うまで、少々お待ちください……」


力のないアナウンス。静かな部屋に、進行役の声が響く。


来ているのか、バックレたのか。

だが、ここでバックレるにしても、四聖龍の立場が危うくなるだけだ。

現に、他の二人はここまで来ている。態度は横柄さがあるが、来たのだ。


時計と出入口を交代で眺めているマリナ。

時は刻まれ、定刻となる。


「時間ね……」


集合時間になった。が、三人目は現れない。

相変わらず騎士団サイドの人間は立ったままなのに、四聖龍は椅子に座り、腕を組んでいる。


廊下を眺めていた進行役。

諦めたのか、用意されていた資料を手に取る。


「……先に資料をお配りします」


そして、その資料を配り始めた。彼の雰囲気から、待つ気持ちはあるらしいが、もう時間だ。

騎士団メンバー、四聖龍に配られる。表紙には『極秘』と書かれてある。


「会議終了後には、回収します。頭に入れておいてください」

「…………」


レイズたちは、立ったままその資料に目を通す。

こんなの、短時間で覚えられるわけがない。

嘘だろ、と思ったが、一応覚える努力はする。


分かる範囲での、敵の情報。レイ、フリア、スゼイについて。

ただ、詳細は分かっていない。姿形と、龍の属性。力の程度くらいだ。

そして、最近の問題点である、犯罪者が行方不明になっていることについて。

騎士団としての方針や、四聖龍に協力を要請した経緯などが書かれてある。


この資料を読んで初めて知ったが、行方不明になっている犯罪者は、皆『あの日』以降に龍力を得た者たちだけだった。

騎士団が捉え、牢獄にいた者、騎士団が追跡中だった者など、行方が分からなくなったケースは様々だった。



「…………」


時間は過ぎる。

五分、十分。


手元に資料があるため、暇つぶしのツールとして助かってはいるが、三人目は何をしているのだろうか。

始めないということは、本部内にいることは騎士団として把握しているのか。

よく分からないまま、時間だけが過ぎていく。


四聖龍も資料を読み終わり、暇そうにしている。


(場が持たないな……限界だ)


ただ待たされているほど退屈な時間はない。

レイズたちも、三人目に期待はできないと考え始めたころだ。



ギギ、と会議室の扉が開いた。

一斉に姿勢を直す。四聖龍は、同時に顔を扉へ向けた。


「失礼するわ」


コツ、とハイヒールを鳴らしながら、女が入ってきた。

20代後半くらいの、金髪の女。長い髪を後ろで纏めている。

全身黒い衣装で、出るとこは出ており、締まるところは締まっていて、スタイルが良い。どこぞのモデルのようだった。

と言うか……



「シャレムさん!?」


レイラはつい声を上げてしまう。

彼女は、モデルのシャレムだった。


「え……あの時の……?」


オシャレに興味が薄いレイズですら、彼女を知っている。

『騎士団の衣装が使えない』との理由で服を買いに行った店で、レディースのポスターに写っていた女だ。

名前までは興味なく知らなかったが、彼女が。


だが、性格は良くないらしい。遅刻したことを悪びれる様子もなく、つかつかと用意された椅子に向かう。


「ッたく、情けないわね。それでも騎士団なの?」

「大変申し訳ございません……」

「なよなよしない!!」

「はいぃ!!」


進行役はなぜか怒られている。

四聖龍の三人目が世界に知られる(性格の悪い)モデルだったとは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ