―マナラド研究所―
レイラとリゼルは、休暇であるにも関わらず、研究に協力していた。
他のメンバーはともかく、自分たちは騎士団歴が長い。率先して動くべきであろう。
それに、フル・ドラゴン・ソウルの精度が良いのは自分たちだけだ。
研究所内でフル・ドラゴン・ソウルのデータ取りをしているのだが、全くうまくいかない。
光龍の研究施設でレイラの測定が終わったのは終わったのだが、参考になるデータはとれなかった。
次に、闇龍研究施設に場所を移した二人。
「リゼル。お願いします」
「あぁ」
衝撃・音をカットできる特別室に入っていくリゼル。
部屋の外で、レイラはそれを見守っている。
研究員は難しそうな機械を操作し、出力されるデータを見ている。
「……ダメですね」
「えぇ、データが取れません」
研究員たちは、「お手上げ」と言ったかたちで頭をかく。
研究所にある設備は、龍魂の状態で様々なデータを取るものばかりだ。したがって、上限がそれに合わせてある。
龍魂よりも上の力が出せるフル・ドラゴン・ソウルでは、この設備では正確な数字が出ない。
「……ずっと振り切れてます」
研究員が計器を見ながら言う。
確かに、数値を示しているであろう針は、メーターを超え、端に当たっては戻り、当たっては戻りを繰り返していた。
「フル・ドラゴン・ソウル……凄まじいです」
「えぇ……これ以上は計器が壊れてしまいますね。止めましょう」
「リゼルさん、終わりです!!」
リゼルは終了の合図で龍力を下げた。
部屋の中からは、話している声が聞こえない。出た後で成果を聞こうかとも思ったが、研究員たちの顔を見れば結果は分かった。
「……ダメだったのか」
「はい……申し訳ございません。我々の設備では……」
「……文字通り、桁が違います」
「そうか」
「何かのきっかけになればよかったのですが……」
「いや、いい。本来の研究に戻ってくれ」
「……分かりました」
落ち込む研究員を尻目に、リゼルとレイラは研究室を後にする。
フル・ドラゴン・ソウル。
この力が騎士団にきちんと伝われば、大幅な戦力アップにつながる。
しかし、リゼルたちは、その力を伝授できない。
フル・ドラゴン・ソウル状態のデータで何か貢献できればと考えたのだが、無理だったようだ。
そもそも、長いとは言えないが、龍魂の歴史はそれなりにある。なのに、フル・ドラゴン・ソウルが今まで世に出なかったのは、なぜだろうか。
レイラもリゼルも騎士団に長くいたが、その言葉は聞いたことがなかった。
あのクラッツさえも、この力に驚いていた。
だが、今の敵や四聖龍は、間違いなくこの力を使っている。
だとすれば。
(……四聖龍と敵は繋がっている?もしくは、繋がってい『た』?)
考えすぎか。
だが、もし現在も繋がっているのであれば、四聖龍の協力は得られないだろう。
そうなれば、本当にこの国は終わる。
(……だが、繋がっているとなれば、目的はなんだ?)
『今も』繋がっていると仮定するにしても、目的が分からない。
騎士団がなくなれば、四聖龍の優遇もなくなる。自らの首を絞めるだけなのだが。
(まぁいい。協力が得られなかったらの話だ)
汗を拭き、レイラと合流するリゼル。
杞憂であってくれ、と思いながら、彼女の隣に立つのだった。